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8-36 備えがあれば大抵の事は動じなくなる

「旦那。お待たせしました」


 一通り考えを巡らせてしばし、何をしてたのかは知らんが思ったより遅かったな。

 っと、男の他にもう一人テントに入ってきたな。


 この顔には見覚えがある。確かこの男の娘さんだったか?

 改めてみてみれば、小柄でネズミのような耳を生やしてるあたりは親父さんとソックリだ。


「あまりいいものではなくて申し訳ありませんが、よろしければ」

「いえ、いただきます」


 娘さんから渡されたのは一杯のお茶。

 湯呑から手に伝わってくる温度は熱くもなく冷たくもない。


 一口飲んでみる。

 実にぬるい。それに味もうすい。


 とはいえ、これでも相手にとってはこれで精いっぱいという事はわかってるし文句は言うまい。


「それで、相談ってのはなんなんだ?」

「へい、相談というよりは頼み事と言ったほうがいいかもしれませんが」


 娘さんを連れてきた時点で大体予想はついてしまったが、あえて先を促してみる。


「旦那は相当なお大尽様とお見受けしやす! ですから娘を買ってもらませんか!?」


 うん、やっぱりそう来たか。前にマナミさんとアイリの事もあって心構えができてたからかそこまで驚きはない。

 返答を出す前に視線を娘さんの方に視線を向けて問いかける。


「ここにいても負担になるだけですから。売られて御奉公に出る方がみんなのためです」


 覚悟……というよりは全てを諦めたような微笑みを浮かべる娘さん。


「あっしとしてもオークションでどこの誰ともわからぬ輩に買われるよりも、多少でも人となりがわかってる旦那の方がマシだと思うんでさぁ」 


 俺の人となりを知ったうえでそういう取引を持ち掛けて来るというのは評価されていると取っていいんだろうか?

 もっともオークションだと仲介手数料やらなんやら取られるし、直接取引の方が儲けが大きいってのもあるんだろうがね。

 

「なるほど、頼み事っていうのはわかった」

「それじゃあ!」


 先を促そうとした男を手で制す。


「だが、答えはノーだ。悪いが人手は足りているんでね」


 本音を言うと収穫全般。特に農地や果樹園の規模が大きくなりすぎて、総出でやっても収穫やその後の処理が追い付かないことがちょくちょく起きてるからアルバイト程度の扱いなら欲しいっちゃほしいんだけど。

 でも買っちゃったらアイリみたいにウチのダンジョンに常駐させないといけなくなる。

 前々からずっと思っているがそれなら新たに召喚してしまったほうが何かと都合がいい。


「そうですか。残念です」


 本当にそう思ってるのかは声色からはわからないが娘さんがポツリとつぶやく。

 いや、まてよ。


「ところで、あんたらは今どこかで働いてたりするのか?」

「よくて日雇いってところですかねぇ。薄給ですが生きるためにはやらないわけにもいかねぇですし」


 そして男は身を少しこちらに寄せて、


「それにあっちの方も、アレ以来ご無沙汰ですし」


 俺にだけ見えるように口元をそう動かした。

 うむむ、俺としてはケンカ売ってきた連中を返り討ちにしただけなんだが、彼らにとってはそれも貴重な収入源だったようだ。


「私は子守を含めて日中は家事全般をしているので特には」


 まぁ、そういう役も必要よな。

 つまり二人とも時間を作る事は出来ないこともないってとこか。


「んで、あんたはここに来る以前は何をしてたんだ?」

「あっしらは手先が器用な一族でして、主に細工仕事を請け負っておりやした」


 男はそういうとテントの片隅に転がっていた木箱を拾い、俺に差し出した。

 ん? この木箱。よく見るとただの木箱じゃないな?


「こいつは一族に伝わる工芸法で作りましてね。寄木(よりき)細工って知ってますかい?」

「名前は聞いたことがある程度かな」


 確か色目の違う木材をつなぎ合わせて模様や工芸品を作る技術だったかな?

 最初は少々暗くてわかりにくかったが、じっくり見てみるとチェック柄の見事な紋様を描いていた。


 これなら工芸品として普通の木箱よりは高く売れるだろう。


「私の方は刺繍や編み物などを一通り」


 ちらりと俺の視線を受けた娘さんも自分のスキルをアピールしてくれた。

 なるほどー。二人ともいいスキルをお持ちで実に好都合。

 

「よし! じゃああんたを買う気はないが、代わりにバイトというか内職をやってみないか?」


 思い返せばウチには素材としてずっと保管したまま倉庫の肥やしになってる品がいくつかある。

 せっかく商業都市に来たんだし、素材のまま売るのも悪くはないがどうせならなんらかの商品にして付加価値を付けてより高値で売れるならそうしたい。


「内職ですかい?」

「ああ、ウチには今持て余してる素材がいくつかあってな。必要な工具もつけて提供するから何かしら売れそうなもんを作ってくれないか?」

「日雇いよりは魅力的な提案ですが、具体的に素材ってどんなものがあるんですかい?」

「えーっと、思い出すからちょっと待ってて」


 一応素材の在庫についてはアイリに帳簿をつけてもらって、それを斜め読みした記憶があるんだけど……

 外面は額に指をあてて思い出すポーズをしつつ、内心は並列思考(マルチタスク)をフル稼働させて必死に記憶を手繰り寄せる。


 思い出せ~思い出せ~。


「簡単に紹介するから、気になったものがあれば教えてくれ」


 二人に見えるように障壁を出し、思い出した順番から素材を映し出して説明する。

 ついでだし二人の反応を見てダンジョンの外にも存在するものなのか考えてみる事にしよう。

とりあえずAI生成で、できる事できないことは大体わかってきた

今の目標は地獄の断頭台の再現かなっ!

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