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8-23 闘技場は戦うだけの場所じゃない

 さすが歓楽区域の中央というだけあってどこを見ても人だらけ。

 先ほど巡回船を降りた人たちも周囲のお店や闘技場の近くにある大きな建物へと思い思いの場所へと向かっている。


 中央にある建物は闘技場ともう一つ、どちらも人の出入りは多い。


「あちらの建物はオークション会場とカジノとなります」


 カジノ!? いやまぁ日本はともかく海外いったら観光地には定番のやつだけど。


「中では様々なテーブルゲームの他、闘技場での勝敗、着順当て等様々なギャンブルをお楽しみいただけますよ」

「勝敗はわかるけど着順ってことはレースもやるの?」

「はい、開催内容は毎回変わりまして真剣勝負から素手のみの勝負、走力を競うレースなど様々です」


 なるほど、種目を変えるのは飽きさせないためってのもあるかな。

 見世物でも賭けるほうの意味でもね。

 さっきマーキュリーさんは毎回ケガ人が出るって言ってたし。ただのレースではないんだろうな。

 言葉のアヤかもしれないけど。


「お時間に余裕がありましたら中までご案内させていただきますが、いかがいたしましょう?」


 腕時計を見てみれば、夕暮れまではまだ時間があるがどうするかねぇ?


「私はそこまで興味はないからいいよ。周りのお店の方が気になるくらいさ」

「闘技場で何してるのかは興味があるけど、今日はもう舟巡りの方がいいかなぁ」


 もう昼も大分回ったし今から行っても中途半端になるよな。

 それなら俺もオルフェと同じく後日改めて行った方がいいと思う。


「という事で今回はパスで」

「かしこまりました」


 返事を受けてマーキュリーさんは杭から縄を外し、再び舟をこぎだす。


「ちなみにオークションはどういった感じなんですかね?」

「はい。建物内にはいくつか会場がありまして、一定期間出品をつのった後オークション前日に出品リストとスケジュールが告知されます」

「部外者の俺でも何か出品できますかね?」

「はい、極端な事を申しますと、お客様自身を競売にかけることもできます」


 え!? 人身売買もOKなの!?

 でも言われてみればここに入るとき奴隷を連れ込んでる馬車を見たけどまさかここで?


「ファンバキアとしては売買する場所を提供しているだけという建前で黙認されてますね」


 マナミさんが何でも売れるって言ってたけど、言葉通りだったとはたまげたなぁ。

 思ってた以上に恐ろしいとこだわファンバキア。

 

「ご紹介が逆になってしまいましたが、嗜好品や美術品はもちろんアカデミーで作られた希少な製作物なども出品されておりますので一度は足を運んでみてください」


 あ、アカデミー産のブツは結構興味がある。

 その手の物の相場も知りたいし近いうちに行ってみよう。


「それでは。観光区域の中央河川を一周ご案内させていただいた後に次なる場所へとご案内いたしますね」


 まず内側の闘技場やらカジノといった施設を紹介してもらったが、外側だって賑わいは負けちゃいない。

 雑踏に阻まれてよくは見えないが様々な店が立ち並んでいるように見える。


「こちらでは各種商品を取り扱う専門店の他、アカデミーの産物を使ったお店などもございます」

「例えばどんなお店があるのかな?」

「そうですね、観光客の方に人気があるのは」

 

 マーキュリーさん少し考えるそぶりをみせるとこちらに視線を移す。


「お客様は写真というものを御存じですか?」

「え? そりゃ知ってるけど?」


 俺を含めてさも当然と言った感じで答えられたことで逆にマーキュリーさんが少し困惑しつつもある店を指で指し示して、


「ええと、あそこのお店はファンバキア唯一の観光客向け写真屋となっておりまして、自身の姿を1枚記念に撮ってもらうのが他の観光客にとっては人気ではあるのですが」


 あ、そうか。前にアイリがそんな事言ってた気がする。

 ウチはもうアディーラがデジカメをもって撮りまくってるから当たり前だったけど、外はまだ写真が普及したてなのか。


「まぁ、私たちは写真にはあまり興味がわかなかったけど、他にどんなお店があるのかは興味があるから続けてほしい。特に美味しい料理を出す店があれば是非ともね」

「はい、わかりました」


 コアさんのフォローに気を取り直すとマーキュリーさんは舟をこぎ出した。



 メインの闘技場の他にも水が安定して豊富なファンバキアらしく、スパ施設があったりととにかく観光客に金を落とさせる施設が豊富な観光区画だったが、他にも輸入物を加工して直売する職人区画や舟や馬車で運ばれてきた物品を販売する商業区画など見どころは多かった。


 そのあたりをマーキュリーさんに説明してもらってぐるっと回ればもういい時間帯である。

 日が傾きかけて空が赤くなってくるころ、俺たちを乗せた舟はちょうどスタート地点である宿場区画の橋の下まで戻ってきていた。


「本日はご利用いただきありがとうございました」

「こちらこそお世話になりました。チップをどうぞ」

「ありがとうございます」


 ファンバキアにその習慣があるのかは知らんが、断る事もなく受け取ったあたりやるやつはやるんだろうな。

 

「それでは失礼いたします」


 マーキュリーさんは一礼すると舟をこぎ出し去っていった。

 水流があるとはいえ舟をこぐのは結構な重労働なのに。あの話が本当ならこれからシンガーの仕事もやるとか大変だよなぁ。


「さて、私達も宿に戻ろうか。美味しいご飯が待ってるしね」

「だねぇー。楽しみぃー!」

「おいおい、走る必要はないだろ。飯は逃げないんだからさ」


 夕時だからなのか、宿場区画には今入国して宿を取ろうとする人、勧誘する人、屋台を回す人でごった替えしている。

 俺たちはその雑踏をかき分けて宿へと向かっていった。

 


 

そりゃ賭け事ぐらいやるよねって事で

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