7-43 カードの切りあい
八方手裏剣ねぇ。
予想外のものを飛ばしてきたが、この世界においては知識の強化やギフトの存在がある以上、忍者のいるいないはあまり問題にならないな。
それより考えなきゃいけないのは、この状況でなんで八方手裏剣を使ってきたかという事だ。
こいつはたくさんの細かい刃がついてる以上、傷はつけても決定打にはならない。
直撃すれば致命傷になる手斧みたいなでかくて刃渡りの大きいものじゃなくて、逆に小さくて見にくい手裏剣を使った。すなわち小さくても傷を負わせればそれでよかったという事になる。
という事は……
――っ!
結論を出したと同時に急いで振り返る!
そこには薙刀の先端を地面につけて立ってる状態がやっとのスケイラと、立ち上がろうとしているがひざが地面から離れなさそうなコウの姿があった。
敵に詰められる前に一歩で二人との間を詰めて、
あっ! 脇腹あたりに俺に投げつけられたものと同じ手裏剣が刺さっている。
推測が当たっていれば、素手で触るのはまずい。
手を障壁で保護してから手裏剣を引き抜いて見る。
……やはりか。
刺さった部分についているのは二人の血だろうが、それ以外の部分にもなんらかの液体がついている。
これは毒で間違いないだろう。
くそっ! 音が遮断されて俺に手裏剣が投げられた時点で同じ事を二人にしてる可能性に気が付くべきだった!
俺と違って二人は空間に取り込まれた所を見ていない。だから音が聞こえなくなった事にすぐには気が付かず、死角から投げられた手裏剣にも対応ができなかったようだ。
ついでに言うと俺の警告も空間にはばかられて二人には届かなかった可能性が高い。
連携を崩し、奇襲を決める。正直舐めてた部分もあったがやってくれたな。
だが、反省してる時間はない。
二人が動けなくなったのを見て、囲んでいた連中が一気に詰めてきた。
まずいな。俺にはこの状況を打開できる攻撃方法はない。だが、耐えることならできる!
遮断障壁!
俺を中心に、スケイラとコウも入れて球状の障壁を展開する。
詰めていた連中は足を止め、手裏剣やらなんやらを障壁に投げつけるが、障壁はそのすべてをはじき飛ばす。
遮断障壁はとにかく外敵からの防御に特化した、あるいみで最も障壁らしい障壁だ!
物理的な攻撃はもちろん、その気になれば魔法や熱・ガス・光といったあらゆるものを遮断してくれる。
まぁ、光まで遮断すると周りも見えなくなるため今は通すようにしてあるが……
ただし、当然欠点もある。
これも当たり前のことだが、外敵が一切こちらに手を出せなくなる代償にこちらも相手に向けて攻撃をすることは一切できない。
一度出したが最後、本当に”耐える”事しかできなくなってしまう。
一時的に敵の強力な攻撃に耐えるという使い方ならいいが、このように囲まれてる状態で苦し紛れに張っても悪あがきにしかならない。
だが、この障壁の外に逆転手段があるなら話は別だ!
俺たちは障壁を挟んで囲まれてはいるが、敵を一か所にまとめたという見方もできる。
そして、夜空には自らが出した闇をまとって飛んでいるアディーラがいる。
声は届かないが彼女ならこの闇の中でも見えるはずだ。
空を見上げ右手をあげて、彼らに向かって振り下ろす。
一部の聡い奴は俺の行動から、空から敵襲があるとみて障壁から距離を取る。
ほぼ同時に黒い影が障壁の周りを走り、まだ障壁を叩くカンの鈍い連中の身体を抜けていく。
哀れな こいつらは何をされたのかもわからずに死ぬことになるな。
その内一人が障壁を叩いた際、その反作用の衝撃で身体中に亀裂が走る。
「へ?」とでも言いたげな顔で彼が剣を握る自分の右腕を見たのと同時に体が崩れ始め、肉塊へと変貌した。
それを皮切りに多少の時間差はあったものの、障壁を叩いていた連中は皆同じ結末をたどり地面へと転がっていった。
うーむ。 ようやく出番が来たからか気合はいってんなぁ。
生き残った連中と同じように空を見上げてみれば、自らがまとっていた闇から姿を現しながら障壁の前に急降下してくる人物が一人。
勢いをつけたまま自らの翼を広げ三点着地。
こっ……これはいわゆるヒーロー着地!
敵と対峙するために俺が見たのは後ろ側だが、これでも十分カッコイイ!
やだっ! 俺の中二心にキュンキュンきちゃったわ!
よし! 次にアディーラに空中輸送されるときは、空から投下してもらって俺もやろう!
この着地は膝に悪い悪い言われてるが、柔軟障壁を使えば膝にもきっと優しい。
それはともかくっ!
ここで本命投入! 夜戦のプロ、アディーラさんの参戦だ!
いいね機能を有効にしてみました
よろしければ押していってね!
アディーラさんにヒーロー着地をやってもらいたいだけの人生じゃった・・・