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8-28 取引はお互いのWinwinを探る交渉

「と言ってもそんなに大したことじゃない、今日食べた煮卵と夕餉の材料とレシピを教えてもらいたいんだ」


 おや、コアさんは味わいつつもそれらを推測していたように見えたけど諦めたのかな?


「別にそういうわけじゃないけど、教えてもらえるならそれが一番効率的だからね」


 推測はどこまでいっても推測にしかならないからねぇ。

 でも今日出してくれたおでんやシモフリはファンバキアでは割とポピュラーっぽいけど、そこに加えられたアレンジに関してはやすやすとは教えてくれないとは思うけどね。

 素性もしれない俺たちに下手に教えて真似をされたら、ここのウリを一つ失ってしまうわけだし。

 

「そう、だから取引っていったんだよ」


 コアさんは俺との会話を打ち切ると二人の方に向く。


「今日の出来事から考えて、今お金に困っているんじゃないかな?」

「それは……」

 

 ちょっとコアさん!? その質問は直球すぎない!?

 二人とも手を止めて押し黙ったっちゃんだけど!?


 いや、正直にいえば俺もその辺気になってたけどさ、と言ってもよその懐事情についてじゃない。


 二人の人となりもいいしメシが美味かったことから、仮にファンバキアに滞在するのならここを拠点にするのもいいかなと思っていたけど、借金取りから嫌がらせを受けているんじゃちょっと考えてしまう。


 今後も似たような嫌がらせをされた場合、俺たちにまで絡んでくるようなら返り討ちにするだけなんだが、それで変に恨みを買って二人への敵意が高まったり最悪宿を放火されでもしたら目覚めが悪い。

 俺達はいつでも宿にいるわけでもないしな。


 そんなわけでここの状況によっては、これ以上かかわらないも選択肢の内だと思っていたのだが……


「そう、だからこれでレシピを売ってほしいんだ」


 そういうと、コアさんはテーブルの上で右手を開く。

 覆い隠されていた手が動いて見えてきたのは数枚の金貨。


 流石に大型金貨には及ばないが、それでもレシピを一つ二つ教えてもらうには破格すぎる。


「これは大げさではありませんか?」

「別に施しを与えたいわけじゃないよ。私にとってはこのくらいの価値があると思ったまでさ」


 言葉通りに受け取るとベタ褒めしているようにしか聞こえないが、付き合いが長い俺にはわかる。

 嘘は言ってないが、基本金を必要としないコアさんにとって金貨はいいレシピがあったらそれくらい渡しちゃってもいいという価値しかもってないという事だ。


 おかみさんは何か裏があるんじゃないかと金貨とコアさんを見比べて思案しているようだが、


「いえ、教えるだけで金貨を頂けるなら願ってもない話です」

「よろしく頼むよ」


 深く頭を下げるおかみさんに対して軽く手を振ってこたえるコアさん。

 今すぐにでも教えてもらいたそうにしっぽを振っているが、俺達への給仕で二人はまだ食事をとっていないみたいだし後にしたほうがいいと思うぞ?


「ふむ、それならばこの賢のデーンにも交渉したいことがある」

 

 んぉ? ここまで飯の時も一人黙々と食ってたデーンが口を開いた。

 同時にデーンが机の上に乗せたのは数枚の大型金貨。


「そこの娘が普段は営業していないと言っておられたな? ならばこの金でしばらくこの宿を貸し切る事は可能か?」


 大型金貨数枚も出すから何を要求するかと思えば、この宿全部を貸し切るならそこそこの長期間なら割と妥当な所だと思う。


「えっと、一体何をなさる気でしょうか?」


 まぁ、おかみさんの問いはもっともだな。

 積まれた金がでかいほどそれに見合うリスクもついて回るもんだし。


「何、今外で寝ておるこの賢のデーンの仲間たちをしばらく泊めてほしいまでよ」


 ああ、なるほど。

 外にいる仲間――つまり白犬族の人たちがここにいる間の拠点として借りたいってわけね。


 話を聞いてちょっと考えてみたが、こいつは結構メリットがでかい。

 まずなにより危険地帯と言っていい難民キャンプ地からファンバキアの中に拠点を移せるわけで、現状持ち回りでやっている夜の警備の負担が大きく減る。

 今地下に隠してある物資を移動できるのがデカイ。


 それに生活環境も最近俺達がテントやらなんやらもってきたからこそ良くなっているが、それでも屋根の下でちゃんとした寝具を使った睡眠を取ったほうがより疲れが取れるだろう。

 実際、ダンジョンの中とはいえ野宿生活をそれなりにやっていたからこそ環境による睡眠の差は大きいのは身をもって知っている。


 後は盗賊連中から接収した金を間接的に支援に回せるっていうのもあるか。

 最初はその金でさっさと全額返済したらいいんじゃねっていう案もあったが、借金漬けで金に困っていた白犬族がいきなりドカンと全額返したら出所を疑われるに決まってる。

 

 それなら出費は基本スケイラ達がもってる金で出して、白犬族が稼いだ金を全額借金返済に回した方がまだ疑われにくいだろう。

 それに今後も考えると借金返済後の常駐宿としても使えそうだしな。

 どんくらい借りる気なんだと言われたら反論できないけど。


「外というと、今国境の外にいる人たちの事ですよね?」


 おかみさんの反応はあんまりよくはない。

 俺達は今は難民になっているとはいえ、現在の白犬族はある程度収入源があり余裕があるので悪事に走るようなことはしないとわかってるが、おかみさんにとっては難民を何十人もこの宿に入れるとなると犯罪に巻き込まれないか不安になるのもわかる。


「ふーむ。であるなら、この賢のデーンが代表の者を連れて来るゆえ面談でもして決めればよかろうよ」

「それでしたら」


 最初としてはその辺が落としどころかな?

 それにこの話は白犬族側にも了承を取るべき話だし。


 まぁ、アイリがいない時のカニエスさんなら大丈夫だろうしな!

動画投稿祭が近づいてくるっ

編集が間に合わへん

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