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7-10 修練場にて

 4人組に案内されて大分経つが、思ってた以上に奥にあるのかいまだにつかない。


「おい、後どれくらいかかるんだ?」

「そこの角を曲がった先っすよ」


 言われた通り角を曲がれば、そこにはポータルがあった。

 くぐった先に見えたのは、体育館のような広く何もない空間だった。


「ここは襲撃された時の避難所も兼ねてるっすから、こんなに奥にあるんすよ」


 なるほどね。平常時は修練の場として、非常時は避難場所としてこの広い空間があるってことね。

 確かにこの広さなら白犬族全員に家財も含めて収納できるな。


 そして今はその広い空間を惜しげもなく使って戦うアディーラとコウの姿が見える。

 

「おや、君か。修練場にようこそ」


 あとは腕組みをしながら見守るスケイラの姿のみ。


「あれ? オルフェとアマツはどこにいったんだ?」

「アマツとかいうあのちっこい子はデーンに連れられて川に行ったよ、魔法の特訓ならそこの方が適切だとデーンが言っていたからね」


 事案だな! といってやりたいところだが、川があるならアマツは無敵だ。

 何をするのかは知らんがこちらから頼んだ以上、アマツが成長することを願おう。


「後はオルフェだけど、私との戦闘を終えたらサエモドのとこに行ってしまったよ。彼にダンスを教えてほしいんだとか」


 あー、祭りの時にやってたアレか。オルフェあれみて興奮してたもんなぁ。


「で、オルフェと()ってみた感想はどうだ?」

「やっぱりコウに勝っただけはあるね。私の経験不足もあるんだろうけど、善戦どまりだったよ」


 ふむ、完敗ではないあたり、やはりスケイラも相応に強いな。

 スケイラの横に並び、アディーラとコウの戦闘を見物させてもらうとしよう。


 アディーラは先ほどから通常モードでコウの周りを三次元に飛び回っている。

 対するコウはボクシングの構えを取ったまま動かず、アディーラの動向をさぐっているようだ。

 

 一見するとオルフェの時と同じようにも見えるが、飛んでいる分アディーラの方が回り込む速度も速く、何より3次元な分選択肢が多い。

 だからコウはアディーラの姿を追い続けてはいないのだろう。


 アディーラはフェイントをかけ、間を詰めては離れを繰り返し――

 

 攻め口は……頭上!


 右こぶしで正拳をつくり、スーパーマンのような体制をとりつつコウの頭上めがけて急降下!

 しかし、コウも頭上だと気づいた瞬間にバックステップで自らの頭の位置をずらすと、アディーラの頭部めがけてアッパーカットのカウンターを放つ!


 だが、コウのこぶしがアディーラを捉える寸前、アディーラは突然何かに吹き飛ばされたかのように軌道を変え、コウのさらに後ろに回り込んだ!


 落下の勢いそのままに身をひねり、足元から着地したアディーラは地を蹴り、アッパーカットの体制のままガラ空きになったコウの背中を襲う。


 ボクシングに後ろのパンチはない!

 これは決まったか!?


 否! コウは右足を後ろに振り上げた!

 それはさながら逆サマーソルト! コウのかかとがアディーラのアゴを狙う!

 

 が! アディーラは瞬時に右足に気づくと、身をひねってギリギリコウの右足を交わし、そのままコウの横をぬけて斜め上へと飛翔!


 コウと距離を取った!


光の戦輪(ライトチャクラム!)!」


 しかし、ただでは終わらせないとばかりにいまだ空中で回転しているコウめがけて戦輪を解き放つ!

 一方コウも素早く着地すると、


「ぬぉぉぉーー!」


 お返しとばかりに、魔力のロケットパンチを連打!

 戦輪とロケットパンチは空中でぶつかり合い、お互いを相殺する!


「ぐっ!」

「ぬぅっ!?」


 しかし、お互いに相殺しきれなかった分をその身にあび、アディーラは墜落し、コウは片膝をつく。


「まだまだいけるでありますよ!」

「無論!」


 両者ともにすぐに起き上がると、今が好機とばかりに相手に向かって突撃し――


「そこまでぇ!!!」


 突如響いた一喝にピタッとその動きを止める。


「二人とも興奮しすぎ。これ以上はダメだよ、大ケガするからね」


 一喝の主、スケイラは諭すように語った。


「そうでありますな。コウ殿、本日はここまででありますよ」 

「感謝する」


 二人は一礼するとこちらに歩いてきた。


「主殿、来ていたのでありますな」

「途中からだけどな、いい戦いだった」


 真剣勝負は技量にかかわらずいいものだってどっかの誰かが言ってたけど、まさに名言だな。


「私が見たところ五分五分だったように見えるけど、やってみてどうだった?」

「いや、よくて六対四だ。まだまだ精進が足りん」


 見てた限りだと、攻めの主導権は常にアディーラだったからな。

 コウは受けきれてはいたが、攻勢に出れなかった分がマイナスになったといったところか。


「それより、二人ともあちこちケガしてるじゃねえか。さっさとククノチのとこに行って治してきな」


 コウはところどころ戦輪をくらって皮膚が裂けてるし、アディーラもパンチを食らった場所をよく見てみりゃアザになってる。


「そうですな。では失礼するでありますよ」

 

 コウも黙って一礼すると、二人は修練場を出て行った。


「それにしても、コウも足技を使うようになったんだな」

「あの馬っこの自由さに後れを取ったからねぇ。一つの型に固執して食わず嫌いはよくないってことに気が付いたんだろうさ」


 ふーむ。オルフェとの異種格闘技戦が再び行われる日も近いか。楽しみだな。


「よし、場所は空いたから次は俺たちだ……ってどうした?」

「いや、あんなのを見た後だとちょっと……」

「あれに比べたら俺たちなんて全然っすからねぇ」


 あらら、萎縮しちゃったか。

 このテンションのまま模擬戦しても、あまり良い効果はえられないだろうな。


 となれば――


「よし、この模擬戦で健闘したやつにはこれをやろう!」


 そういいつつ懐から連中にとってはカンフル剤並みの効果があるであろうブツを取り出した!

ついにブクマ1000件突破ですよ!

ありがとう! ありがとう!

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