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8-15 ファンバキアといふところ1

 ファンバキアに行くと決めた後、ダンジョンの皆に一緒に行くメンバーを募集したら全員なんらかの興味を示したんだが、予算がどれくらいいるのかわからないため二人にしぼらせてもらった。


 一人目は馬の扱いに長けているオルフェ。

 この世界に自動車なんて多分ないからな、街中を馬で移動することになるならオルフェがいてくれた方が何かと都合がいい。

 

 後もう一人はコアさんだ。

 この人はねぇー、話をしたとたんに「新しい食材が私を呼んでいる!」とか言って真っ先に手をあげたからねぇー。

 そこまでされたら選ばない理由もないし、俺の過去を共有してる分他の連中と比べて金銭感覚もある。


 キャンプ地から二人をダンジョンから呼びよせ、一緒に連れてきてもらった馬に乗ってファンバキアに喜び勇んで向かったんだが……


「いやぁ。なかなか進まないなー」


 俺たちは入国審査を待つ行列の波の中に見事に飲まれてしまった。

 国境の壁まで後百メートルと言った感じだが、そこに着くまではまるで地平線のかなたのように遠いな。


「全然動かないねぇー」


 俺の隣にいるオルフェもあくびをかましながら同意する。


「これも私たちのせいみたいだし甘んじて受けるしかないね」


 どうやら入国審査官にも盗賊を兼業してたやつが何人かいたようで、ベテランが行方不明になった上に難民まで押し寄せててんやわんやらしい。

 外にいる難民が出入りする都合上、通行許可証があれば簡単な荷物検査で通してくれるらしいんだが、当然俺たちは持ち合わせてないからここに並ぶ必要がある。

 通行証を持っているであろう難民たちや品物を持ってきた商人達が俺たちの横を素通りし、別の入口から続々入っているのを眺めるくらいしかやる事がない。


「んだなぁ。あ、そのアメ俺にも一個くれ」

「僕にもちょうだい~」


 コアさんからビー玉くらいのアメを受け取りほおばる。

 ん! なにこれすごい! 舌で転がすごとに口の中にイチゴが広がっていくみたい!


 こいつぁ、間違いなくソフィアの原料加工が加わってるな。

 これ一個でイチゴ20個分くらい使ってるんじゃなかろうかってくらい濃厚だぜ。 


「君も一つどうかな?」

「この賢のデーンにもくださるか。頂こう」


 そして白犬族側からもう一人、賢のデーンにもアメを手渡すコアさん。

 彼はファンバキアで買いたいものがあるらしく、過去に訪れたこともあり案内役を買って出てくれたのだ。


 仙人に妖狐に馬頭にホブゴブリンと見た目もバラバラな俺達だが、行列を構成している人々の人種っていうか種族も様々なので浮いている感じはしない。

 ケモミミが生えてるのはまだいいとして、頭が猫や犬の人たちも普通にまじって列を作ってるあたり異世界だという事を改めて実感するなぁ。


 とはいえデーン曰く場所によっては選民思想が強い国もあるが、ファンバキアは良くも悪くも金というか資本の前には皆平等なんだとか。


 だが悲しいかな、その言葉は嘘だ。

 俺たちのちょっと前に幌付きの馬車が並んでいるが、入り口を布で覆い隠して中が見えないようになっているものの索敵障壁なら薄い布くらいは貫通して中にある荷がわかっちまう。


 索敵障壁が伝えて来る感じからすると、あの馬車の中には鎖につながれた人間大のものが押し詰められている。

 動いてるのが伝わってくるから人形などではなく本物だ。

 おそらくは戦争で奴隷狩りにでもあったんだろうな。


 金さえあれば大抵の物は売り買いできる。その言葉に偽りなしってか。

 

「どこに売られるか運も必要だが、才能があればそれなりの待遇は約束される。後は本人の努力次第よ」


 そこまで悲観することはないってか、でも俺は奴隷はまっぴらごめんだね。

 願わくば彼らの未来に幸あらんことを。


「ねぇ~。ご主人退屈だよぉ~」


 俺がデーンとだべってる間、アメを食べきりコアさんとの会話も終わったオルフェがついにしびれを切らして俺に愚痴ってきおった。

 ただ愚痴られたところで俺にはどうしようもないんだがねぇ。暇つぶしの何かを出してやろうにもここは人の目が多すぎるから空間魔法はできれば使いたくない。


「おや? 前の方で何やらやってるようだね」

「え? なになに?」


 コアさんのつぶやきに暇つぶしになればこれ幸いと前方を凝視するオルフェ。

 とはいえ暇なのは俺もデーンも同じ、暇つぶしになるならみるっきゃないな。


 んー? なんか門の方から何人か出てきたと思えば、並んでる人に何か話してるっぽい?

 かと思えば並んでいた人が列からはずれ、一緒に門の方に向かっていった。


 なんだろなぁ? 並ばなくてもいい人たちが並んでたとか?

 それならその分行列が短くなるからいいんだけどねぇ。


 人が抜けた分だけ門に近づくと、また何人かが門から出てきてこちらに来る。

 おや、今度はこっちまで来そうだな。


「こちらはファンバキア入国管理局のものです。現在多数の入国希望者がいるため皆様方のお時間を頂き申し訳ありません。はい」


 若干ふくよかな体系をしているおっちゃんが俺たちを含む何組かに謝罪の言葉を述べて頭を下げる。

 待たされた不満のはけ口ができたためか、何人かがブーイングの言葉を吐く。


「ええ、ええ、本当に申し訳ありません」


 言葉ではそう言ってるが、軽く流してるなこのおっちゃん。

 この手の連中とは吐いて捨てるほど相手してきたとみた。


「つきましてはお急ぎの方にご提案がございます」


 ひとしきり悪態の言葉を受けた後でさらりと気を引き付ける言葉を吐いた。

 この状況で提案する事ってなんだろうな?

政治形態は深堀しません

金(資本)をもってるやつほど強く、ある程度やりたい放題できると思ってくだしあ

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