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8-46 何をされるでも金が必要な世界

「私達は警護のものです、ここからは私達がご案内しますのでどうぞこちらへ」


 疑問が顔に出てたのを読まれたのか、簡単に説明されると詰所の奥へと案内された。

 さして長くもない通路を通ると外に出て船着き場へと到着する。


 岸には何艘か舟が停泊しているが、上級区画にあるためかそのグレードも今まで見たよりも一段階高い。


「こちらの舟にどうぞ」


 促されるままに俺たちが舟に乗り込むと、後に乗り込んだ兵士は何も言わず舵を取ると出港してしまった。

 ふーん。これは警護も間違ってはいないけど、これはどちらかというと監視が主目的じゃな?


 その証拠にこぎ手を除いて一人は確かに周囲を見ているが、もう一人の視線はこっちを向いてる。

 警護が目的なら互いに死角をカバーするように見るのが普通だと思う。


 ま、本来俺たちは入れないわけだから当然か。

 別に悪さするわけでもないし、ここは素直に警護されてると思って楽しむとしよう。


 上級区画と言われるだけあって一般区画と比べると一つ一つの建物は大きい。

 入ってすぐのところには宿や店が多かったが、今周りにあるのは全部屋敷と言っていい。


 水路に併設して道はあるものの人通りはほとんどない。

 ぽつりぽつりと歩いているのは巡回の兵士くらいなもんか。


 おそらくここに住めるいわゆる富裕層レベルの人間はさっきみたような屋根付きの船で移動してるんだろうな。

 あるいは自分からはあまり出歩かないとかか。


 そこの岸に泊めた舟から荷を持った人が屋敷に入っていくのがところどころで見えるし、服装が平服ぽかったし宅配サービスとかもあるのかもね。

 

 その辺もいろいろ聞いてみたいところではあるが、こっちを見てる兵士はあんまり友好的じゃなさそうなんだよなぁ。

 

「エアデールさん。今から会いに行く人はどんな人なんだ?」


 周りを見ても屋敷しかないし、こういう時は適当に身内でおしゃべりするに限る。

 

「そうだねぇ、とりあえず言えるのはあそこの屋敷に住んでる人ってところかね」


 あら、まだ到着まで時間がかかるかと思ってたらそんなことはなかった。

 漕ぎ手の兵士はエアデールさんがさした近くの岸に舟をつける。

 そして手際よく近くにあった杭に縄を巻き付け舟を完全に固定すると、


「それでは我々はあなた方がお帰りになるまでここで待機しております」


 三人ともビシッと敬礼すると代表の一人がそういった。

 話がいつ終わるかわからないのに待っててくれるんか、兵士と言うのも大変だのう。


「ういっす、お仕事お疲れさんですー」


 こちらも手で軽くあいさつを返し、兵士達の横を通り 抜けようとしたら、兵士がスイッと横に動いて俺たちの前を塞いでしまった。


「おおう?」


 我ながら間抜けな声を出してしまったが、兵士たちは皆まじめな顔でこちらを見ている。

 その横をさらに抜けようとすると再び道を塞がれた。

 

 なんなんだ一体?

 これもなんかの風習かと思っていた矢先、エアデールさんにちょいちょいと脇をつつかれた。


「この人たちはチップを欲しがってんだよ。強制じゃないけどここは上級区画だから、請われる前に気前よく出してやるのがここの流儀ってもんさね」


 ああ、なるほどそういう事ね!

 エアデールさんはそのまま俺の耳に顔を近づけて


「それにアタイは持ち合わせがなかった今までの分を貸しにしてるところもあるからね。ここはアタイのツケも含めて仙人様がかっこよく出しとくれよ」


 お、おう。まぁ手持ちはあるからいいんだけど。


「これはこれは気が付かずにすまんかったな」


 チップの相場はわからんが、取り合えず金貨1枚渡しときゃええやろ。


「ありがとうございます! いってらっしゃいませ!」


 受け取った兵士たちはにこやかに最敬礼をしてようやく道を開けてくれた。

 もしかして今まで塩対応だったのはチップをもらえるかわからなかったから……なのか?


 それはさておいて眼前に立つ屋敷を見上げてみる。

 いわゆる地球規模の一般的な家よりは大きいが、今まで見た上級区画の屋敷を基準にすると普通レベルと言ったところか。


「じゃあ、行こうかねぇ」


 エアデールさんは一言そういうと、屋敷の扉につけてあったノッカーを手に取り3回ほどドアに叩きつけた。

 水の音にまじって鉄が奏でる甲高い音がまじって消えかけたころ――


「はい?」


 扉を開けて顔をのぞかせてきたのはいかにも執事といった感じの服装に身を包んだ初老の男性。

 この見た目で名前がセバスチャンならパーフェクトだな。


「やぁチャンさん。前に売ったプラスチックコンテナをアタイらにくれた人をつれてきたから入れとくれよ」


 惜しい。というか中国名? 見た目は英国人ぽいのにか。

 いやまぁ最も地球じゃないんだしそっちの常識に当てはめる方が間違ってるか。


「これはこれは、お待ちしておりました」


 チャンさんは扉を大きく開けてこちらを招き入れた。

 促されるままに中へと入り、応接室へと通される。


「こちらの部屋にてお待ちください」


 チャンさんは一礼すると部屋から出て行った。


 中央にある机を挟んでおかれているソファーの片側に俺とエアデールさんが座り、その後ろにコアさんとアディーラが立つ。

 この屋敷の主が来るまでの間ざっと部屋に置かれているものを見回してみる。


 剥製や絵画に壺、いわゆる調度品と言われるものは一通りそろってる感じかな?

 正直にいって値打ちはわからないが、成金によくあるただただ高いものを置いてあるという感じはしない。

 むしろ品物はバラバラでも妙な統一感がありセンスがあるように見える。


 丁度一通り物色した頃合いに部屋に扉をノックする音が聞こえたので、俺とエアデールさんは立ち上がって出迎える。


「お待たせしました、当主のセバスチャンと申します」


 いやあんたがセバスチャンっていうのかい!

 どっからどう見てもそんな名前に似合わない恰幅のいいおっちゃんじゃないか!

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