表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

242/274

8-26 狐の逆鱗触れるべからず

 周囲がどす黒くなったと思うような殺気が充満し、その発生源はゆっくり立ち上がるとこちらに振り向く。

 うぉぉ! 瞳孔が完全に開き、放つ殺気のオーラで髪やケモミミやしっぽが逆立って見える! 


 俺にその殺気が向けられてないとわかっていてもおっかねぇ!

 連中にとっては軽い嫌がらせのつもりだったんだろうがその代償は高くつきそうだ。


「い、いや すぐ帰りま……がっ!?」


 逃げようとした男達が最後までしゃべる前に身動き一つとらずかたまる!

 あ、これはコアさんの金縛りですわ。


「!!」


 男達はまばたきすらも声をあげる事もできず、ゆっくり歩いてくるコアさんを見る事しかできないようだ。

 こいつぁただの金縛りじゃないな。


 普通の金縛りと言えば四肢が動けなくなる程度だが、ブチキレコアさんがかけた金縛りは四肢はもちろん臓器すら止めているようだ。


 当然そうなりゃ呼吸もできないし心臓も止まる。

 推測を裏付けるかのように男達の顔が赤から青に変わってきた。


 コアさんの事だからこのまま相手を殺すような事はしないと思うけど……


「君たちはここの借金を全額支払わないといけない。足りなきゃ家財でもなんでも売り払え」


 眼は見開いてるが半分気絶している男達に近づいたコアさんがそっとそうささやいた。

 これは脅迫ではない! 幻術と言う名の刷り込みだ!


 ひとしきり暗示をかけた後に指を鳴らすコアさん。

 と、同時に呼吸と心臓を止められ泡を吹きかけていた男たちは金縛りを解かれ、糸が切れた操り人形のように床へと転がる。


 コアさんは気絶した二人の首根っこをつかむと、そのまま外に出て行った。

 外にはオルフェに殴られ、腹をかかえて苦悶の表情を浮かべる大男がいる。


 うんそりゃまぁ、指示した奴は制裁したけど、実行犯を許すはずがないよね。

 コアさんは無言のまま二人を放り捨ると、そのまま大男の頭を踏みつけて地面へと叩きつけた!


「やめっ! やべてっ!」


 しかも一回だけじゃない! 男の懇願を無視して二度三度と踏みつける!


 ちょっ! ちょっとさすがにやりすぎじゃないですか!?

 俺と一緒にドアから顔をのぞかせて様子を見ているロレッタちゃんとかドンビキしてますよ!?


 何度も叩きつけられた男はやがて声もあげる事もなくなり、完全に失神してしまったようだ。


 足の下の男が動かなくなったことを見たコアさんは足を離してかがむと大男に何かを張り付けた。

 と、同時に気絶していたはずの大男は向くりと身を起こし、二人を引きづって暗くなった夜道の向こうへと歩き去っていく。


 あ、そうか。コアさんが蹴りづつけたのは痛めつけたいわけじゃなく気絶させるのが目的だったのね。

 相手が気絶してれば操信符(そうしんふ)で自由に操る事ができるからか。


 いやいやいや! それはいいんだけどさ、頭から血を流している気絶した男が二人を引きづって夜道を歩くってちょっとしたホラーだぞ!?

 変な噂になったりしない!? 大丈夫? 

 

 そんな疑問を投げかける視線をコアさんに送ってみたが、当の本人は制裁して多少気が晴れたのかドス黒い殺気はなくなり何事もなかったかのように宿に戻ってきた。


「ゴミは掃除したから配膳の続きを頼むよ」


 そして普段と変わらぬ口調でおかみさんとロレッタちゃんを促す。

 

 とはいえ、二人は考える事を放棄したかのように動かない。

 いやー。俺達はともかく、普通の人があれを見せられて平然としていられるわけはないよねぇー。


「は、はい! ただいま」

「おねーさん。すっごくこw……いえ、お強いんですね」


 ロレッタちゃん今怖いって言おうとした?

 手段を選ばないところはあるけど飯に関する粗相さえしなければ常識人でいい人だよ?


「ロレッタ、それを置いたら上にいるお客様を呼んできてちょうだいな」

「はーい」

 

 まぁ、やり方はともかく結果的には二人というか宿を救った形になったからかそこまで時間はかけずとも二人は立ち直れたようだな。


「何やらひと悶着あったようだな、この賢のデーンのところまで地響きが届いたぞ」 

「まぁ、ちょっとからまれてな」


 地響きってオルフェが大男を投げた時にでたアレか。

 ロレッタちゃんに連れてこられたデーンはそのまま俺の隣へと座った。


「聞かないのか?」

「聞いたところでこの賢のデーン。何をすることもなし、聞くだけ無駄であろう?」


 それもそっか。

 この宿はトラブルを抱えているようだが俺たちに直接の関係はないもんな。

 それに夕食でするような話でもないし。


「お待たせしました。こちらファンバキアで取れる海鮮をふんだんに使った鍋になります!」


 少し温めなおした鍋を俺たちの前に置き、フタを取るロレッタちゃん。

 湯気と共にコアさんが作る料理に勝るとも劣らぬ良い香りが立ち込める。


「おお~!」


 海鮮鍋と言われただけあって中には白身や赤身といった魚の切り身を筆頭に、昼間食べた煮卵やいろんな野菜もたっぷり入ってる!

 ん? 魚にまざって入ってるこれは……はんぺんか?

 それにがんもやちくわに似たようなものもあるな。


 そうやってみるとこの鍋はまるで――


「おでんだな」

「おでんだね」


 コアさんも同じ感想を持ったようだ。

 正直、おでんならウチのダンジョンでもできなくもないし異世界ならではの料理を期待していた身としてはちょっと残念ではある。


「では早速いただかせてもらおうかな」


 コアさんにとってはその辺はどうでもいいらしい。

 まぁ、地球でも静岡おでんとか小田原おでんとか地域によって大きな差があるし、ご当地グルメみたいなものだと思えばいいか。


 それじゃファンバキア風おでんいっただっきまーす!

まにあった!

けど来週は・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ