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8-25 宿よりメシ

 とりあえず言うだけ言ってみたので、コアさんとオルフェを引き連れて宿へとはいる。

 索敵障壁が教えてくれた通り部屋の中にはおかみさんとロレッタちゃん、それに見知らぬ男が3人ほど、


 おおう、でけぇのがいるとは索敵障壁でわかってたけど実際目の辺りにするとやっぱりでけぇな。

 頭二つ分くらいでかい。


 それに強面っていうか牙が生えてるし人じゃないな。

 いかにも借金取りの脅し役って感じだが、俺達から見れば見掛け倒しのハリボテだな。


「へっ、へへ。そんな大金をもったお方がこんなボロ宿に泊っちゃあ荷物を盗まれますぜ。どうです? 今からでもウチの宿に来ませんか? ここよりも数段立派なお部屋を用意させてもらいやすぜ?」


 態度をロコツに変えて揉み手すらしそうな勢いでこちらに迫る男。

 その目は金づるを見つけたと言わんばかりにぎらついてるぞ。


「提案はありがたいが、そこの娘さんに渡したその金分のサービスをまだ受け取ってないんでね。悪いがまた今度という事にしてくれ」


 それに荷物といっても大したものは持ってないし、俺の索敵障壁(サーチウォール)やオルフェの五感をかいくぐれるような泥棒が早々ここに来るとは思えない。


「そんな事よりおかみさん。夕食の用意をしてもらえないかな? そこの鍋から実にいい匂いがするから早く食べてみたいんだ」

「え? あ、はい。少々お待ちください」


 特にコアさんにとっても宿を変えるという選択肢はない。

 彼女にとっては宿よりメシなのだ。 

 

「楽しみだねぇ」


 オルフェの方も完全に何事もなかったかのように椅子に座っている。

 男達の事など完全に眼中にないようだ。


「ま、というわけですまんな」


 すれ違いざまに固まる男の肩にポンと手を置く。


「宿を教えてもらったよしみで忠告しておくが、そこの金をもってさっさと帰ったほうがいいぞ」

 

 忠告と言う名の餌を撒いて、俺もオルフェの向かい側の席に座る。

 この手の輩は自分の思い通りにならないと腹いせに何してくるかわからんからな。


 素直にいう事を聞いて帰ってくれれば良し。

 だが、忠告を無視して彼女たちの食事を邪魔しようもんなら……

 ま、後はあいつらがどうするかだな。


 コアさんに促されたおかみさんは厨房へと入り、鍋のフタを開けて味見をした後に仕上げをするようだ。

 蓋を開けたことでより海鮮の香りが強く部屋中に広がり、ケモミミ娘二人と比べて嗅覚で劣る俺でもその匂いの効果で腹が減っていることを感じさせてきおった。


「おかーさん。私も何か手伝うよ」


 コアさんが作った空気の沈黙に耐えられないのか、ロレッタちゃんも厨房に入って盛り付けを始めたようだ。

 当の本人はしっぽを振りながら、そんな様子を肩肘ついて見守っている。


 残るは取り残された連中だが、あえて無視するように視界の外へと追いやり、索敵障壁で動向をうかがう。

 すると俺に話しかけてきたリーダーと思わしき奴がデカブツに対してクイッとアゴで何かを指示したようで、察したデカブツがうなづいたようだ。


 金は渡されたはずだがそれだけじゃ帰れないってか?

 やめときゃいいってのに。


 大男がさりげなくテーブルのない通路付近に移動したが、料理に集中しているおかみさんとロレッタちゃんは当然気づいてない。

 だが大男の方もコアさんと一緒におかみさんの調理を見ているオルフェのウマ耳が大男を監視するように動いている事には気にしてすらいない。


「おかーさん。これもっていくね」


 お、メインの鍋物ができたのかロレッタちゃんが鍋を持ち上げて歩いてくる。

 そして厨房と食堂を区切るカウンターを出るか出ないかといったところで、それまで突っ立っていただけのデカブツが駆けだした!


「え?」


 悪意を当てられたロレッタちゃんが気づいてデカブツの方をとっさに見たが、それ以上体は動かない。

 このまま何もなければロレッタちゃんは跳ね飛ばされ、持っていた鍋も床にぶちまけられてしまっていただろう。


 部屋中に衝撃の振動が巻き起こり――


「ぐっ……えぇ」

「部屋でいきなり走ったらダメだよぉ? ぶつかったらあぶないからねぇ」


 次に目にした光景は走っていたはずのデカブツが宙に浮き、そして右拳を男の腹にめり込ませたまま、軽々と持ち上げるオルフェの姿だった。


「う、うぇ」

「ちょっとぉー。こんなところで吐いたらダメだからね!」


 大男の悲鳴とも嘔吐とも聞こえる声にオルフェは一言そういうと右腕の力だけで男を投げ飛ばす。

 ふわりという擬音が聞こえるかのように男は空を飛び、店の外へと墜落していった。


 その墜落音は地響きがセットになっていた辺り、男は相当体重がありそうなもんだがオルフェにとってはビニール人形程度の重さぐらいにしか感じないんだろうな。


 一方残り二人の男達は目の前で起きた事が信じられないのか、店の外に落ちた大男の方に視線が釘付けとなったまま動かない。


「今、何をしようとしたのかな?」


 おっと、男達に呆けてる暇などなさそうだ。

 なんてったってウチの中で最も怒らせちゃいけない人の逆鱗に触れちゃったんだからな!

読み終わったらひっそりイイネしてくれるとウレシイ、ウレシイ


ちょっとまた忙しくなったので来週は投稿できるかアヤシイ

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