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7-29 合流

 夜襲に奇襲、恐喝に強盗。次から次へとよくもまぁくるわくるわ。

 なんていうか盗賊街道の俗称は伊達じゃないな。


 相手から見れば同業者(?)が軒並み行方不明になっているのに警戒とかしないんだろうか?

 案外襲撃に対して生存者を一切出さずに全員狩り殺しているから情報が出回らないのが原因なのかもね。


 いい加減めんどくさくなってきたが、俺たちはそのすべてを返り討ちにして進む。

 まぁ、倒した分だけウチとスケイラのとこのダンジョンが潤うから、まったくの徒労というわけでもない。

 率先してやりたいとも思わないが……


「こんなに盗賊が多いとは思わなかったぞ」

「そうですね、最初に出会った盗賊に通行料を払えば他の盗賊もその商隊を襲わないというのが彼らの暗黙のルールのようですが、ここまでいるとは私も思ってもいませんでした」


 俺のボヤキにサエモドさんが苦笑いを浮かべつつ賛同してくれた。


 まぁ、それだけ連中にとっては実入りがいいって事なんだろうな。

 そして実は裏で繋がっていて。お互いに情報共有とかしているんだとすれば、


「あー、じゃあやっぱり皆殺しにしているから……」

「はい、その推測であっていると思います」


 連中にとっては俺たちはまだ通行料を払っていないという事になる。

 だから襲ってもいいという認識で俺たちのとこに来てるのか。


「俺たちゃ、盗賊ホイホイだな」

「まぁ、向こうから来てくれるなら探す手間がはぶけていいじゃないか」

 

 サエモドさんとは違い、心底嬉しそうに話すのはスケイラ。


「あんたは嬉しそうだな」

「そりゃあ、私の糧になってくれるんだもの。嬉しくないわけがないよね」


 糧ねぇ。


「君のところもそうみたいだけど、私もこの姿を持ったら欲が出てきてね」

「ああ、そういわれるとわかるな」


 コアさんも妖狐の姿を持ってから食にこだわるようになったもんな。

 それまではほんとコアの方も機械的だったし。


「そうなると、あんたはどんな欲が沸いてきたんだ?」

「ああ、それは――」

「主殿、ちょっとよろしいでありますか?」


 スケイラの声を遮り、脳に響いたのは空中索敵をしていたアディーラからだった。

 ジェスチャーで二人にまた今度と合図を送る。


「どうした?」

「前方に20人くらいの武装した集団が歩いてきております。このままだと20分くらいで鉢合わせそうですな」

「わかった。知らせてくれてありがとな。アディーラはいつも通り空中待機で」

「了解でありますよ」


 アディーラの進言をそのまま皆に伝える。


「もうすぐ盗賊街道をぬけるので、これが最後になりそうですな」

「つまり最後の稼ぎ時って事だね」


 連中の実力が変わらないなら、20人程度応援を呼ばなくてもなんとかなる。

 三面堅も戦闘準備に入り、特にスケイラはもう薙刀をまわし始めてる。

 気が早いこって。


 スケイラは戦闘狂の気があるのかもしれない。

 三面堅のエンやコウもそんな感じだし当てられたのかね?


「近くに斥候は見えませんな。連中も待ち伏せる様子はみせておりません」


 それはさておき、常にアディーラから情報を受け取っているが妙だな。

 連中からこちらを襲おうという気を感じられない。

 

 今までは隠れるなりなんなりの行動を見せていたんだがなぁ。

 もっとも、アディーラを通して俺たちには筒抜けだったけど。

 

「主殿。なんとなくですがこちらに向かってくる集団はサエモド殿達と同じ白犬族のように見えますな」

「ほほぉ?」


 それだけなら迎えに来たという可能性もなくはないが、こちらはいつ来るかについては一切連絡してないのでそれはない。

 悪い方向に考えをめぐらすなら、食い詰めて盗賊に身を落としたという可能性もある。

 

 とはいえ、ここで可能性をめぐらせてもしょうがない話ではある。


「まぁ、最悪の事態も含めていつも通りでいいか」

「最悪の事態……わかりました。その時は部族の恥をさらす前にお願いいたします」


 サエモドさんから言質は取った。

 さて、後は向こうがどうでるかだな。


「そこの丘をこえれば主殿にも姿が見えると思うであります」


 アディーラが言った通り、ちょっとした丘を越えたあたりで集団が見えた。

 まだ遠いせいか、はっきりとした姿かたちは見えない。


 だが、これで向こうからもこちらは見えた事だろう。

 さてさて、どういうアクションを起こしてくるかな?


 うん? こちらに気づいた集団は立ち止まり、手を振っているように見える。

 今のところ襲うそぶりは見せてない。 あくまで今のところは……だが。


 まぁ、連中が立ち止まったところは隠れるところもなさそうな起伏の少ない平原。

 対してこちらは視界が通る丘の上、これなら襲われることもないか。


 近づくにつれてだんだん連中の姿身なりもわかってきた。

 確かにアディーラが言った通り、犬のような耳をはやしていて姿は白犬族の人たちと似ている。


「あっ!」


 連中を見ながら馬を操っていたサエモドさんが突然叫んだ。

 と、同時に集団からも一人が抜けだし、手を振りながらこちらに向かって走ってくる。


「ちちうえぇーーーー!!」


 えっ!? ちちうえ!?

 その思いもよらなかったセリフに俺だけじゃなく、横にいたスケイラも驚きサエモドさんの方を見る。


「ええ! 今走ってきてるのはあの時に別れた(せがれ)です! 無事で……よかった」


 言うサエモドさんの目じりにはほんのり涙が見える。

 経緯が経緯だけに、無事で本当によかったねぇ。

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