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7-19 旅はじめ 拠点到達

「絶体絶命のその時、この賢のデーン起死回生の策を思いつきましてな」


 時間にしてすでに数時間。延々とデーンは語り続ける。

 最初は嬉々として聞いていた面々だったが、今は疲労を隠そうともしない。


 先頭を行くコウは無表情だが、うんざりしてるような空気を出してる気がする。


「拠点が見えたぞ」


 と、コウが指さしたその先には雑に作られた漆喰の建物。


「ありゃなんなんだ?」

「ああ、あれは私たちが道を作っていた時にデーンが建てた拠点だよ。資材を保存する場所も必要だし、ここまできていちいち白犬族の拠点に戻るのも面倒だったからね」

「ふむ、ではこの賢のデーン。語るのはここまでですな」


 語るだけ語って満足した様子のデーンがひげを触りながらつぶやく。

 いや、俺はともかく他はもうたくさんといった様子だぞ。

 

 デーンの話を聞いて推測する限り、この世界も例にもれず全体的に地球よりも文明レベルは遅れているようだ。

 しかしダンジョンのギフトの影響なのか、ところどころで地球をはるかに凌駕する技術や魔法が使われているっぽい。


 例えば白犬族も持っていた無限に湧き出るツボ。

 あれが複数あれば水源要らずで街が作れるし、農業用水として使えばため池とかもいらない。


 例えばゴブリン達がもってきた携帯用倉庫。

 あれ1個で体育館1つ分くらいは入る。これだけで地球とは比べ物にならんほど輸送コストは安い。


 他にも話を聞く限り、俺の空間魔法みたいにまったく別々のところをつなぐ神器もあるようだ。

 そして神器は普通にインフラとして受け入れられているように聞こえた。


 地球と全く違う発展のしかたを聞いてるとワクワクするな。

 これから行く交易都市も楽しみになってきた。


「では、本日はここで一泊することにしましょう」


 御者台から降りたサエモドさんがみんなに呼びかける。

 夕暮れにはまだ時間があるが、一泊するのに必要な準備時間を考えれば妥当な頃合いか。

 それに野宿よりはマシだし。


「みんなお疲れ様ぁ~」


 荷馬車からウマを離しながらオルフェがねぎらいの言葉をかける。

 俺も白馬から降りて、ここまで運んできてくれたことをねぎらう。


「こっちの準備はできたから、ご主人お願い」

「おうよ」


 オルフェに請われてダンジョンとの空間を繋げる。


「じゃあボク達は戻るよぉ~」

「おうよ、コアさんに数時間後にまた繋げるから晩飯をよろしくって伝えておいてくれ」

「わかったよぉ、それじゃあね」


 オルフェはウマたちを引き連れてポータルをくぐって行った。

 彼らには明日また頑張ってもらうため、ウチの草原エリアで休んでもらおう。


「我々のウマの面倒も見てくれる上に飼料も出していただけるとは、仙人様達には感謝するしかありませんな」

「まぁ、案内料ということで気にしないでくれ」


 その辺の話はすでにマナミさんと織り込み済みだからな。

 基本的に旅にかかる費用は全てこっちもち、その代わりにこっちは白犬族の取引先の人を紹介してもらったり、販売に関して流通網を使わせてもらうなど、いろいろ優遇してもらう取り決めになっている。


「とりあえず中に入ろうや、旦那の長話に付き合ってクタクタだぜ」

「長話とは何を言う。この賢のデーン貴殿らに乞われて話したというに」


 エンに先導されて、ドア替わりに垂らされたのれんのような布をくぐって入る。

 中は避難小屋のように何もなく、雨をしのげればいいよねくらいの役割しかなさそうだ。


「まぁ、道路を作る間の仮の宿だからね。何もないけどくつろいでおくれよ」

「そうそう、横になれるだけマシってもんさ」


 道路を作った際に切った木で作ったとみられる床に腰を下ろしたスケイラがこちらを見上げ、エンは自らの剣を枕に横になっている。


「いや、俺はその前にテントを建てるよ。ここはこの人数で使うにゃ少々狭いからな」


 このテントは数日間の旅路と聞いて、事前に用意しておいたのだ。

 

「一応数人分あるから、他に使ってみたい人がいたら教えてくれ」

「でしたら使わせてもらいましょう」

「私も使おうかな。一緒に寝るとデーンのいびきがうるさいし」


 俺の問いに名乗りを上げたのは、レオドン師匠とスケイラの二人。

 これでケモミミ娘は夜になると見張り担当が徹夜で番をしてくれるので、テントに3人小屋に4人とちょうどよくなったな。


「よし、それじゃあさっそく設営すっからついてきてくれ」

「あいよ」


 そして俺たち三人は、テントを建てるために小屋を出る。

 ちょうどテントを建てるのに都合よく平らに整地された道があるのでそこに建てちゃおう。


 道のど真ん中ではあるが、この道を使うのは現状俺たちしかいないし問題ないやろ。

 数十分後には赤青黄色のテントが3つ信号機のように道に生えてきた。


「いやはや、ここまで軽くて効率的なものは見たことがありません」


 テント設営を終えたレオドン師匠がポツリと感想をもらす。


「それにこの敷物も薄いわりに柔らかい。思っていたより快適に眠れそうだね」


 一緒に貸したテントマットに寝っ転がりながら、スケイラが感心したようにつぶやく。


「俺のダンジョンと繋げば大抵の物は持ってこれるから、足りないものがあったら言ってくれ」


 旅においては道具の取捨選別が重要だろうが、空間魔法が使える俺にはその制限がない。

 必要だと思えばウチのダンジョンからケモミミ娘に持ってきてもらえればいいし、逆に重荷になりそうなものはダンジョンに送ってしまえばいい。

 ある程度制限があるとはいえ、やっぱり取っといてよかったわ空間魔法。


「仙人様。夕暮れまでまだ時間があります。近場に狩猟に行きたいのですが同行願えませんか?」

「かまわないけど師匠も疲れてない?」

「ははは、オルフェ殿のおかげでウマも素直でしたからな。疲れはまったくありませんよ」


 師匠としてはすこしでも稼いでおきたいということか。

 一応ちらりとスケイラの方を見る。


「せっかくだし同行させてもらおうかな、ここにいてもやることもないし、荷物持ちくらいならやってあげるよ」


 おっし、決まりだな。

 あとは小屋にいる4人にも聞いてさっさと出発しよう。

 

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