7-41 俺流カポエラ弓術
連中は手にもつ黒剣で急所を守りながら、武器が弓で接近戦に向いてないであろう俺に向かって突進してくる。
確かにこの間合いじゃ矢を出してつがえる暇はない。これが普通の弓兵なら一人も倒せずあっさり切られて終わるだろう。
だからこそ、ここはあえて派手に行かせてもらおう!
俺が矢を撃ってこないの見て取って、先頭を走っていた男が突きの構えを取る。
心臓を狙ったその突きをジンガステップの要領で左半身をひねってかわす!
男はそのまま通りすぎようとし、後ろに控えていたやつが間髪入れず攻撃をよけた俺を狙って駆けてくる。
よけて体勢が崩れた俺を狙う算段だろうが、それは通じんよ!
軸足を捻り回転を加え、遠心力をつけた左足を振り上げて――
分断障壁!
かかと落としに近い変型回し蹴りが男の延髄を捉え、そのまま相手を切り裂いた!
「!?」
足で両断された仲間を見て後ろを走っていた連中にわずかな動揺が見えた。
すぐに立ち直ったようだが、その動揺は命取りだ!
左足はそのまま地面につけ、今度は右足に魔力を込めて――
やつの剣が俺に届くより早く、今度は右回し蹴りと共にだした衝撃障壁で近くに迫っていた男を吹っ飛ばす!
「へっ?」
運悪く……というか俺にとっては狙ってやったことだが、さらに後ろにいた不運な数人を巻き込んで地面に転がった。
ほれほれ、さっさと立てよ。立たないとさっきの蹴りの間に矢筒から引き抜いた矢が飛んでくるぞ?
今は仕留めることよりも戦闘不能にすれば十分。他の黒豹族に距離を詰められないうちに次々矢を放ち転がってる連中に突き刺していく。
「!」
撃たれる仲間を囮に左側の死角から攻めようとしてくる奴を感知!
一気に接近して、弓をもつ左手を前に突き出してがら空きに見える俺の胴を薙ぐつもりか?
奴の剣の間合いに入り、薙ぐモーションを始めた瞬間に右後ろに仰向けに倒れ込む。
間を置かず奴の黒い剣が俺の目と鼻の先ギリギリを抜け、逆に剣を振ってがら空きとなった脇が丸見えだ!
ブリッジの形から右手と左足を軸に右足を振り上げ、男の左胸に蹴りを入れる。
「ぐっ!?」
肺から空気を吹き出し、男の動きが止まる。体勢がいまいちだったから仕留めきれないか。
だがそのスキをついて左足で地を蹴り右手を軸に一回転して着地する。
着地後に右手で矢を一本矢筒から引き抜く。
それを見て撃たせまいと、男はダメージの残る体で前に一歩踏み出し、剣を俺に向かって振り下ろそうとしてきた。
かかったな! 矢を持ってもすぐに撃つとは限らんよ!
屈伸状態から中腰になりつつ左足を右前に踏み出し剣の軌道から身をかわす。
これで剣を振り下ろした男に対して俺は背中を見せる形になるが、この状態からでも相手を蹴れる手段があるのがカポエラのいいところだ!
踏み出した勢いにひねりを加えて右足を伸ばして浮かせれば、それだけで奴の脇腹を狩る後ろ回し蹴りとなる。
これをそのまま直撃させるだけでも奴を戦闘不能に追い込むことはできるが、ここは他の連中に心理的圧迫を与える生贄になってもらう!
一番最初にやったときと同じく足に分断障壁をまとわせ、脇腹に入った蹴りをそのまま振りぬく!
振りぬいた右足を地につけ前を向いた時、そこには奴の下半身が仰向けにゆっくり倒れていくところだった。
少しの間をおいて、蹴り切り飛ばされて上空を舞っていた上半身が重力にひかれて地面へと落ちる。
暗くて表情はよく見えないが、他の連中がこちらに近づくのをためらうあたり効果はあったようだな。
ま、距離をとってくれるならそのまま弓で射かけるだけなんだけど、右手には矢を持ったまんまだし。
連中の視線が飛んだ上半身に引き付けられてるうちに、こちらは身をかがめできる限り地面に近くなるように矢を放つ。
夜の闇と草に紛れて飛ぶ矢は普通なら相手の膝に命中するコースだが、魔力誘導のかかった矢は膝に当たる寸前で高度を上げ、あごから脳へと突き刺さった。
どうよ! これが俺のカポエラ弓道だ!
「オルフェの動きもおかしかったけど、君もなかなか変態的だねぇ」
「いやいや、あれと比べりゃまだまだよ」
相手をいなしつつも時々ちらちら横目で見ていたスケイラからありがたい感想をもらったぜ!
オルフェの場合、サエモドさんにムーンウォークという名の体重移動のコツを教えてもらって以来、すごいというよりキモイと言うくらい動きが変態じみているからなぁ。
それでいて蹴りは純粋な膂力だけで鉄の板に穴を開けるくらい強い。
はっきり言って純粋な体術勝負の場合、オルフェには逆立ちしたって勝てねぇよ。
「集中しろ、くるぞ」
「それもそうだ」
コウが素手だと見て取って、中途半端に前にでた一人をインファイトにもちこみボコボコに殴り飛ばしたコウからありがたい忠告をもらったぜ!
確かに何人かは殺ったのに向こうの戦意はまだ衰えてない。
こりゃ傭兵業だからってわけじゃなく何かあるな。忠告通り気を入れなおして挑むとしよう。
ぬぁーん
小説で動きを書くのはきついよぉ
伝わってるのか不安でしょうがない