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7-51 ファンタジー世界の匠の技

 穴掘りは思った以上にあっさり終わった。

 要因は二つ、一つ目はもちろんデーンの存在だ。

 

 人力で掘る白犬族の人たちに対し、土魔法が専門のデーンは土を掘るのも持っていくのも速い速い。

 さらに階段の整形も魔法でやってくれたおかげで大幅な時間短縮となった。


 二つ目はククノチである。

 彼女がケガ人を片っ端から治してくれたおかげで時間と共に人足が増えたもんだから、交代交代で実質休憩なしで作業を進められた。

 さらに植物の根を地中に張り巡らして補強もしてくれたもんだから、偽装テントの真下だけじゃなくその周囲まで穴を大きくしても崩れることもない。大木の柱に光る植物の照明もつけてくれたしね。

 土木工事も土魔法とかありゃ楽勝だなぁ、人数にもよるが地球と比べりゃコストが安い安い。


 そうこうしてるうちに約束した時間になったか。

 当初の予定より大分広くなった地下室で俺は再び空間魔法を使いダンジョンと繋ぐ。


「仙人様? ここは一体どこでしょうか?」


 皆を先導して最初に穴から出てきたアイリが周りを見渡して問う。

 行って帰ってきたら見覚えのない穴の中じゃ当然そうなるわな。


「ここはカニエスさんの提案でキャンプ地の下に掘った地下室だ。資材を隠すのにちょうどいいだろ」

「なるほど、ククノチ様が作られたのですね」

「仕上げたのはククノチとデーンだが、一応みんな頑張ったんだぞ」


 大木の柱を見て判断したのであろうアイリに一言フォローを入れておく。


「そうだよ! パパだって一生懸命掘ったんだからね!」

「そうですか。頑張りましたね」


 アイリが戻って来てダメ親父モードになったのか戻ったのかよくわからんカニエスさんが叫ぶ。

 なんというか、カニエスさんに対するアイリの評価が異様に低い原因がわかった気がする。


 まぁ、邪険に扱っているとはいえガチで嫌っているわけではなさそうだし、これはこれで良好な関係なのかもしれないな。

 

 その後も続々資材をもってこちらにくるケモミミ娘達プラス1。

 本調子ではないといっていたスケイラやコウも、携帯用倉庫をかかえてやってきた。


「汗をかいたから終わった後に改めて温泉に入らせてもらったけど、ただしく入れば気持ちいいもんだね」

「本拠点にもほしい施設だった」

「帰ったらマナミにねだってみるかぁ、また当分先だって言われそうだけど」


 持っていたものを床に置きながら、ウチのダンジョンの感想をもらす二人。

 衛生施設は大事だし、小規模なものなら頼めば作ってくれそうな気はするがね。


「ふーむ、余地があるのならカマドはここに作ろうかのう」

 

 予定より大きくなった地下室と携帯用倉庫のおかげで預かった資材を置き切ってもなお余裕がある。

 一酸化炭素中毒には気を付けないといけないが、ここなら暖もとれるな。


「ククノチ殿、アマツ殿。少々この賢のデーンに手を貸してくださらぬか?」

「ええよー」


 ウチの子たちの手を借りて作業を始めるデーン。

 どういう風に作るのかは非常に気になるところではあるのだが……


「サエモドさん、ウチに預けたものがここに全部あるか確認してくれ」

「わかりました。では倉庫の中でやりましょう」


 お使いはちゃんと全部引き渡したとこまでお互いに確認して完了だからな。

 一番近くにあった携帯用倉庫を開けてサエモドさんが中に入り、俺も続いて中へと入った。



「はい、確かに預けたものは全てありました。ありがとうございます」 

「この携帯用倉庫はこのまま貸しますので自由に使ってください」


 地球にあったらすっごい便利なこの携帯用倉庫を俺たちが持ってても、スペースが足りなくなったら迷宮の胃袋をいくらでも拡張できるし、外に出ても俺の空間魔法でお取り寄せできるからあんまり使い道がないのよね。


 ん? この倉庫は今は白犬族が住んでるとこのダンジョンのゴブリンが持ってきたものだから、むしろ所有権は白犬族側にあるのか?

 なら返すっていうかあげちゃってもいいか。


 ともあれ、これでやる事もやったしもうここには用はないな。

 携帯用倉庫から出て地下室に戻ってみれば、予想通り反対側の壁に立派なカマドとも暖炉ともとれるシロモノができあがっていた。


 ついでに言うなら、倉庫に入る前は天井とかは補強のために張られた根がわりとむき出しになってたんだが、今は漆喰のようなものでしっかり補強されている。

 これなら雨が降っても雨漏りもしなそうだ、見事な手腕だな。


 お? カマドの隣に見慣れない壺がおいてある。大きさは寸動鍋くらいかな?

 ちょいと中を覗いてみれば これはただの水か?


 ……! ああそうか! 壺の中に水!

 つまりこれが聞いてたいくらでも水が出てくる白犬族の神器か!

 

「煮沸しなくても使える水があるだけでもかなり楽になるねぇ」


 交易都市なだけあって近くに海に川もあるから水は豊富だけど、消毒しないと使えないからねぇ。

 人数分の薪代だけでも積み重なればかなりの負担になるからな。


「ちょうど昼時だしコアさんとやら、この出来立てのカマドと水を使って何か作っておくれよ」

「ふむ、そうだね。ケガから復帰した人も多いし指導がてら雑炊なんてどうかな?」


 あー、雑炊はいいね!

 いろいろな乾物も持ってきたし、一度にたくさん作れるしでベストな選択だな!

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