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7-17 出発の時

 ついにこの時が来た。

 前回訪問時にスケイラや三面堅が作っていた道が完成したと聞き、そこから具体的な日程を聞かされて今日まで準備を重ねてきた。


 いつも通りアディーラに白犬族の集落まで飛んで送ってもらうと、集落前に2台の幌馬車(ほろばしゃ)が用意されているのが見えた。

 アディーラに頼んで荷馬車の近くに着陸する。


「仙人様、おはようございます」

「おはようさん」

「マナミ様を読んでまいりますのでお待ちください」


 見張り番をしていた数人の男とあいさつを交わすと、一人の男は集落の方へと向かっていった。

 そのまま幌馬車の中を覗いてみれば、荷はすでに積み込まれているようだ。


「仙人様から頂いたその箱、軽くて丈夫ですごいですね」 

「あれ見たことある?」

「ないですね。これも神器の一つですか?」


 んー。神器と言えば神器になるのかなぁ?

 そう思いながら馬車に積まれた4つの箱……プラスチック製の折り畳みコンテナを眺める。

 

「俺から見ればただの箱なんだけどな」


 こいつは以前マナミさんからダンボールが高く売れると聞いて、それならこっちはどうだと聞いてみたところ即座によこせと言われて出したものだ。

 地球ではありふれたものだが、マナミさんが値踏みしたところ、この世界なら高値で売れると喜んでいたな。


 そのかわりと言ってはなんだが、最初の会談では教えてもらえなかった白犬族の秘中の秘を教えてもらった。

 馬車に近づいてヘリを持ち、こっそり力をこめる。


 徐々にヘリが持ち上がり、周りの人がわからない程度に車輪が浮いていく。

 いくら強化されているとはいえ、片手で荷物を乗せた馬車を持ち上げるのは無理だ。


 だが、今の俺の手にかかる重さを体感的に言うと、荷台に乗ってるはずのぎっしり物が入った箱1個分より軽い。


 なるほど。これも神器の効果か、大したもんだ。

 これなら悪路だろうがぬかるんだ道だろうが、荷台が通れる幅さえあれば強引に引っ張っていける。


 タネは台座の奥に埋め込まれた宝石にある()()()

 らしいというのは、マナミさんも族長から聞かされただけで実物を見たことはないんだそうだ。


 ま、こんなもんがあるって大勢に知られたら荷台部分を破壊して盗むヤツが出そうだしな。

 それに俺に教えたってことは、万一の際に神器だけは回収してほしいという事情もあるんだろう。


「そこでこそこそ何をしてるんだい?」


 おっと、マナミさんのお出ましだ。

 マナミさんには話が本当か試していたことがバレたな。


 そっと馬車を置く。


「いやなに、これからしばらく共に行く相棒だからな。入念にチェックしないとな」

「アタイらにとっても大事なものだからね。抜かりはないよ」


 マナミさんに合わせてコクコクうなずく白犬族の皆さん。

 ありゃりゃ、これはごまかすセリフを間違えたな。


 振り返ってみてみれば、マナミさんとその後ろにはスケイラに三面堅の面々。

 その四人はそれぞれ鐙をつけた馬を引き連れている。


「ん? まさかその四人が行くのか?」

「そのまさかさね」


 そういえば白犬族側から誰が行くのかは聞いてなかったわ。


「大切な商品を運ぶんだ、そう考えれば腕っぷしの強いその四人が最適さね。それに御者と道案内を兼ねてサエモドとレオドンを同行させる。ウチからはこの六人さね」


 ああなるほど。護衛も兼ねてるとすれば、確かにこの四人ほど適任な人物はいないが


「でもいいのか? この四人全員いなくなったらここを守る人がいなくならないか?」

「ここは隠れ里みたいなものだからそうそう襲われることはないと踏んでるよ。確率はゼロじゃないけどねぇ」


 確かに山と森のなかだからねぇ。


「実をいうとこれは私達からも頼んだことなんだ、せっかく外に出れるようになったんだからってね」

「道作りも終わって、ここでじっとしてるよりは役に立てそうだからな」


 早くも乗馬したスケイラ達が補足してくれた。


「さて、こっちの準備はもうほぼできてるけど、仙人様もちゃちゃっと準備しとくれよ」


 おっと、そうだった。

 俺が来たことで人が集まりつつある。ちょいと場所を開けてもらってっと。


「お、開いた開いた。ご主人、準備しといたよぉ~」

「サンキューな」

 

 いつもどおり空間魔法でウチのダンジョンと繋ぐ。

 開いた穴をくぐって現れたのは、鐙を付けた白馬を引き連れ背中に大量の荷物を背負ったオルフェ。


「お前もよろしくな」


 オルフェから手綱を受け取り、軽く馬の身体を叩く。

 馬の方も答えて軽くすり寄ってくれた。


 別に俺たちの体力なら数日間くらい毎日日中ずっと歩き続けてもなんともないが、せっかく旅にでるんだからということで乗馬を練習していたのよね。

 オルフェが直接馬と会話してくれたおかげで、コツというか息の合わせ方はあっという間にマスターできた。


 これがなければ数日間ではとてもマスターできなかっただろうなぁ。

 オルフェには感謝だわ。


「ご主人。荷物は馬車に乗せるの?」

「ああ、そうしてくれ」


 これでこちらの準備もOKだ。

 早速乗馬してマナミさんの方に向き直る。


「こちらからは俺と日替わりで1人2人護衛をつける」


 空間魔法があれば俺以外は行き来できるからな。

 みんなダンジョンに仕事を持ってるから、数日間連続で留守にしてるといろいろ支障もでてきちまう。


 俺はまぁ、コアさんが皆をまとめてアイリが事務や秘書をやってくれればまかなえるからいいんだ。

 後はせいぜい工房が停止することぐらいだが、これは別に長期間止まってても問題はない。

 

「商隊としては護衛の人数が足りませんが、実力的には過剰すぎますな」

「ですな。御者としてこれほど心強いことはありません」


 お、雑談してるところにちょうどサエモドさんとレオドン師匠もやってきたか。

 二人はそれぞれの御者台に座ると手綱を手に取った。


「見送りありがとうございます皆さん。みんな無事に帰れるよう行ってまいります」

「ははは、今までで一番安心して送り出せるよ。このメンツならよほどなことが起きても大丈夫だろうさね」

「いってらっしゃいー!」


 白犬族に見送られて馬車が進みだす。

 同時にその後ろをウマに乗って進むスケイラ達四人。


「よし、俺たちも行こうか」

「あいよー」

「了解であります」


 さらにその後ろを俺・オルフェ・アディーラの3人でついていく。

 やがて一団は森の道へと入った。

 

 さぁ、旅路の始まりだ。

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