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7-33 キャンプ場にて

 都市へと続くよく整備された道を、馬車を操り進む。

 その道を挟むように左右には天幕が張られており、そこに仮住まいしている人たちの姿がちらほら見える。


 その人たちの反応は大きく分けて二つ。

 種族のサラダボール状態の俺たちを奇異の視線で見るか、興味もなく疲れ果てて下を向いているかだ。


 いや、前者はさらに分けられる。

 本当に俺たちの事を物珍しさで見てる人と、物資が積まれた馬車やケモミミ娘をみてよからぬことを企んでる連中だ。


 こっちに召喚されてから何度となく悪意にさらされてきたからなー。ありゃ悪いことを考えてる目だってわかっちまう。


「これで俺たちも狙われる側か……」


 戦士の一人がそうぽつりと漏らした。ま、実にわかりやすい敵意を向けてきてるから多少なりとも戦闘経験があれば簡単にわかるか。

 君たちの境遇を考えれば同情はするが、()()をしたら容赦はしないぞ?


 とはいえ、無駄に命を散らさないよう警告くらいはしておいてやるか。

 俺は視線を向けている連中にむけてフレンドリーな笑顔を送る。


「!!」


 ただし、その笑顔には今まで培ってきた殺意をちょっぴり添えてある。

 普通に見てる人たちにはただの笑顔だが、悪いことを企んでいた連中には効果てきめんだったようで、顔を引きつらせるもの、思わず尻もちをつくものなどいろいろなリアクションが帰ってきた。


 こっちは警告は出した。これからどうするのかは彼ら次第だ。


「ここから道をそれます、こちらへどうぞ」


 ケルン君の誘導に従って俺たちは道をそれて、何もない草原へと行く。

 何も整備されていない草原はところどころ段差があるものの、ほぼ普通の道と変わりなく馬車は進んでいく。

 これも神器の影響かな? 振動も少ないからケツが痛くならないのはいいね。


 草原をしばし進んであることに気づく。

 周りはどこを見ても天幕だらけだが、俺たちが進む方向には一切の天幕がない。

 よくよく見れば天幕は碁盤目状に区切られているようだ。


「ええ、無用な衝突を避けるために種族や部族ごとに区切りがあるんですよ」


 一応これで無用な衝突は起きていないらしい。

 ただし、表向きは だ。


 実際は夜目が効く種族が夜襲をかけて略奪を働いたり、都市で雇った傭兵団がカツアゲにきたりといろいろ騒動があったらしい。

 結局は弱者が泣き寝入りしてなかった事になったとか。


 都市側としても難民側としても、下手に問題をこじらせて支援を打ち切られたり暴動を起こされたりするよりはマシだという事なんだろうな。


「聞けば聞くほど、トラブルに巻き込まれる予感しかしないねぇ」


 だから嬉しそうに言うなよスケイラさんや。

 明らかに難民に見えない俺たちが馬車を引いている様はこの難民だらけの場所じゃ獲物に見えるらしく、俺の警告もむなしく尾行してる連中がいることも確かだけどよ。


 ただ、スケイラさんの笑顔はそっちに向けてだけじゃないな。 


「スケイラさんや、前の方にもトラブルの種がありそうだぞ」

「そうみたいだね」


 馬車が通れる道の先には、明らかに道をふさぐようにたむろする連中がいる。

 身なりからして難民じゃねぇな。


 皆一様に武装しており、黒髪にピンと生えたネコ耳が生えている。

 縦に避けた瞳孔の瞳をもつ彼らはみんな俺の方を見ているな。


「見ない顔だな。新入りか?」

「ああそうだ、さっきここについたばかりでね」


 先頭の馬車を操ってたからかな?

 聞かれたからには答えてやらにゃあな。


「で、何か用か? そこを塞がれてると通れないんだが?」

「ここは物騒だからよ。俺たちが用心棒についてやるよ」

「そうそう、貧乏なそいつらよりよっぽど俺らの方が頼りになるぜ?」


 先頭にいた男が周りにいた白犬族の戦士たちを指さし笑う。

 

「やめろ! こちらから手は出すな」


 挑発を受けた白犬族の一人がとびかかろうとしたところをケルン君が体をはって止める。


「んー? どうした? 俺らとやりあう気概もないのか?」


 さらに相手が挑発を重ねるも、耐える白犬族達。

 白犬族の反応を見るに、これは単純な力関係だけじゃなさそうだな。


「用心棒代は積み荷の半分でどうだ? ここでの安全を考えれば格安だぞ?」

 

 いやー。それはぼったくりだろう。


「こちらには手練れの護衛がいるんでね。提案はありがたいが断らせてもらうよ」


 もちろんこの場合、手練れの護衛とは白犬族ではない。

 殺る気を隠すためにさりげなく後ろに行ったスケイラや、やりとりにまったく興味がなさそうに眺めている三面堅。

 さらにウチのケモミミ娘達の事を指してるんだが、はたして彼らは気が付いているかな?

 

「ああそうかい、それじゃせいぜい夜には気を付けるんだな」


 予想に反し、捨て台詞を吐くと素直に道を譲って去っていった。


「あいつらと知り合い?」 

「黒豹族の傭兵団っすね。交易や牧畜が中心のウチと違って護衛や戦争で稼いでる連中っすよ」

「あいつら夜目が効くんで夜偵や夜番によく雇われてるみたいですね」


 ふーん。特技に需要がある連中って事か。


「ただ先日あった夜襲事件も連中がやったって噂になるくらいには素行が悪いっす」

「今あいつら都市のお偉いさんに雇われてるみたいで、ますます調子に乗ってるんですよ」


 あー、なるほど。それでケルン君はこちらから揉め事を起こさないように止めたのね。


「まぁ、もし連中が本当に夜襲に来たら俺たちに任せてくれ。ウチには夜戦のスペシャリストがいるからな」


 今は羽をしまいともに歩いているアディーラに目配せをすると、何も問題はないとばかりにサムズアップを返してくれた。

 実に頼もしいねぇ。

リアルに忙しくなったり、ストックがなくなったりで

ちょいと来週投稿できるかわかりませぬ

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