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8-9 Bar ククノチ

 ふぃ~。今日も良く働いたしよく食った。

 ウチのダンジョンでは夜まで仕事を持ち込むのは禁止なので、夕食後は自由時間である。


 昔に比べればできることもたくさん増えた。

 図書室で本を読む者、風呂で一息つく者、音楽室で楽器を弾く者、トレーニングに励む者。

 いやはや、本当に増えたもんだ。


 俺もいつもならこの時間は風呂に入る頃合いではあるが、今日は新しく作った部屋の様子を見るのを兼ねておじゃますることにしよう。


「じゃまするよ」

「はいー。どうぞですー」


 ポータルを通れば目に優しい明るさに照らされた木造のカウンターがまず目につく。

 さらに背後には鎮座するいくつもの酒。


「大分ごきげんのようだな」

「はいー。ここで飲むお酒は格別ですよー」

 

 この部屋のあるじであるククノチはカウンターの一席に座り、自分で作ったカクテルを楽しんでいる。


 そう、ククノチにおねだりされて用意した酒を楽しむための部屋。通称「Barククノチ」。

 先日パルクールでやらかしたお詫びも兼ねて作ってみた。


 椅子とカウンターと酒棚くらいしかないシンプルな部屋ではあるが、ほぼすべて木製だからかさながら森の中の隠れ家と言った古風な雰囲気がある。

 唯一似つかわしくないのは――


「ご主人様も何か飲まれますかー?」

「そうだな、なんか新作のカクテルがあれば作ってくれないか?」


 一般料理ならコアさんが適任だが、酒に関してだけならククノチの方が上だ。

 コアさんがキッチンに籠るように、ククノチは醸造所によく籠ってるからな。


「そういう事でしたら、おつまみでも食べながらちょっと待っててもらえませんかー?」


 出されたナッツをポリポリ食べながらククノチを見ているが、カウンターに酒は置いてくれたもののカクテルを作る様子はない。


「あれ? 作ってくれるんじゃないの?」

「んふふふー。もう少し待っててくださいねー」


 熟成とかじゃぁないよな? 何を待ってるんだろう。

 とか思ってたら後ろのポータルから誰かが来たようだ。


「おや? ボスも一緒ですか」


 誰かと思えばソフィアか。

 ちらりと俺の方を一瞥するとカウンターまで歩いてきた。


「ククノチさん。例のブツができましたよ」

「おおー! 待ってましたー!」


 そういいながらソフィアがカウンターに置いたのは、何やら黄色い液体が入った一升瓶。

 これもまた何かを液体にでもしたんだろうな。


「んふふー。ではご主人様。これが何か当ててみませんか―?」


 そうきたか。余興としてはおもしろいな。


「よし、受けてたとう」

「ですが、これをそのまま飲んだらすぐわかっちゃいますのでー」


 言うなりククノチは瓶のフタを開けるとカウンターに置いてあったグラスに半分ほどそそぐと、用意してあった酒を足して混ぜて――


「こちらのカクテルでどうぞー」


 トンっと俺の前にカクテルを差し出した。


「ソフィアさんもいかがですー?」

「酒はダメなんでオレンジジュースください」

「そうでしたー」


 どっかで聞いたセリフだが、実際ソフィアは下戸のようで先日のパーティーではククノチに一杯飲まされただけで酔いつぶれてしまった。

 自分の歓迎会だったのにイズマソクで無理やり起こされたのは気の毒だったとしか思えなかったな。


 それはさておき目の前のカクテルに集中する。

 香りは酒と完璧にまざっていて判断できない。つーか、酒どころかこの部屋自体が森の中にいるようで植物系の香りはオルフェでもない限りかぎ分けられない。

 

 見た目もほとんどアテにできない以上やはり味しかないか。

 グラスを口につけ酒を少し流しいれる。


 ん、甘いな。

 とはいえこの甘さは果物のような純粋な甘さではなく、どちらかと言うと穀物や野菜を食べた時に感じる甘さに近い。

 穀物と言えばこの前もらったサツマイモがあるが、あれはもう芋焼酎としてすでに完成している。

 となればまぜられた酒の方が芋焼酎か?


「お酒はラム酒ですねー。果物ではないという部分は当たってますよー」


 むむむ、ラム酒だったか。

 酒を踏まえてもう一度口に含む。


 やはり甘い、それが長く舌に残る感じがする。

 まるで濃厚なスープを飲んだ時のようなそんな後味……というか似てる?


 という事はこれはスープの材料になるやつだな!

 この甘さを考えると思いついたのは二つ。コーンかかぼちゃのどっちか。


 この二択なら――


「かぼちゃだな!」

「正解ですー」

 

 よっしゃ! あたった!

 コーンならすでにウィスキーがある、新たな酒を求めるククノチならこっちを選ぶと思ったぜ。


 正体がわかったところでもう一口。

 うむ! スープのような甘さにほどよくまわってくる酔いがベリーグッド!


「まったく、こんな脳の動きを鈍らす液体のどこがいいんだか」

「鈍くなって気分がよくなるからいいんだよ。まじめ一辺倒じゃ疲れるだろ」

「そうですよー。ソフィアさんは研究に打ち込みすぎなんですー」


 結局アマツに誘ってもらった風呂も、研究の時間が惜しいとかいって行水レベルだしなぁ。


「だから今くらいはせっかくだし付き合えよ。ここはゆっくり時間が流れるのを楽しむ場でもあるんだからさ」

「ボスがそういうのなら、研究もひと段落しましたしいいですよ」

「そうこなくっちゃな、ククノチ。酒とつまみのおかわりを頼む」

「はーい。今日は私も飲みますよー」


 お前はいつもだろうがというツッコミは抑えつつ、夜のおしゃべりを楽しむとしよう。

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その最強怪人、リアクション芸を極める

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夏休みもあって来週の投稿はまず無理

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