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7-39 飲めば出る

 ふぃー飲んだ飲んだ。 いや、正確にはすこぶる飲まされた。

 カニエスさんを始め、エアデールさんに他の戦士達も次々と酒を勧めてきたからなぁ。


 断るわけにもいかず勧められるままひたすら飲んでしまった。

 俺がこうしている間にも腹を満たし、酒に酔った戦士たちは一人また一人と睡魔に負けてそこらへんに寝っ転がり寝息を立て始める。


 聞いたところだとやはりテントが足りず、ローテーションを組んで野宿してたんだとか。

 俺もここに召喚されたころは似たようなもんだったし親近感を覚えるぜ。


「トイレ行ってくる。オルフェ、アマツここは任せた」

「あーい」

「まかせてよぉ~」


 仙人になってから悪酔いはしなくなったものの、飲まされれば当然出さねばならない。

 軽い足取りで白犬族のテント集落から離れる。


「ふんふんふーん♪」


 白犬族から教えてもらった共同トイレまで鼻歌混じりに歩く。

 街灯もないので周りを照らすのは月と星のみ、ところどころ焚火が見えるがここまで光は届かない。


 さほどの距離もなくトイレに到着したはいいが、トイレとは名ばかりで排泄物を入れる穴に申し訳程度に隠す天幕しかない。

 明かりもないし不便極まりないが、あっちこっちで出されて変な病気が流行るよりはマシって事なんだろう。


 ニオイを我慢して、用を足した後に天幕から出る。

 ふぅ~すっきりした。 それに俺を遠巻きに取り囲んでた連中も待ち伏せの準備をしたようで、しっかり帰り道を塞いでいる。


 いやー、こいこいと思いつつなかなかこなかったからじれったかった。

 気配をほとんど感じなかったのは見事と言うべきだが、質量をもっている以上はあいにく索敵障壁(サーチウォール)の目はごまかせんよ。


 とはいえここは気づかないフリ。行きと同じように鼻歌まじりに帰り道を歩く。


「ん~?」


 とっくにわかってはいたが、暗い視界にようやく人影のようなものが見えた。

 数人があえて道をふさぐように立っていて、進路を変えると相手も動きを合わせてふさいでくる。

 

「やぁやぁ、俺ぁそっちに行きたいんだがな。悪いが通しちゃくれねぇか?」

「いやいや、俺たちはあんたに用があるんだよ」


 男が答える間にも俺の後ろにいる連中が闇夜にまぎれてこっそり近づいてきている。

 

「こんな暗いとこで何の用があるってんだ?」

「なーに、くらいからいいのさ。それにすぐ終わるから気にすんなって」

「ならさっさと――」


 言い終わる前に後ろまで忍び寄ってきた連中に口を塞がれ引き倒された。

 そしてどうやら持っていた縄で手早く俺の手首を縛ったようだ。


 こりゃかなり手慣れてるな。


「なっ!? 何だ!?」

「静かにしろ。騒げば殺すぞ」

「ひっ!?」


 馬乗りになった男が俺の眼前に剣をつきたてたので悲鳴を上げてみる。

 夜襲用なのかそういう素材なのか闇夜に紛れるように黒い剣だ。

 とはいえこれが普通の切れ味なら俺の障壁を貫くことはできないけど。


「夜には気をつけろって言ったろ? 身をもって教えてやろうと思ってな」


 組み伏せられているので顔はわからんが、声とそのセリフからして昼間であった黒豹族で間違いないか。

 

「こ……こんなことが許されるわけないだろ?」


 一応騒ぐなって言われてるし、声のトーンを抑えて抗議してみる。


「なぁに、ばれなきゃ問題ないのさ」


 それは同感だね。これから起こすことにたいしてもね。


「俺はどうなるんだ?」

「いい子にしてれば殺しはしねぇよ。事が終わったら奴隷商人にでもうっぱらってやるよ」


 いるんだ奴隷商人。


「事って、何するんだ?」

「あんたらが持ってきてくれたブツを俺たちが有効利用してやるよ。のんきに寝ている犬どもの首を掻っ切った後でな」


 優位に立っているせいか問いかけにペラペラしゃべってくれるなぁ、それとも教えることで慈悲でもかけてるつもりなんかね?


 まぁ、確かに夜襲をかけるなら今夜はベストなタイミングの一つと言える。

 白犬族の戦士たちは宴会で完全に油断しきって今は寝てるし、日数が立てばたつほど物資が消費される。

 すなわちそれは連中の実入りが減る事を意味する。


「護衛対象のあんたをほっといて寝入るなんざ大した手練れだよあいつらは」

「まったくだ」


 クククと嘲笑のあざけりが聞こえてくる。


 ああ、やっぱ勘違いしてたか。ま、俺たちの事は知らないもんな。

 実際のところ今白犬族のキャンプ地を守ってるのは五感に優れるオルフェと魔力探知に抜群の範囲攻撃を持つアマツ、それに三面堅もいる。

 ぶっちゃけ白犬族に下手に動かれるより守りやすいまである。


 それよりだな、この俺を奴隷商人に売ると申したな。

 せっかくここまでダンジョンを作り上げたのにここで奴隷にされたらたまったもんじゃない。


 これだけでこちらの開戦事由としては十分。

 いろいろペラペラしゃべってくれたお礼にこっちもいいことを教えてやるとしよう。


「いや、いるよ? なんたってお前らが気が付かないくらい優秀な手練れだからな!」

あけましておめでとうございます

本年度もゆるりと書いていきますよ

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[良い点] 待ちに待った襲撃イベントキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!! [気になる点] 仙人の護衛としてアディーラがいるとしてそれでも誰か足りないと思ったらスケイラの名が出てないじゃん! スケイラも仙…
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