表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

202/274

7-38 予定された勝利

「そこまで、勝負あり」


 審判を買って出てくれたスケイラが静かに宣言する。

 決着がついたというのに周りは沸くどころか静寂につつまれた。


「……いや、強いとは聞いてたけどここまでとはねぇ」


 沈黙を破ったのは酒を飲むのも忘れ呆然とつぶやくエアデールさん。

 彼女の視線の先にはうつぶせに大の字で完全に伸びてるカニエスさん。


「あの人手を使わずに足技だけで族長を倒した……」

「足さばきは踊ってるようにしか見えないのに、的確に蹴りを入れてきたよな」


 エアデールさんのつぶやきを皮切りに、戦いの一部始終を見ていた戦士たちがざわざわと騒ぎ出す。

 

「見たことがない格闘術だったけどありゃなんなんだい?」

「ああ、カポエラっていう蹴り技を主体にした武術だよ」


 そりゃまぁ、オルフェと組み手を連日のようにやってれば俺の方も自然にカポエラの動きが染みつくのは当然の事だった。

 ついでに言うなら戦闘では両手が弓矢で塞がる俺にはカポエラとの相性がいいという事に気が付いてから、カポエラを主体に独自の格闘術をくみ上げた結果、さきほど披露したようにほとんど手を使わない戦闘スタイルになったわけよ。


 それはさておき、決着がついたので伸びてるカニエスさんに活を入れてっと、


「……うーん。はっ! わしはまだ戦れるぞ!」

「うぉっと!」


 気が付くなり立ち上がり再び構えを取るカニエスさん。

 すぐに立て直すその姿勢はさすがではあるが、


「いや、もう終わりさね。もうここにいる全員が悟ったよ。どうあがいてもあんたが勝てる目はないって」

「むぅ」

 

 観戦者も皆戦いに心得のある戦士達だからかね。俺とカニエスさんの戦いを見て力量差をしっかり見極めている。

 さらにいうならエアデールさんを始め、その上で俺が手加減していたって事も何人かにはばれたな。


 カニエスさんの実力はククノチ親衛隊以上、虫怪人にはやや劣ると言ったところか。

 言い方は悪いが、それだと”組み手してるオルフェほどではない”という評価になってしまう。


 むろん戦いの経験値的にははるかに上で、初見であろうカポエラの動きにもある程度までは対処できていた。

 しかし、それを許さないのが仙人と獣人という種族差とDPのよる強化の差だ。


 DPで強化すれば子犬が狼に勝つこともできなくはないが、今回は逆に差が開く要因になっているため単純なぶつかり合いではカニエスさんに勝ち目はない。

 

「認めよう。わしの負けだ」


 まぁ、実力差なんざ戦った本人が一番わかってるか。


「アイリちゃんをよろしく頼む、でも週に一回は顔を見せに来てね」


 俺とアイリに向かって一言そういうとカニエスさんはよろよろと酒樽の方に向かい。


「今日はとことん飲むぞ! 皆も付き合ってくれるよな!」


 そう高らかに宣言すると、酒樽を持ち上げ一気に飲みだした!

 周りが歓声を上げる中、まだ相当量残っていた中身を一気に飲み干すカニエスさん。

 

 ――そして――


 ドンッという豪快な音と共に酒樽を地面に置いた。


「うぉぉー--!!」


 飲み干したカニエスさんをたたえるかのように杯をかかげる戦士達。

 カニエスさんは周りの歓声を受けつつ、口の周りを拭いぽつりと言葉をもらした。


「麦茶だこれ」


 戦士たちは皆ズッコけた。

それではみなさんよいお年を~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ