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7-14 ケモミミ娘と行く海底ツアー

 障壁をまとって海に飛び込むのはあの時以来だな。

 そう懐かしさを感じつつも海底を潜っていく。


 昔は水圧から障壁を守るだけで精いっぱいだったが、今は簡易的に障壁のスクリューを作ることで少しづつではあるが水の中を移動することもできるようになった。


「主さーん、迎えにきたとよー!」

「おーサンキュー!」


 とはいえ、その速度は1ノットあるかどうか。水中で早く正確に動くならやはりアマツの手助けは必須だなぁ。

 アマツが操る水流に乗せられれば、あっという間に海底付近を漂う水玉にたどり着く。


 そのまま水玉に横付けしてドッキングっと。


「やぁ、マスター。下から見てたけどサーフィンはどうだったかな?」

「サイコーだぞ。コアさんも後でやってみてくれ、絶対楽しいから」


 海上でマリンスポーツを堪能してたのは俺とオルフェとアディーラの3人。

 残りの面々はみんなアマツ主催の海底ツアーをしていたのよねー。


「そっちのほうも海底ツアーはどうだ?」

「この魚たちが普段食卓に並んでると思うと、感慨深いものがあるね」


 コアさんこんな時でも食欲に正直だねぇ。

 その感想はロマンスのかけらもないな。


「水の中の景色は本当に美しくて、まさかこんな体験ができるなんて思ってもいませんでした」


 そうそう、俺はアイリのようなそういう感想がほしかった。


「先ほどまで熱帯の海にいたんですけど、サンゴが色鮮やかでしたねー。部屋に飾りたいくらいですー」

「ええよー。どれがいいか教えてちょ」


 ククノチは魚よりサンゴか、らしいっちゃらしいな。


「次は冷たい海にいくとよー」

「よし、じゃあここからは俺も連れてってもらおうかな」

「はいよー」


 アマツは返事をすると水流を操り、ポータルを寒冷の海へと続くポータルへと押していく。

 抜けて見えるのは、温暖の海に比べてより青く澄んだ海。


「熱帯の海に比べると岩が多くて殺風景ですけど、その分水がより綺麗ですねー」

「はい、あんな遠くまで魚が泳いでるのが見えますね」


 ここは本当に何もないからな。魚以外には岩と漁礁くらいしかない。

 海洋生物の方もこちらが珍しいのか、次々と俺たちの水玉に寄ってきている。


「あの赤いウネウネした生き物はなんでしょうか?」

「あれはミズダコだね。酢だこにすると美味しいんだよ」

「私は断然たこわさですねー。日本酒と併せてのむと最高ですよー!」


 森林エリアの川は清流だからなっ。絶品のワサビが取れるようになったんだよな。

 コアスパイスのワサビっぽい香辛料もいいが、やはり本物の鼻にくる感覚がたまらない。


「うちのオススメは寒ブリよー。脂がのって最高よー」

「あそこいるのはイワシの群れだね。それにサンマもいる。みんな大きくておいしそうだね」

「あー、見てたらお酒が欲しくなってきましたー」


 ウチの連中はほんと花より団子だなっ!

 なんつーか、せっかく地球じゃまずできない海底ツアーっていうのに、これじゃ生け簀ツアーじゃないか。

 いやまぁ、広義の意味じゃここも生け簀には違いないけどさぁ!


 でももうちょっとロマンスとかそういうのがあってもいいじゃない!

 

「アイリは何か食べてみたいものはあるかな? ここから見える生物はほぼ全部食用だよ」

「そうですね。今まで海の幸は干物でしか食べた事がないので新鮮なお魚を食べてみたいですね」

「新鮮さならどこにも負けないっちゃよー」

「なんなら食べたいのをさせば、すぐにコアさんが捌いてくれますよー」

「ふふふ、楽しみです」


 あああ、アイリもなんか染まってきてる。

 ま、でもこれがウチらしいといえばそうだし、ロマンスを求める方が間違ってるんだな。


 こうなってしまえばまざるに限る。


「そこにいるホタテなんかどうだ? バター醤油で焼いて食うとうまいぞ」

「それじゃあそろそろいい時間だし、今日のお昼は海鮮バーベキューなんてどうかな?」

「あーいいですねぇー! ビールも一緒に飲みたいですー!」


 俺も飲みたいが、この後ビーチバレーが控えてるからなー。

 酔っ払ってやったらオルフェに怒られるからやめておこう。


「じゃあアマツ、適当に活きのいいヤツを見繕ってくれるかな?」

「あいー。じゃあ送るのはこの子たちにお任せよー」


 アマツがなんらかの合図を出すと、周囲を泳いでいた魚たちが一斉に水玉に群がった。

 あっ、これは……


「みんな、すぐに横になるんだ」

 

 俺だけが次に起こることを体験してるからなっ!

 素早くアマツの水玉を障壁でコーティングすると、その場に寝っ転がる。

 

 不思議そうな顔をしながらも、言われた通りケモミミ娘達が横になった瞬間、魚たちが一斉に水上に向けて水玉を押し出した!


「おお、輝く水面が向かってくるのはなかなかキレイだね」

「ですねー」


 うむ、初回は出せる障壁も弱く、いつ壊れるんじゃないかとヒヤヒヤしていたものだが、今はもう魚に全力でぶつかられてもビクともしない。

 

 そうなれば景色をみる余裕もできるというもので、確かにコアさんの言う通り波に乱反射する光が差し込む水面は心に来るものがある。


 やがて水玉は水面を勢いよく突き破り、俺たちを包んだ障壁は空中へと投げ出された。


「ひぁっ!?」


 誰かの悲鳴を聞きつつ絶叫マシーンのような浮遊感を味わった後、海面に着地して障壁は波をまき散らす。

 球体のちょうど半分くらいが水に沈み、そこを魚たちが押して岸へと運んでくれた。


「すごく素敵な体験をさせていただきました」

「ですねー。アマツちゃんに感謝ですー」


 ケモミミ娘たちが口々に漏らす感想を聞くあたり海底ツアーもなかなか好評だったようだな。

 惜しむらくはもう少しこう……いい雰囲気になれればよかったが、すでにケモミミ娘達に囲まれているこの環境にそこまで望むのはおこがましいってもんだな!


「それじゃみんな。アマツが食材を持ってくる間にこちらもバーベキューの準備を進めたいけどいいかな?」

「あ、じゃあ私は飲み物をもってきますよー。今日はお酒もいいですよねー?」


 飲みたい気持ちはすごいわかるので、ぐっとサムズアップで返してやった。


「やったー! ありがとうございますー!」

「でも、ほどほどにな」


 隣であびるように飲まれると、俺も飲みたくなってくるからな!


「アイリは私と一緒に下ごしらえの準備、マスターはオルフェとアディーラと一緒に道具を用意してもらえるかな?」

「オッケー!」


 三人がそれぞれの持ち場に行くのを見届けて、俺は岸にあるポータルをくぐり寒冷の海エリアから温暖の海へと戻る。


 気温差を肌で感じながら、沖の方に目を凝らしてみてみれば仲良く波を待つ二人の姿が見えた。


「二人とも、今から海鮮バーベキューの準備をするから手伝ってくれ」

「オッケー!」

「じゃあ、次にいい波がきたらそれに乗って帰るよぉ~」


 念話を飛ばすと、返事とともに手を振るような動作を見せる二人。


「じゃあ、ウチにお任せよー!」

 

 念話でそう聞こえた瞬間。不自然に水が盛り上がり巨大な波となってオルフェとアディーラを襲う!


「あっ! アマッちゃん!」

「あいー!」


 よく見れば波の一番上に不自然な水玉と、大波をものともせず泳ぐアマツの姿が!

 ほどなくしてオルフェとアディーラが大波に乗り、切り裂くように自由に滑り出す!


 ああチキショウ! 俺もあの波に乗ってサーフィンしてぇ!

 さぞ気持ちいいんだろうなぁ!


 近づいてくるにつれて、水玉がうようよ動いてるのがわかる。

 よくみりゃ水玉の中には魚やら貝やらタコやらたくさんの海産物がうごめいていた。


 ああ、あれがバーベキューの具材なのね。

 って、それはいいけどあの波すっごくでかくない?

 

 どれくらいかっていうと、俺がいる岸一帯をすべて飲み込むくらい――


「ちょっとアマツ! 波でかすぎ! この辺一帯全部壊す気か!?」


 この辺にはせっかく整備したビーチやコートがあるんだぞ!?


「そこは大丈夫よー」


 アマツがそう答えた瞬間、大波はまるで空気が抜けたかのようにしぼんで海面に混ざっていく。


「すっごく楽しかったぁ!」

「だな! アマっちゃん今度またやってくれよ!」

「お安い御用よー!」


 後に残されたのは、慣性で岸についたオルフェとアディーラがサーフボードに乗ったまま感想を言い合う姿だけだった。

 次はおれもまざるぞ! まざるからな! 

 

「じゃあ、ウチはこのこたちを連れていくっちゃねー」

「頼んだ。俺たちはバーベキューの用意をしておくから」


 大きな水玉に食材を入れたまま、ポータルに消えていったアマツを見送り、残された3人は粛々と準備を進めたのだった。

ちょっと更新遅れてごめんよー

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