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8-16 ファンバキアといふところ2

「お急ぎの方は別途料金をお支払いいただくことで即座にご案内させていただきます。はい」


 どんな提案かと思えばまるで遊園地のアトラクションのファストパスみたいな事を言ってきおった。


「はぁ!? さんざん待たせた上にさらに金をふんだくろうってか!?」

「ですから、お待たせしたことに関しては謝罪させていただきましたので、はい」


 上がった抗議に対してまた頭を下げて平謝りするおっさん。


「しかしお支払いさえしていただければあらゆる優遇を受けられるのがファンバキアというところでして」


 ふーん。なるほど?

 さっき行列から抜けて行った連中は追加料金を払ったから案内されたって事か。


「で、いくら払えば案内してくれるんだ?」

「現時点ではこの金額となっております。はい」


 指で金額を指し示すおっちゃん。それはいいけどまさかの時価!?

 とことん稼げるものは稼ごうっていうところなのかここは!?


 まぁいい。


「これでいいか?」

「はい、大変結構でございます」


 ここに来る前にざっくりとではあるが金貨銀貨の相場はカニエスさん達から教えてもらった。

 その結果わかった事は


 スケイラ達から取り分としてもらった分け前はかなり高額だったという事だ。

 なんでも一般市民はまず持たない商取引用の大型金貨がまざっていたとか。


 だから難民達に財布ごとくれてやった時、彼らはビックリしたわけだ。

 地球で言うなら札束がぎっしり詰まったスーツケースをトイレに忘れたと言ったようなもんだしねぇ。

 使わないからって後回しにしてたけどサエモドさんから聞いておくんだったわ。


 とはいえ同じような革袋はまだいくつかある。つまり今の俺は金持ち!

 それならこれくらい気前よく払ってもいいだろうさ!


 まぁ、他に理由を挙げるなら、退屈に慣れてないオルフェがしびれを切らしそうだったからってのもあるけど、これは本人には言うまい。

 退屈しのぎだろうとなんだろうとここでオルフェが暴れたら大惨事になりかねない。


「それではご案内しますのでどうぞこちらへ、はい」


 おっちゃんに促されて歩き出す俺達。


「待ったまった! 俺たちも払うからつれてってくれ!」


 さっきまでの悪態はどこへやら、やはり退屈には変えられないのだろうか俺たちの背に向かってそんな声がかけられたのだが


「こちら先着一組様となっております。また伺いますのでその時に受け付けさせていただきます。はい」


 おっちゃんは振り返って一礼すると、そのままスタスタと歩き出してしまった。

 毎回一組に限定することで希少感でもだそうとしてるんかねぇ?

 次はもっと高くなりそうだ。


 まだ並んでる連中の羨ましそうな恨めしそうな視線を受けつつ、俺たちはおっちゃんに先導されて列の横を通る。

 遠くに見えていたはずの国境の門と壁が歩くにつれて徐々に迫ってきた。

 いや、近くで見ると思っていた以上にでかい。


 高さはちょっとしたビルくらいないかこれ?

 それに開いた門から見える壁の奥行きもそれなりにある。 


 しかもよくみりゃ素材も中世とかでよくある石やレンガといったものじゃない。

 まさかコンクリートか? いや、似てるようで違うか?


 わかんねぇ事は隣にいる専門家に聞いてみるか。


「なあデーン。この城壁どうやって作ってるか知ってる?」

「うむ。基本的にこの手の大型の建物は大量の石や土を魔法で粘土化して成型した後に固めて作るのだ」


 あ、そうか。この世界には魔法という手があったか。

 それに見た感じ人間の数倍は力がありそうな種族もいる。


 重機がないから建築物も勝手に中世レベルを想像してたが、魔法と種族の二つしだいじゃ現代地球に負けず劣らずの街づくりも可能か。


「どうかなされましたか?」

「あ、失礼。少し考え事を」

「さようでございますか。ささ、こちらへどうぞ」


 ずっと壁を見ていた事を丁度振り返ったおっちゃんに不思議がられたようだ。

 門から城壁へと入ると、細い横抜きの通路へと促された。


 天井や壁にとりつけられてる明かりは電灯みたいに明るいが電灯そのものじゃないな。

 球体なものが壁に埋め込まれてそれが光っているようだ。

 

「デーン先生。あれはどういう仕組みで光ってるかご存じですか?」

「詳しい仕組みはこの賢のデーンもしらぬ。だが出所なら想像がつく」


 デーン先生にも解説できないことがあった。まぁ当然っちゃ当然だけど。

 

「別の国だがダンジョンが出すギフトを研究・解析するアカデミーと呼ばれる施設がある。そこで汎用化に成功した量産品を買い取って使っているのだろうよ」


 確かによくわかんないけど水が湧き出るツボとか携帯用倉庫とかとんでもない効果をもつ道具がそこにあったら研究するのは当然か。

 完全に解明できなくても切り取ってこうして実用化されてるなら研究成果としては十分だろう。


 こうしてみると自分が勝手に想像していた世界とはまるで違うものが当たり前のようにある。

 国境だけでこれなんだから都市に入ったらもっといっぱいあるんだろうな。

 楽しみ!


 

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