7-40 援軍到来、いや投下?
「はっ! はったりだな!」
黒豹族の一人が笑い飛ばすが、事実なんだけどなぁ。
「じゃあなんで護衛は姿を見せないんだ?」
「いやだって、この程度ならまだピンチの内にも入んないから」
組み伏せられて見えてはいないが、場の空気が険悪になっていくのがわかる。
「ちょっと痛い目に合わないと自分の立場がわからないのかぁ?」
こちらとしては事実を言ったまでなんだが、挑発と受け取ったのか俺の頭を蹴ろうと連中の内一人が近づいて足を振り上げた。
「あ、そうだ。ついでにもう一言いいかな?」
「あ?」
思わず反応し動きを止める男。
「お前はもう死んでいる」
なぜなら君の頭上めがけて空から落ちてくる人がいるからね。
男が次に何か言いかけるよりも早く、落ちる勢いも利用した薙刀の一撃が彼を頭から真っ二つに両断した!
スケイラさん、やることが派手だねぇ。いや、この場合はアディーラが落としたからか?
俺の発言でほぼ全員の視線がこちらに向いていたこともあり、周りの連中はまだ何が起きたのかすらわかってないようだ。
そのスキをスケイラが逃すはずもなく、素早く薙刀を構えると横なぎに振り、周りにいた男数人の首を薙ぎ払う。
「!?」
おーおー、俺に馬乗りになってたことで薙刀の軌跡からはずれて生き残った男の動揺が伝わってくるわ。
何が起こったか理解してスケイラに意識を向けたのはいいが、逆に俺から注意をそらすのはダメだな。
ケモミミ娘なら歓迎だが野郎に馬乗りされて喜ぶ趣味はないから、そろそろどいてもらおう。
まだ男が気が付かない内にこっそり両腕にまとっていた障壁を消す。
実は手首を縛られた時に障壁で太さを水増ししてあったのよね。
だから障壁を消せばその分縄は緩む。できたすき間を利用して分断障壁で一気に縄を切る。
「ふんっ!」
「うわっ!」
間髪いれず自由になった両手と腹筋を利用し、馬乗りをしていた男を後ろへとはね飛ばす。
予想だにしていなかったらしく男は何の反応も見せないままキレイな放物線を描いて背中から地面に激突した。
「このっ……」
そこでようやく状況を理解した男は悪態をつきながら立ち上がろうとするが――
スケイラと同じく上空から落ちてきたコウの右こぶしが男の頭を捉え、そのまま地面に叩きつぶした!
暗闇でほとんど見えてないからいいものの、見えてたらなかなかスプラッタな光景だっただろうな。
「受け取れ」
当の本人は気にした風もなく、左手に持っていた俺の弓矢を投げ渡す。
スケイラとコウが連中をけん制してくれている間に素早く矢筒を腰にすえた。
実際のところはけん制するまでもなく黒豹族の連中は混乱していて動くこともできなかったわけだが
そりゃまぁ、高い建物もないただの野原で敵が落ちて来るとか想定すらしてなかっただろうしな。
「な? ちゃんといただろ?」
とりあえず煽り返してみよう。
なお二人を空挺投下したアディーラは夜闇にまぎれてまだ潜伏してもらっている。
相手方の切り札に対抗するために、こちらの切り札はできるだけ温存しておきたいからな。
それに、翼人が姿を見せないことで相手方は嫌でも空を警戒しなきゃいけなくなる。
俺みたいに並列思考のようなスキルがあれば別だが、そうでなければ地味にきつい重しになるはずだ。
「まとめて殺れ」
人質を取ることを諦めたのか端的にリーダー格がそう指示を出すと、男らは一斉に動き出して俺たちを取り囲む。
対して俺たちは互いの背を守る形で円陣を組んだ。
「スケイラは暗いの大丈夫なのか?」
「ある程度は大丈夫かな。それに目だけに頼るわけじゃないからね」
ああそっか、スケイラは人狼だし夜には強いか。
「あんたは?」
「ゴブリンも闇夜には強い。特に俺はその中でも目の良さは随一だ」
そっか、コウはボクサーだしそうだよな。
実は少しだけ「このコウ、生来目が見えぬ!」とか言ってくれるんじゃないかと期待してたんだけどねぇ。
「そういう君こそ弓矢なんて大丈夫なのかい?」
確かにこんな状況で弓矢なんかで武装してても、せいぜいよくて2本ほど撃ったところで近づかれ、バッサリ切られて終わるだろう。
ただし、それは俺が普通の弓手ならの話だ。
「問題ない。それじゃあ今度は実戦でたっぷり見せてやろう。俺のカポエラ弓術をな!」
まさか披露した当日に本番をやることになるとは思いもしなかったけどな!
短いけど
一週休むよりはマシか?