8-52 ファンタジー世界のギャンブルは魔法対策をどうしているんだろうか?
「そういえば気になる事があるんだけどいいかな?」
「なんでございましょう?」
ポーカーを始めて1時間ほど経った頃、ふと思い出したようにコアさんがディーラーに話しかける。
「魔法を使ったらどうなるのかな?」
あ、確かに。
ポーカーのルール自体は把握してるけど地球には魔法というものがないから抜け落ちてたな。
特にコアさんは幻術というイカサマに便利な魔法を持ってるし、やられたら賭けにならない。
「実際におやりになってみればいいかと」
おお? 止めないどころか試してみろと申すか。
つまり魔法に関してはなんらかの対策がしてあるって事か。
そういうことならコアさんはこのラウンドで間違いなく幻術を使ってくる。
してくるとわかってるんなら気合で幻術を打ち破るのも可能だが、カジノ側の対策が気になるのであえてしないでおく。
最初のプリフロップでコアさんがレイズしたこともあり他に残っているのは俺だけだったが、後はどちらもベットをする事もなくフロップ、ターン、リバーと5枚目までチェックで回ってしまった。
「ショーダウン」
ディーラーの合図とともに、お互いカードを表がえす。
「KKと……これはA4ですね」
あら? 俺が勝っちゃった? 結局幻術は使ってないのか?
「あらら、AAに見えるように幻術を使ったのに効いてないようだね」
なるほど、使ったけど無効化されてたってわけね。
これはこの世界では魔法を無効化する手段があるという事がわかったって事も収穫である。
「ご理解いただけたようですね」
「十分わかったよ。使ってもすぐ切れちゃうみたいだね」
「左様でございます。幻術、魅了、洗脳、変化と言った人やカードにかける魔法は当館ではすぐ切れるようになっております。」
ふーん。これはそういう事だからか。
まぁ魔法によるイカサマは基本的にできないってわかっただけでも良かったわ。
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そこからさらに数時間ほど、俺達はポーカーに興じていたのだが……
「ベット」
「レイズするでありますよ」
「……ダウンだ」
くそっ! またやられた!
ボードはブラフをかけるのに絶好だったのに、また見透かされてブラフキャッチしやがった!
かといってこっちが本当に強い時はしっかり降りてくるし完全に手の内を読まれてる。
今日初めてで一時は追加でチップをもらっていたはずのアディーラだったが、今やだれよりもチップを巻き上げ山を築いている。
俺の癖を完璧に読んでいるとかいったレベルじゃない。
特にキッカー勝負(2枚の手札の内ペアになっていない方の数字が強い方が勝ち)といった僅差の勝負ではきっちり相手がコールしそうな金額をベットして勝っている。
まさにポーカー鉄則の「大きく勝って小さく負ける」を体現してる打ち方だ。
「恐ろしい成長ですね」
「慣れてきたからでしょうな」
ディーラーさんも驚きを隠せないようだ。
最初はある程度接待気味のプレイをしていたボーイさん達もチップを取られた今は結構ガチでプレイしているようだが、そのすべてをアディーラは返り討ちにしているからなぁ。
「お客様方、よろしければ今度行われるポーカー大会に出場されてみてはいかがでしょうか?」
へぇー、大会もやってるんだここは。
「えぇ、予選はすでに始まっていますが相応の金額さえお支払いいただければ本選にシードで参加することもできますよ」
聞いてみれば予選はレベル1からレベル7まであり、低レベルで勝てば上位のレベルチケットがもらえる仕組みなんだそうだ。
そこだけ聞くと日本や海外でやってるポーカー大会と似ているが、違うのは相応の金額を払えば好きなレベルどころかいきなり本選にも参加できるという事だ。
最も金額はレベル1こそ一般的な晩飯程度の価格で参加できるが、本選のチケットは大型金貨数十枚が必要なんだとか。
さらにいうと本選チケットは複数枚買う事も認められていて、その枚数で本選のスタートチップが変わるわけだ。
「今回の大会にはオーナーも参加されるんですよ」
「へぇ、名前が出るという事は相当な強さなんでしょうね」
「過去何回か優勝されてますね」
そりゃ相当な強さだな。
「今回の大会のルールは1位が賞金を総取りするという事もありまして、ハンデとしてオーナーは本選チケット10枚分の金額を出して、1枚分のチップで参加されるみたいです」
「そりゃすごい自信だ。ちなみに今の賞金はどれくらいなんですかね?」
ポーカーの賞金は基本参加費の合計の何%かだからね。
「そうですね、人生20回はここで遊んで暮らせる額でしょうかね」
想像できんがとにかくとてつもない額であることは確かだ。
いきなり本選にでるのも払えない事はないんだがどうするかなぁ?
WSOPみたいなもんです