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8-7 錬金術師の研究報告 砂糖編

「お集りいただきありがとうございます。それでは早速研究の成果をお見せしましょう」


 皆を集めた座敷にて、リス娘の宣言にまばらな拍手が帰ってくる。


「ではボス、手はず通りよろしくー」

「あいよー」


 事前にリス娘から渡された資料を見て、壁際に障壁を出してそこに資料通りにテクスチャーを張ってやる。

 そう、俺が人間パワポだ!


 資料を見たまんまを障壁に映しだしてみたけど……なんか化学式が書いてある。

 ぶっちゃけ専門外だし見ても何がなんだかわからんぞ!

 

「こちらが砂糖の化学式なんだけど……みんなそのあたりの話に興味はなさそうね」


 うん、特に顔に出やすいオルフェは明らかにつまらなそーな顔してやがる。


「そうなるだろうと思って、ここに実物を用意しました」


 そういってリス娘はテーブルに二つの皿を置き、袋から砂糖を取り出す。


「こっちはボスが精製していたもので、もう片方はあたしが精製したものだよ」


 それぞれの皿にもられた砂糖を比べると、片方は明らかに白い。


「ではちょっと舐め比べてみてください」


 言われて二種類の砂糖を舐め比べてみたものの……


「んぅ~、どっちも甘いけどあんまり違いはわからんねぇ~」

「そうですな、主殿が精製したものは少し苦味があるかどうかと言ったところですなぁ」


 甘党二人が言った通り、見た目はともかく思ったより味に違いはないかな?


「そもそもボスが精製したものの時点でほとんどが糖ですから。あたしはほとんど漂白しただけっすね」


 なるほどね。雑味になるものを取り除いても糖そのものが甘くなるわけじゃないもんな。

 

「っちゅーことは、今コアさんが作ってくれとるデザートもそこまで変わらんとね?」

「うんうんアマツさん。いいとこを突くねぇ」


 クイッと眼鏡を上げる振りをするリス娘。


「じゃあ逆にアマツさんに聞くけど”最高の砂糖”って何?」

「ん~、そうねぇ~」


 指をアゴにあて顔を上に向けて考え出すアマツ。


「そりゃもうとにかくどえりゃぁ甘いものが一番よ」

「うん、普通はそこに行きつくよね」


 リス娘はアマツの返答に満足そうにうなづくと、ポケットから小瓶を取り出しみんなに見えるように机に置いた。


「だから試しに作ってみた。このビンの中にある合成甘味料は砂糖の数百倍は甘いよ」

「ほんとかね! ちっと味見させてもろてもよかね!?」

「ダメです」


 反射的に手を伸ばしたアマツの腕をペシっと叩くリス娘。


「何するとね!」

「アマツさんは甘さというものを甘くみすぎ。これをそのまま舐めたらひどい目にあうよ?」


 マジか!? 


「ええ、実際にひどい目にあった人がそこにね」


 リス娘の視線の先を追いかければ、そこにいたのは


「いやまぁ、忠告は聞いたけどどうにも我慢できなくてね。一応食べても影響はないってスキルでわかったからさ」


 ごまかすように頭をかきながら名乗り出たのはコアさんだった。


「コアさん。一体これを舐めるとどうなるのでありましょうか?」

「指先に少しつけて舐めてみただけなんだけど、甘さがずっと口の中にこびりついてる感じだったよ」


 アディーラの問いにコアさんは肩をすくめて答える。


「おかげで丸一日くらいは何を食べても甘いとしか感じなくてね。甘さもずっと続くと苦痛になると思い知ったよ」

「だから他の物にまぜて薄めて使ってくださいって言ったのに……」


 思い返せばいつもご飯を味わって食べるコアさんが、無表情で淡々と口に飯を入れていた時があったな。

 なんかの病気かと思ったけどそういう事だったんか。


「そうそう。すべてが甘ったるく感じる味噌汁とか斬新な経験ではあったけど、やっぱ素材の味が引き出せてないのはダメだね」


 うん、聞くだけで胸やけ起こしそうだわ。


「んで、そんなものをコアさんに渡して何を作らせようとしたんだ?」

「アマツさんが言う最高の砂糖を使ったデザートがどうなるか、皆さんに食べてもらおうかと」

「いいの!?」


 いや、それ大丈夫なの?


「適量を他の食材とまぜて使えば大丈夫」

「というわけで頼まれて作ったのがこれさ」


 コアさんがそういって二つのパウンドケーキを机に置いた。


「こっちは普通の砂糖を使ったケーキだよ」


 コアさんから切り分けられたケーキを受け取って口に入れる。

 

 うん、美味い。

 歯でかまずとも唇だけで簡単に裂けるほどしっとり柔らかく作られたケーキは舌にのせると砂糖の甘味をしっかり伝えてくれる。

 それに何よりも――


「このケーキ、ブドウの果汁がたっぷり使われてますねー。とってもおいしいですー」


 うん。味もさることながら葡萄の香りが強く効いていて、これがまた食欲をかきたてるんだ。

 全員が食べ終えた頃合いを見て、コアさんがもう片方を切って皆に手渡した。


「そしてこっちが合成甘味料を使ったケーキだよ。もちろんその砂糖を使った事以外は全部同じように作ってある」


 見た目は変わらないが、こいつにはコアさんを無の境地に陥れた甘味料が入ってるんだろ?

 しかし周りを見るとみんな好奇心の方が勝ったのか、思い思いに口に入れている。


 こうなると食わないという選択肢はない!

 何事も経験だ! いっただっきまーす!

 

ちょっと公募に挑戦してみたくなったので

こっちは投稿ペースがゆっくりになります

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― 新着の感想 ―
[良い点] この作品が気に入り、いつも楽しみにしています。 楽しみに待っていますので公募頑張ってください。 [一言] そろそろ登場人物増えてきたので、登場人物紹介まとめを作って頂けると助かります。
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