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7-30 合流2

「父上! ご無事で何よりです!」

「ケルン! 生きてて本当に良かった……」


 駆け寄ってきたサエモドさんの息子……ケルン君というべき年齢かな? が、到着するや否やサエモドさんは馬車を飛び降り息子を抱きしめた。

 うんうん、話を聞く限り別れたときはきっと今生の別れを覚悟してただろうからねぇ。

 

 サエモドさん親子が抱きしめて喜びあっているうちに他の人たちも続々こちらに合流してきたが、あいにく俺たちは初対面。

 こちらは事情を知っているものの、相手方は困惑の表情を隠せないでいる。


「こちらの方は辺境に住まう仙人様です。我々白犬族の恩人ですよ」

「仙人様?」


 ナイスアシストレオドン師匠!

 とはいえいきなり仙人だとか恩人だとか言われても信用できないか。

 彼らの視線が口ほどにそう言ってる。


 今まで出会った白犬族に比べて、鍛えられた肉体を持つ彼らににらまれると威圧感があるな。

 

「いろいろと縁があってな、今回サエモドさんやレオドンさんの護衛を兼ねて同行させてもらったんだ」


 半信半疑でうなづく戦士のみなさん。


「仙人様にはゴブリンにつかまり奴隷同然になっていた我々を助け、さらに今は食料や物資の面倒も見てもらってるんですよ」


 ナイスアシストレオドン師匠!

 とはいえここで何を言われても、いまいち信用できないのもわかる。

 レオドンさんも彼らの視線からそれを察したのか、頬を指でかいて――


「ちょっとこいつらに仙人様の実力を見せてやってくれませんか?」

「いいけど、何すりゃいい?」

「そうですね」


 レオドンさんは辺りを見回すと、手ごろな石を拾い集める。


「では、私がこの石をいくつか空に放り投げますので射抜いてもらえませんか?」

「ほいよー」


 西部劇でよくある、リボルバーでコインを打ち抜くアレみたいなものね。

 俺の実力なら飛んでくる石を射抜くことなどたやすい。


「オッケー、いつでもいいぞー」 


 いつも通り矢を3本弓につがえて合図を送ると、レオドンさんは石を高く放り投げた。

 

「よっ!」


 気合と共に放った矢は、まだ重力に逆らい空中に飛ぶ三つの石に命中する。


「おおー!」


 驚くのはまだ早い! 俺の実力はまだこんなもんじゃないぜ!

 素早く腰から矢を引き抜き、弓につがえて放つ!


 今度はベクトルを失い、空中に静止する3つの石に命中。

 最後にもう一度矢を放ち、重力にひかれて落下する残り3つの石に矢を当てた。


「すごい……」


 戦士たちからそんな感嘆が混じったつぶやきが聞こえた。

 どやぁ! ちょっと魔力誘導を使ったけど、これも実力と言えば実力だからね!


「あんたの実力は十分わかった。で、あいつらはどちら様で?」


 戦士の一人が目線で三面堅の方をさす。


「さっき、捕まったとか奴隷になってたとか言ってなかったか? なんで仲良く一緒にいるんだ?」

「彼らは我々の味方です。こちらの方もいろいろありまして今は一緒に同居してます。彼らも実力者ですよ」

「一体何があったのかさっぱりわかんねぇ」


 話を聞いて戦士の一人がぽつりとつぶやく。

 うん、いろいろあったんだよ。ほんとにいろいろとね。


「こちらの事情は後ほど話します。それよりあなた達もなんでこんなところに?」

「ああ、巡回ですよ。この辺定期的に見回るように依頼されてるんすよ」

 

 なるほどね、ここはまだ盗賊が出現する場所だから見回りに来たと。

 

「まぁ、この辺で商隊や難民を見つけたら護衛するのも仕事の内ですがね」

「だから今日の巡回任務はこれで終わりだ、帰れるぞ!」 

 

 商隊はともかく難民も来るのか。白犬族も巻き込まれた侵略戦争がまだ続いているのかね?


「まぁ、ここで突っ立ってるのもなんだし、後は歩きながらでどうだ?」

「じゃあ、まずは我々の拠点まで案内しますよ」

「拠点っつっても難民のたまり場みたいなもんだけどなー」


 うーん。この人たちもいろいろ苦労してるみたいだなぁ。


「おいケルン。お前いつまで親父さんに抱き着いてんだよ」

「そうそう、俺たちだって家族にあってないんだからさ。そこまで見せつけるなよ」

「あっ! みんなすまない」

「これは失礼しました」


 諭されてようやくサエモド親子が我に返る。

  

「じゃあ、護衛も増えた事だし私は帰らせてもらおうかな。それに今日は大量に料理を作る必要がありそうだしね」

「ああ、体力がつくものをたっぷり用意してやってくれ」

「心得たよ」


 それもマナミさんから言われてることだしな。

 空間をつないでコアさんをウチのダンジョンまで送る。


 まぁ、空間をつないだ時に戦士たちが驚愕の視線を向けられたが、


「コアさんには晩飯を作りに行ってもらったんだ。彼女の飯はとっても美味いから、晩飯は期待してくれていいぞ」

「うぉぉぉぉ! まじっすか!?」


 この一言でどうでもよくなったらしい。 

 

「後はちゃんと食料も積んできてあります。大分お金に苦労しているとは聞いてましたから」

「やったー! これでくそまずい配給を食わなくて済む!!」


 この歓喜っぷり、相当苦労してたんだなぁ。

 まともなメシが食えるという話を聞いたことで、彼らから腹の根の合唱音すら聞こえてきたわ。

 

「あー、とりあえず話す前に何か食うか? 一応保存食もあるからさ」

「ぜひ!」


 彼らから話を聞くのは大分先になりそうだな。


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