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8-47 心証を上げるTEMIYAGE攻勢

「アタイとセバスチャンは代々の付き合いでねぇ。よく親に連れてかれてやりとりを眺めてたもんだよ」

「ウチは代々革製品を主に取り扱っておりましてな。その縁あって白犬族とは懇意にさせてもらっておるのですよ」

「戦争で何もかも失っちまったから、セバスチャンにいろいろと工面してもらって今日までどうにか生きてこられたさね」


 エアデールさんはそういうと腰につけていた革袋を取り出し、中身を開いて見せる。

 そこには金貨が袋からあふれでそうなほど詰まっていた。


「エアデール……そんな金をどこで?」

「白犬族は天に見放されてはいなかったという事さね」


 ニカっと笑うエアデールさんのもってるあれはスケイラ達が盗賊から分捕ったやつだな。

 突然の大金に驚くセバスチャンさんの手にエアデールさんは金貨を押し付けるように手渡す。


「これで借りは返したからアタイの用事は終わり。後は二人でやっとくれ」


 一言そういうとソファーにどっぷり座ってくつろぎ出した。

 

「一体何があってこんな大金を……」

「ええと、白犬族には世俗に疎い自分らの代わりに商品になりそうなものを売ってもらいましてね。その手数料を支払ってるんですよ」


 一応嘘ではない事を言ってごまかす。

 ついでに後ろに控えているコアさんとアディーラに合図を送ると、二人は持っていた荷物からそれぞれ箱を取り出してテーブルの上に置いた。


「ちょうど今回ウチで作ってるものを手土産として持ってきてましてね、よろしければ目利きも兼ねて受け取ってはいただけませんか?」


 アディーラが開けた箱に入れていたのは、アマツに頼んで育ててもらったサンゴと真珠。

 これらは前々から外と取引するときのために作っていたものだけど、ようやく日の目を見る時が来た。


 今まで取引相手が戦争で財を失った白犬族しかおらんかったからね。

 さらに言うと生産するところまではよかったが、俺達には加工技術がないから現状材料のまま売るしかない

 セバスチャン氏に加工先のアテがあれば重畳と言ったところか。


「ふーむ、これはぜひ私に独占して卸してもらえませんか?」


 セバスチャン氏はサンゴと真珠を値踏みするとそう提案してきた。

 よかった、この世界でも価値があるものだったようだ、二束三文にもならないって言われたら赤っ恥を書くところだったなー。


「この品質なら材料から買い取って加工費や販売費を差し引いても十分に利益が出せると見ました」


 これらは限りなく天然に近い養殖だから品質には自信があったけど思った以上だった。

 ここまで高評価ならいっその事セバスチャン氏に全部委託してしまうのもアリだな。

 元々俺たちはずっとファンバキアにいるわけでもないし、売るにしても店も顧客も持ってるわけでもない。


「そこは金額次第といったところですかね」

「もちろん独占する分上乗せはさせていただきますよ」


 上乗せしてもらえるのはありがたいが、こちらとしてはそれ以上に重要な事がある。


「すまないが、後二つほど条件を追加させてほしい」

「聞きましょう」

「一つは商品の輸送は白犬族を通じてやってもらう事。二つ目は我々が卸している事は秘密にしてもらうという事です」

 

 ウチのダンジョンは荒野にあるから品物を取りに来てもらうとなると命がけになってしまう。

 それなら白犬族の拠点まで俺が空間魔法で輸送して、そこから先は白犬族がどこからか輸送してきたという事にしたほうが何かと都合がいい。

 後、なるべく俺たちのダンジョンの場所を知られたくないってのもある。

  

「独占する以上秘密にするのは当然として、白犬族にやってもらいたい理由を伺っても?」

「こちらも今までいろいろと支援してきたんでね、こき使いたいだけですよ」

「そこは相応のお代さえいただければきっちりやらせてもらうさね」


 ソファーから立ち上がったエアデールさんは慇懃無礼にお辞儀をして答えた。

 一方ふくよかなアゴを触りながら、セバスチャン氏はもう一方の手土産の方に視線を移す。


「そこを含めた商談は後に回すとして、もう一方の手土産の方も確認させていただいてもよろしいかな? こちらのほうもさぞ期待が持てそうですからな」

「一つ目に比べると少々地味かもしれないけどね」


 コアさんはそういいながら箱のフタをゆっくりとあけた。

 

「こちらはウチで取れた食材を使って作ったお菓子の詰め合わせになります」

「どれもおいしそうですな。しかもみな美しい……」

「はぇー。これはまた見た事がない菓子ばっかだねぇ」


 箱の中には宝石のように輝くクッキーに王冠のようにデコレーションされたプチケーキ。艶やかな花を模した砂糖細工菓子などといった様々な菓子がいっぱいに詰められていた。

 上級区画に住んでいるなら舌だけでもなく目も肥えてるだろうと思い、コアさんに見た目がいい菓子を作ってもらえるように頼んでおいたのだが、まさか一晩でここまでやってくれるとは思わなんだ。


 そのかいあってセバスチャン氏はもとより、くつろいでたエアデールさんまで身を乗り出して菓子を凝視している。


「早速一つ頂いてもよろしいかな?」

「アタイもいいかい?」


 返答を待たずにクッキーを口に入れ歯でクッキーを砕く二人。

 その瞬間目を大きく開けてお互いを見合った。


「え? これ、本当にクッキーかい?」

「今までいろんな菓子も食べてきましたが、これほどうまい菓子は記憶にない……」


 信じられないといった顔でこちらを見るエアデールさんに記憶を探るように呆然とつぶやくセバスチャン氏。

 これはククノチが作った最高の原料をソフィアが精製してコアさんが調理するという黄金の3連コンボあってはじめて出せる味だからな。

 こいつは早々よそで食えるようなシロモノじゃあないだろうさ。


「手土産は気に入っていただけたようですし、それでは具体的な数字の話にはいりましょうか」

「ええ、そうしましょう」

 

 思っていた以上に評価は良かったし、後どれくらい上乗せできるかはこれからにかかってるな。

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