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8-41 飲み会で会費負けを気にする奴はすでに敗北している

 ファンバキア近郊には脅威となる敵がいないせいか、門は基本24時間空いていたおかげで俺は特に問題なく国内に入る事ができた。

 ついでに昼より夜の方がすいているため、身分証をまだもっていないダンジョンのメンバーを呼び出して作っておく。


 おっちゃんは流石にいなかったが、ちゃんと話は通ってたらしくあっさりと全員分を作る事ができた。

 まぁ、深夜料金という名目で多少の上積みを要求されたが誤差だ誤差。


 とはいえ全員で話咲亭に行くのも向こうが想定してないだろうから、適当に人目に付かない場所で皆を送り返し、俺は一人宿場エリアを行く。


 まだ日も落ちて浅い時間だからか宿の一階にある酒場らしきところからにぎやかな笑い声が聞こえる。

 だがそれも中央をすぎればなくなり、昨日と同じように離れるほど静かになっていく。


 かと思いきや目的地に近づくほどまたにぎやかな声が徐々に聞こえてくる。

 まぁ、そりゃ発生源が目的地なんだから当然だよな。


「うぃーっす。戻ったぞー」


 明かりが漏れていた扉をくぐってみればそこにはすっかり出来上がった白犬族のみなさんの姿が!

 飲み会で言うなら食べ物が全てでてきて飲み物のラストオーダー20分くらい前と言った感じ。


 普通の飲み会だったら会費負けもいいところだが、今回は取りおいてもらってるはずだし問題はなかろう。


「おにーさんお帰りなさい!」

「おや、丁度いいところに帰ってきたね」


 もうすでに飲んだくれて出来上がってるエアデールさんを見ないようにして、俺は何やら話していたコアさんとロレッタちゃんの近くにあった椅子に腰かける。


「丁度いいって何かあったのか?」

「うん、今日ロレッタが昼に売ったフィッシュサンドについて相談を受けててね」


 意気揚々と売りに行ったあれか、こうして相談されるって事は、


「売れなかったのか?」


 おかみさんが持ってきてくれた取り置きの冷や汁をすすりながら聞いてみる。

 んまい。


「ううん。秒殺。最初のお客さんが買って一口食べた後、すぐに興奮していくつかまとめ買いしたの。そしたら周りにいた人が一斉に買っていってすぐになくなっちゃった」


 売れたのに相談することがあるんか?

 

「買った人たちの中には料理人っぽい人もいたから、明日には真似されたものを出されると思うの。そうするとコストの面ではどうやっても勝てないから明日は厳しいだろうなぁって」


 なんだこの子、この歳でここまで考えてるんか!?

 それともこの知識レベルがファンバキアの標準ともいうべきなのか?


「そこで相談を受けてたんだけど解決策はすでに思いついているんだよ。でもそれにはマスターの協力が不可欠でね」

「んぁ? 俺に出来ることがあるんか?」


 ぶっちゃけて言うと俺はもう料理の腕じゃコアさんの足元にも及ばねぇぞ?

 ズボラ飯を作る一般人と最高級レストランのシェフくらい差があんだぞ?


「いや、単純に私をいったん家まで送って、10分後くらいにまたここに呼んでほしいだけだよ」


 ああ、そういうことね。そういう事ならお安い御用。

 人の目はあるが、コアさんをダンジョンへと転送する。


 空間魔法を目撃したロレッタちゃんが「これなら、密輸もし放題?」とかつぶやいてるのがちょっと怖いが、ファンバキアは基本的に禁制品はないらしい。

 地球では完全アウトの武器も麻薬も奴隷も持ち込み売買までは自由で自己責任だが、それで問題を起こしたらよくて奴隷落ち、悪けりゃ死刑と言ったところなんだとか。

 って、おっちゃんからもらった紙に書いてあったかな。


「うむ、今日の飯も美味いな」


 冷や汁の次にだされた魚の煮付けも見た事がない魚だったが味はバッチリ。

 味付けも濃すぎず薄すぎず絶妙に魚の味を引き出している。


「あのー、すみません」

「おん?」


 夢中で食っていたところにかけられた声に顔をあげてみれば、そこには見知らぬ二人の男。

 えーっと、どちら様ですかね?


「こちらは私のおとーさんとおにーさんです」


 ロレッタちゃんの紹介に合わせて頭を軽く下げる二人。

 そういえばお二人は昨日は商会で泊まり込みの仕事があったらしいので、会ってなかったな。


「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。昨日は宿ともども妻と娘も助けていただいたそうでなんとお礼を申せばいいか」

「あれは向こうが勝手にこっちの逆鱗にさわっただけだから、どうぞお気になさらず」


 むしろアレのせいでここが余計な事に巻き込まれないか心配でもある。

 とりあえず飯を食いながら、世間話をしていればあっという間に10分。


「ちとすみません。ツレをここに呼び戻さないといけないんで」


 一旦話を打ち切って再び空間魔法を使い、コアさんを呼び戻す。

 戻ってきたコアさんは両手に何かを抱えており、それを机へと置いた。


 持ってきたのは全部瓶か、中身は――


「これがフィッシュサンドの切り札になりうる食材。水玉キュウリのピクルスさ」


 コアさんは自信たっぷりにほほ笑んだ。

新しく18禁止小説もちょっと投稿してみましたよっ

ノクターンで「個室鑑賞店」って入力すると出ると思うので

よろしければそちらの方も応援・ブクマ・評価などなどよろしくお願いします

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