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7-21 因縁の相手2

 対峙してみて、もしかしたらトラウマが蘇り動けなるんじゃないかとちょっとだけ心配だったが……

 どうやら杞憂のようだな。


 体は動くし、思考はすっきりしてる。

 これまでの鍛錬が自信となり、恐怖を抑え込めているようだ。


 相手も獲物をようやく見つけた喜びを抑えられないらしく、ヨダレを垂らしている。

 いいねいいね。これでこっちも遠慮なくやれるってもんだ。


 ま、仮に逃げ出しても追いかけて仕留めるつもりだったがな。

 この地点は今後白犬族達が交易に使う道に近いし、何より白犬族の拠点から1日圏内だ。

 何かの拍子にこいつがそこまで来ないとも限らないし、悪いがここで駆除させてもらう。


「グァァァァァーーーー!!」


 威嚇のためか雄たけびを上げる熊。

 以前はこの雄たけびを浴びただけで恐怖で身がすくみあがったもんだが……


 今は大したことないな。

 力押しで来るだけの相手なら、御する方法などいくらでもあるからか?


「準備はできたか? ならかかってきな!」

 

 ちょいちょいっと挑発してみる。

 相手はそんなジェスチャーなどわかるはずもないが、


「グォォォォーーー!!」


 吠えながら地に手を付き、こちらに向かって突進してくる!

 速い!  速い……が!


 オルフェほどではない!


粘着障壁(トラップウォール)


 熊と俺の間に真っ白い壁を作り出す。

 これでお互い姿は見えない。


 クマは俺ごと薙ぎ払おうとしたのか、壁ごとそのまま俺がいた位置に右手を振う。 

 だが残念! すでに俺はバックステッポで下がり、その場にはいない。


 眼前……さっきまで俺が居た位置を壁を貼り付けたままの右手が通り過ぎ、進路上にあった木を叩き折った!

 うぉう、相変わらずおっかねぇ威力だ。だが、当たらなければ意味はない!


 ま、最もその威力もオルフェのガチキックには及ばないだろうがね。

 パワーは仮に五分五分だとしても、洗練さが桁違いだ。


 クマは木を押し倒し、そのまま右手を木の上につく。

 すぐさま追撃するべく身を起こそうとして――


「グァッ!?」


 異変に気が付いたのか、間の抜けた鳴き声をもらす。

 右手にくっついたままの壁が木や地面にくっついて離れないからなっ!


 ふふ、この粘着障壁(トラップウォール)はその名の通りトリモチのように触った相手にくっつくのだ!

 もっとそのままに表現するなら”ガムとゴムの両方の特性を持つ”と言ったところかな?


 ま、俺の場合はあくまで”壁”としてしか運用できないが、それでもレパートリーに入れておいて損はない能力だと思う。


 なんとか振り払おうと、クマは右手を無理やり持ち上げ左右に振ろうとしているが……

 地面にくっついたこの木を片手で持ち上げるだけでも大したもんだと思うが、他の木にぶつかり思うように動かせないようだ。


 あの威力も十分なストロークがあってこそだな。

 

「さてと、悪く思うなよ」


 十分なスキも作ったことだし、右手に魔力を込める。

 試合ならここで終了だが、こいつはあいにく殺し合いだ。決着はどっちかが死ぬまで終わらない。


分断障壁(カットウォール)


 相手はかがんでいるため、ちょうどいい位置に頭がある。

 俺は右手を振り上げて――


 おろした。


 巨体が力なく地面に付き、完全に動かなくなったことを確認してすべての障壁を解く。

 粘着障壁のいいところは、解除したら消えるからはがす手間がないってとこだな。


「お見事」

「武器を使わずに倒すとは、さすがですな」


 ほぼ同時に後ろから拍手しながら姿を見せたのはスケイラと師匠。


「見てたのか?」

「君がトドメをさすところだけね、あわよくば加勢しようかと思ってたけど必要なかったね」

「ま、ちょっとした因縁があってな。どうしても一人でやりたかったんだ」


 外の世界に出るときは、あいつをワンパンするくらい強くなってからって思ってたからな。

 厳密にいうとチョップだったが誤差だ誤差。

 

「さて、こいつもさっさと運びたいところだが、さすがに図体がでかいからククノチとアディーラにも手伝ってもらおう」


 こんだけいれば前みたいに体を切り分けて運ぶ必要はない。

 念話でアディーラとククノチを呼びだす。


「じゃあ、ついでにこれも運んじゃいますねー」


 現れたのは背負ったカゴに木の実や若芽をどっさり入れた二人。


「大漁だな。なんかよさそうなものはあったか?」

「そうですねー。食用になるものも含めて育ててみてというところでしょうかー?」


 そうか、楽しみにしておこう。

 クマが抜けれるように大きめな穴を開け、アディーラとククノチが運んでいく。


「それでは、またのちほどー」

「自分の任務は本日はここまででありますな」

「ああ、またな」

 

 そのまま2人にはダンジョンに戻ってクマの処理をやってもらおう。

 つなげていた穴が小さくなり、やがて穴は完全にふさがった。


 ……ありゃ? 視界がちょっと歪んでるぞ?

 しかも世界が斜めになっている?


「おっと」


 眼前には俺をのぞき込むスケイラの顔。

 ああそうか、自分は倒れかけたのか。


「あの大穴を開けたせいで魔力の限界がきたようだね」


 どうやらそのようだ。

 まぁ、今の自分の限界が見えただけでも収穫か。


「でしたら時間も頃合いですし戻りましょう」


 そして俺はスケイラにおぶわれてその場を後にした。 

 



「きぼちわるい」

「吐いたらその場に投げ捨てるからね?」

まぁ、あっちをリスペクトした能力があるなら

こっちも使うよねってことで

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