8-1 子供の時になれるならなりたかった職業の一つはこれだよね
「主さん。おうちがない子が出てきたからまた改築してほしいとよ~」
「僕の方も! 新しい子が生まれて牧草が心ともないんだよぉ」
「マスターがいない間に収穫した原料の加工もたまってるからね。できるだけ早く頼むよ」
「OKOK、わかった順番な!」
あ~、忙しい忙しい!
まさか十数日間留守にしただけでこんなにやる事がたまってるとは思わなかったぜ!
とはいえ白犬族の旅に着いてくって言ったのは俺のわがままみたいなもんだし、こうなるのもある意味でわかっていた。だから甘んじて受けよう。
それにちゃんとケモミミ娘達の要求を満たしたらたっぷりブラッシングさせてくれたしな!
これだけで24時間戦えますよ! 眠らなくても平気とはいえウチのダンジョンで24時間働くのは労基法違反だけどな!
とりあえず今回は俺が全部やったが、不在になるたびに仕事がたまるのは問題だな。
そーいえば農地エリアはククノチが操作できるようにしてたんだったけか、同じようにアマツとオルフェにもある程度は自分で海エリアと草原エリアを改造できるように権限を委譲しておくか。
それぞれが使いすぎてうっかりDPがなくなろうもんなら、即死んじゃうからそこだけは注意してもらわないと困るけど、本当に危ないときは本体コアさんが警告してくれるだろう。
そんなこんなでダンジョンに戻った翌日はてんてこまいだったが、2日目になってようやく余裕が持てるようになった。
他にも自動化できそうな部分があればしておきたいけど、それは後々の課題としておこう。
それよりダンジョンに戻った今やらなきゃいけない事がある。
「とうわけで、薬全般の知識をもった新しい仲間を召喚しようと思う」
居間にみんなを集め、黒豹族との戦いの顛末を話したうえで是非を問う。
「確かに今回の解毒はたまたま上手くいっただけだしいいんじゃないかな?」
「そうですねー。動物毒だったら助けられなかったと思いますー」
解毒を担当した二人からは肯定的な返事が返ってきた。
改めて思うが、かなり綱渡りだったんだなぁ
「んー、別にいいけど回復薬じゃダメだったのぉ?」
それは次に言いたいことを言いやすくしてくれる実にいい質問だオルフェ。
「推測になるけどあれはケガ……というより正確に言うと体の器官を修復してくれるだけだ。それだけでも十分すぎるほどだけどな」
スケイラとコウに使ってみた反応から予想すると効果はそんなとこだろう。
手裏剣にやられた傷は塞がっていたが、体力はあんま戻ってるような感じはしなかった気がする。
「あと薬剤師って言ってもやる事は解毒だけじゃない。例えば砂糖の精製の品質を上げる薬品とか今の生活にいろいろ役立つものを作ってもらいたいんだ」
「それはいい! 是非やってもらいたいね!」
しっぽを振り、立ち上がって全肯定するコアさんがかわいい。
だから薬剤師というよりは化学者と言ったほうがより正確かもしれない。
「早速召還をしようと思う、実はもう新しい人物像は作ってあるんだ」
「おおー」
ほしいと思ったその時からちょいちょい構想はしてたからね。
「んで、考えてる間に私もっとロマンあふれる職業を思いつきました」
「ん? よびだすんは薬剤師じゃなかと?」
ここは地球じゃないんでね。上位互換の職業があるって気が付いちまったのさ!
一旦立ち上がり、みんなにちょいとスペースを作ってもらってっと、
パンッと手を叩く。
「それじゃあでてこいやぁ!」
勢いのまま地に手をつけ合わせて召喚を許可すれば、まるで錬成したみたいに新しい仲間が増えるって寸法さ!
錬成陣はないが、召還には成功したみたいでいつもどおり粒子が集まり人型に固まっていく。
纏っていた粒子が散ったとき、そこには新たなケモミミ娘が立っていた。
うむ! 今回も特に問題なく成功したな!
「んー。身長はウチと同じくらいかー?」
「そうだねぇ。でも尻尾は僕のより大きいなぁ」
二人が言う通り今回モチーフにした動物は小さい体に大きな尻尾が特徴のあの動物である。
「そう、今回はリスがベースのリス娘。リスの錬金術師だ!」
それはあらゆる非金属を貴金属に換える学問。
そしてファンタジーなところではあらゆる物質を作り出す職業。
それが錬金術師!
「主殿、質問があります。リスと錬金術師には何か関連があるのでありますか?」
「うむ。いい質問だアディーラ君」
今まではコアさんを除いてやってほしい事が得意そうな種族を選んできたからね。
「答えはただの趣味です」
「え~」
いやだって! キツネ、ネコ、ウマ、魚、トラときたらげっ歯類のケモミミ娘が欲しくなるのは必然じゃん!
「そうですかー?」
そんな疑念に満ちた視線を向けないで!
それに第一錬金術に向いた種族って何なんだって話だよ!
「確かにねぇ」
なら何だっていいじゃん! 何だっていいなら趣味に走ってもいいじゃん!
「いえ、別に反対してるわけではないですよ」
「マスター。それよりもこの子とっくに気が付いてるよ。気を使って目を閉じてくれてるみたいだけど」
うぉう! 言い訳するのに夢中で忘れてたぜ!
「もう目を開けてもいいのかなー?」
「はい、大丈夫です。お騒がせして申し訳ありませんでした」
答えてリス娘は瞼をゆっくり開いた。
小柄な体に丸い目、そして大きなしっぽがベリーグッド!
目を開いたリス娘はキョロキョロと周りを探るように見渡し、やがてピタッと俺の方に視線を向ける。
「女6人に男が1人。だから君がこの集団のリーダー?」
「正解。ここのダンジョンマスターをやらせてもらってる」
「なるほどー。つまりあたしゃここに召喚されたんっすねー。頭がスッキリしないのもそれかなー?」
頭をボリボリかいて考え込むリス娘。
「ま、これから説明するから安心してくれ。それよりとりあえずお願いがあってな」
「なんっすか?」
リス娘の視線を誘導するようにある一点を指さす。
「居間で呼び出した俺のせいなんだが、ここも土禁でね。あそこで靴を脱いでくれ」
「主殿、自分を呼び出したときも同じことをしたでありますな」
「天丼芸は2回までだからね。マスター」
成長しないマスターでごめんよ。
本当はファンバキアの話終わらせた後に加入予定だったけど
前倒し
なんとかなるなる