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8-56 好奇心と危機感のバランスは難しい

 さっきまでは熱気につつまれていた会場だったのに、まさに波が引くように静寂が広がっていく。


「警備チーム!」


 その静寂を破ったのは司会の男。

 一般人が剣を突きつけられたら普通はパニックになるんだろうが、すぐに後ろへと下がり警備をよんだ。

 この反応この手の手合いはちょくちょくいるんだろう、体が動くだけでも修羅場慣れしてるのがわかる。


 同時に壇上左右の出入り口から鎧をまとい槍やら剣やらで武装した連中がどんどん入ってきてあっというまに女を囲んでしまった。


「剣を床に置いて手をあげろ!」


 女からみて正面にいる隊長らしき男が声をあげて威嚇するが、女の方もまったく動じず剣を肩に乗せて動かない。

 実際は降参するのを待つまでもなく、彼女の死角にいる兵士たちがそっと近づいて制圧する腹積もりのようだ。

まぁ、ここで素直に話を聞くようなやつならそもそもこんなことやらんよな。


 槍をもった兵士が槍が届く範囲まで忍び寄ると彼女を足を狙って槍をかまえ


「遅い」


 突き入れようとした瞬間、女が振りむくと同時に剣を横に振り、槍ごと攻撃しようとしていた兵士を切り裂いた。


「え?」


 自分が何をされたのかわからないといった感じで兵士がつぶやくと、胸あたりを境に斜めに切り込みが入りそこから上と下が切り離されて壇上の上に転がった。


「人殺しだぁぁぁーーーー!!」


 静寂もつかの間、観客の一人が叫ぶと一転して阿鼻叫喚の悲鳴が会場に響き渡る。

 状況を飲み込んだものからあるものは一目散に、またあるものは悲鳴をあげて出口へと走り出す。


「あの人、かなり強いね」

「踏み込みも剣速も今まで見たこともない速さですな。これはおそらくコアさんよりも速い」

「うん、あの剣であの速度は私より上だね」


 一方、うちのケモミミ娘達は冷静に状況を見ている。

 まぁ今更殺人を見たところで動じんわなぁ。


「いまのところこっちに危害は加えなさそうだしとりあえずは静観だ。警戒は怠るなよ」


 どっちにしろ今はパニックを起こして入口に殺到する観客のせいで身動きがとれない。

 混ざって逃げようとしたところ背中からっていう可能性もある以上、状況に応じて対応するしかない。


「逃がさないように囲め! 上級掃除人(スイーパー)の出動を要請する!」


 上級掃除人、実に中二病チックな役職がでてきた!

 おそらくは俺達みたいになんらかの強化を受けた用心棒みたいな存在なんだろか?


 うーん。あらかた避難が終わったらどさくさにまぎれて逃げようと思ってたけど、ちょっとどんな奴か見てみたい!


「マスターは好きだよね、上級掃除人という響き」


 さすがコアさん実に俺の事をわかってる。


「付き合うけど引き際はちゃんと見定めるんだよ」

「いざとなったら自分が足止めするでありますよ」


 わかってる。さすがに命かけてまで見物したいとは思ってない。

 二人ともあの女を相手取って勝てる確信を持ってないみたいだしなおさらな。


 当の本人は剣についた血を拭う事もせず再び棒立ちとなるが、取り囲む兵士達も返り討ちにあうのがわかっているのか攻撃しようとはしない。

 時間稼ぎだとしたら上級掃除人を待っている兵士達側ならわかるが、女の方はなにかメリットはあるのか?


--Hello?--


 ? なんだ今の声は?

 なんか今この状況に似つかわしくないあいさつが聞こえた気がする。

 壇上の方から聞こえたけどいったい誰が?

 

「主殿! あの女が持つ剣を見るであります」 


 剣を見ろっつったって、アディーラじゃあるまいしこんな遠くから見てもなんとも

 んぁ!? 真っ赤だったはずの刀身になんか斑点みたいなものが


 いや あれは 目!? なんかキョロキョロ動いてる!?

 あいつ、まさか生きてるのか!? という事はさっきの声は


「ようやく起きたか」


 俺の疑問を肯定するように女が剣を眼前に持ち上げて刀身を見ながら呟く。

 

「”自動修復する赤い剣”とは笑わせる。この剣はそんな生易しいシロモノじゃない」

「確かに試したときは剣がしゃべったり目があるとは思いもしませんでしたよ」

 

 刀身ごしに司会をにらみつける女。

 一方司会の方も状況を理解しながらなんとか言葉を返せてはいるようだ。

 

「いい機会だ。この剣の本当の力を見せてやる」


 言葉を吐くと同時に剣が膨張していく

 いや、違う! 遠目だと剣が大きくなっているように見えたけど柄の部分を残して刀身が霧のように空気中に広がってるのか!?


 いやいやいや! 冷静に見てる場合じゃねぇ!

 どうみてもアレ絶対にこっちまで巻き込まれるやつだろ!?

 さっそく引き際をあやまっちまったか!?


「総員退避!」

「アディーラ! 飛べ!」


 取り囲んでいた隊長も危険を感じ取ったのか一言叫ぶと踵を返して逃げ出す。

 同時に俺はアディーラとコアさんの手を取ると、アディーラは席を立ちながら天井ギリギリまで飛翔する!


 鍛えなけりゃ脱臼ものの加速に耐えながらコアさんを落とさないように手に力を込める。

 コアさんはつないだ手を起点に反対の腕で俺の腰あたりにしがみつき、アディーラも俺を手繰り寄せ、飛ぶのに支障がない程度に密着する。


 こういう場じゃなきゃ実に最高なんだが、二人ともいわずとも俺がやりたいことをわかってくれて実に助かる。

 それだけ二人もあれの怖さを察しているんだろうな。


「障壁展開!」


 3人がギリギリ収まるくらいの大きさに出来る限り防御力を高めた障壁を展開する。

 アディーラはこの会場で女との距離が最も遠くなる天井隅へと移動した。


 とりあえず俺達に出来ることは全部やった、後は


「喰らえ」


 一瞬だけ女がもつ柄から大型の剣のように形どった赤い霧は、女が横なぎに剣を振うと部屋中に拡散していった。

ブクマや評価をはがしてキリのいい数字が割るのはやめてくだされ・・・

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[気になる点] さて、この女は敵として戦うことになるのか、新たな仲間として迎え入れることになるのか…
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