7-6 別に秘術というわけでもない
後ろに立っていた男たちの風貌は、忘れもしないあのホブゴブリン達!
「お、あんたはいつぞやの……あの狐娘とよろしくやってるか?」
へらへらと手を振るのはエン!
「ふふ、この賢のデーン。蘇ってまいりましたぞ」
立派なナマズ髭を触りながら、不敵な笑みを浮かべるデーン!
「……」
三面堅最後の一人、コウは腕組みしたまま何も語らない。
そして、三面堅の前に立つのは面識がない女性。
アイヌの民族衣装っぽい衣服に身を包み、青みがかった銀髪で切れ目の美人ではある。
特に目立つのは両頬に傷のような斜めの模様。
これのせいというかおかげでワイルドな印象が強い。
しかしそんな容姿なのに、どことなくコアさんに似た雰囲気を持っている。
この人はもしかして……
「つーことは、あんたはここのコアだな」
「正解。人狼としてようやく肉体をもらったんだ。よろしくね仙人様」
ほほぅ、確かに。笑ったその口の中に人狼っぽい牙が見える。
なるほど、君もなかなかいいケモミミとしっぽを持ってるね。
仲良くなったらいつかブラッシングさせてもらおう。
「そうか、おめでとさん。ところであんたのことはなんて呼べばいいんだ?」
同じコアさんだと、ウチのとまざるからな。
「その点は問題ない。マナミからスケイラっていう名前を付けてもらったからね」
「そっか、これからよろしくなスケイラ」
ぐっと硬い握手を交わす。
さて、それはそれとして――
「で、後ろの三人はどういう成り行きでこうなったんだ?」
なんか蘇ってたり、マナミさんと仲良くしてたりと状況がわからん。
「それは君に教えられた通り、私がマナミに取引を持ち掛けたからだよ」
「というと?」
「私の身体を作ってもらうことを条件に、お得なエネルギーの使い方を教えてあげたのさ」
ほほう、お得な使い方ね。それはぜひ俺にもご教授願いたいところだね。
「何、たいした話じゃない。一から新しい子を作るより彼らを復活させたほうがお得だと教えただけさ」
ああ、確かに彼らはスケイラのダンジョンモンスターだからか。
マスターが変わっても復活ってできるんだな。
「この賢のデーン。復活してすぐ助力を請われましてな」
「俺たちに拒否権はねぇけどよぉ、待遇はあいつにこき使われたころよりずっといいし、何より再びシャバに出られるならってな」
「そういうことだ」
なるほど、そういうことね。
俺たちとタイマンでほぼ互角の戦いをした彼らなら、強さとしては申し分ない。
そしてスケイラ。彼女のたたずまいから察せられるポテンシャルは三面堅と同じくらいか、やや上といったところか?
お目付け役として相応の力を持たされた感じかね。
「正直ゴブリンということで、こっちが苦手意識をもってないか心配だったけどねぇ。スケイラを神の使い、そこの3人はさらにその使徒ってことにして乗り切ったよ」
後ろにいたマナミさんが補足してくれた。
「まぁ、彼らはまじめにやってくれてるからここになじむのも早かったけどねぇ。さて、それじゃあ報告を聞かせてもらおうかねぇ」
「工事は順調に進んでいる。コウが邪魔な木を切り倒し、デーンが地面を整えて、エンが地面を焼いて固めてくれるからね」
「それは何より、開通まで後どれくらいかかりそうかわかるかねぇ?」
「なにぶん距離があるからまだしばらくはかかるよ。これ以上さらに急げというなら人手が欲しいところだ。私たちにも体力魔力の限界はあるからね」
マナミさんは報告を聞くと、付箋にボールペンでメモを取り何か計算をしてるようだ。
早速贈った筆記用具を使いこなしてるようで何よりだよ。
「いや、このままのペースで頑張っておくれ。これ以上早くしてもらっても売るものが用意できない」
「わかったよ。でも今日は休ませてもらうからね」
「そうしとくれ、今日は仙人様も来てるし、美味い飯を保証するよ」
いやまぁ、作るのは俺じゃなくてコアさんだけどな。
「ふふ、彼女には見せつけられたから楽しみだねぇ。エンもそう思うだろ?」
「ああ、あいつには詫びを入れなきゃいけないしな」
詫び? エンがコアさんに詫びる事なんかあったっけ?
「私たちが食べた保存食はあの妖狐が作ったんだろ? いやぁ、見ものだったよ。あれを食べたときの三人の反応は。もう目を丸くして黙々と食ってたよ」
「うるせぇよ。あんたもたいがいだっただろ?」
「あれほど美味い飯を作れるとは、この賢のデーン感服いたしましたぞ」
コウは何も語らないが少し口元が緩んでるあたり、味を思い出しているんだろうか?
「思い出話はそれくらいにしてそろそろウチの連中を呼び出してもいいか? みんな待ってると思うんだ」
「おっと、話を長くしてすまなかったねぇ」
一言断った後で自分のダンジョンとここをつないで、みなを招きよせた。
復活! 三面堅復活っ!