7-2 ダンジョン維新
さてさて、朝食が終われば恒例のミーティングが始まる。
「じゃあ、ちょっとみんな座敷に来てくれ」
一通りの報告を受けた後みんなをうながして座敷へとむこう。
テーブルにみんなを座らせるとコアさんはすかさず茶菓子を置き、アイリは人数分のお茶を皆の前へと出した。
うーん、実に連携が取れてるねぇ。
「さてさて、みんなに移動してもらったのは今日ここに新しいものを出すためだ」
「ああ、そういえばマスターは音楽がどうのこうのって言ってたね」
「そうそう、俺が楽器を演奏できれば、もっと早くあってもよかったんだけどねぇー」
誰も演奏できる人がいないのに、楽器だけだしても意味がない。
まして俺を除けば歌すら知らない。アカペラで歌えるほどの自信もないし。
「あの、演奏には多少の心得があるので、皆様に教えて差し上げればよろしいのでしょうか?」
「アイリは演奏できるのぉ!?」
「交易の旅は暇になることも多いので、その時に練習しました」
あー、なるほどねぇ。いや、知識の強化を使わずとも教えられる人がいるのはありがたい。
それにこういうのはなんとなくちゃんと練習してできるようになりたい。
「そんなわけで演奏を教えてくれる先生もいますが、それよりはまずいろんな音楽に触れてほしいと思います」
「はーい」
「実はそのための準備はもうしてあります」
ここでみなに注目させるように、部屋の隅の一転を指さす。
「あれ? 何かあるよぉ?」
「四角い突起に何か穴があいてますな」
そう、そこにあるのは元地球人の俺にはすごーく見慣れたもの。
「先に言っておくがあの穴に指とか突っ込むんじゃねぇぞ。アマツ以外は死ぬからな」
「ええっ!?」
コンセントを知らないケモミミ娘たちに一応説明しておく。
いやまぁ、こいつらなら多少電気を浴びても死にそうにないけどね。
「そんな危ないものをなんで作ったんですかー?」
「これから出すものを使うために必要なものなんだ」
いいながら俺は召還ウィンドウを操作すると、コンセントの手前に粒子が集まり四角く形どっていく。
「おー? なんぞこれー?」
「こいつはCDコンポだ。乱暴に扱うと壊れちまうから注意してくれ」
ついに俺はこの世界に家電を出してしまった!
「家電……ですか? 神器とは違うのでしょうか?」
うーん。どうなんだろう? 使い方を知ってるけど、作り方がわからないという点では同じではあるけどね。
「んー。でもこれ動かないよぉ。どうやって使うのぉ?」
「それはだな、こうするんだ」
コンポをペタペタ触るオルフェに場所を譲ってもらい、プラグをコンセントにさし込む。
「おおー。動きましたねー」
独特の起動音を鳴らし、ディスプレイ部分が光り出したコンポを見て感想をもらすケモミミ娘たち。
「実をいうと、ここから電力を供給してこいつは動くんだ」
「電力? じゃあウチもこれを動かせるんかー?」
電力と聞いたアマツが指の間に電気をバチッと出して聞いてくる。
「それは絶対やっちゃだめだぞ。間違いなく壊れるから」
「そっかー。ざんねんー」
アマツの電気はどちらかというと雷に近いからねぇ。
「主さん、その手に持ってるのはなんね?」
「ん? ああこれね、CDって言ってこれに音楽が記録されてるんだ。まぁ実際に見せて……いやいや、聞いたほうが早いな」
ケースからCDを取り出し、コンポにセットする。
えーっとあの曲は何番目かな?
「あっ、曲が始まりましたねー」
「あれ? でもこの曲って確かお祭りの時に演奏してたやつだよねぇ?」
その通り。まず全員聞き覚えがあるやつがいいだろうと思ってな。
「これは地球でも大ヒットした曲でな。俺は多分ダンスも含めて誰かがギフトで知ったんじゃないかと思ってる」
舞蹴対決は……あれはまぁ、変な文化として定着したんだろうけど。
「仙人様、聞いたことのない音色が聞こえますが、一体何の楽器を使っているのですか?」
「えーっとね、エレキベースにエレキギターにシンセサイザーっていう電気を使う楽器なんだけど、知ってる?」
俺の答えに首を振るアイリ。
「えっと、じゃあそれ以前に電気を有効活用したりとかは?」
「見たことがありませんね。神器は電気というものを使ってはいませんから」
確かに。白犬族が持っていた無限に水がわき出す壺とかは、なんのエネルギーも必要とせずに動いてるからなぁ。
あるいは俺が知らないなんらかのエネルギーを使っているのか……詳細はまったくわからん。
「まぁとりあえず音楽にもいろんな種類があるから、いろいろ聞いてみて気にいったら自分で歌ったり演奏してみてくれ」
「はーい」
まずは好きになる事が最優先。俺たちにゃ時間はあるから、好きになれば勝手に練習してうまくなるだろうし。
かくいう俺も仕事が忙しくなきゃ音楽はやってみたかった。
2、3曲流れたところでCDを取り出し、別のCDをセットする。
EDM、R&B、クラシックにジャズ、ラテンに民族音楽までとにかく幅広く。
ケモミミ娘たちも目を閉じ、耳やしっぽをゆらして心地よく聞いている。
お気に召したかな?
音楽ソムリエになった気分で次にユーロビートを流し、解説を入れたところで次のジャンルへ――
「主殿!」
「うぉ!? どしたの!?」
「これはなんという音楽なのでありましょうか!?」
「え? えーっとね、これはメタル。もっと厳密にいうならヴァイキングメタルっていうジャンル――」
「なんといいましょうか、魂が揺さぶられる感じがするでありますよ!」
ぐっとこぶしを入れながら高揚して語るアディーラ。
え? ヴァイキングメタルそんなに気に入ったの? それはヴァルキリーだからなの?
「じゃあ、エレキギターとか出すから挑戦してみる?」
「ありがとうございます! ぜひ挑戦させてもらうでありますよ!」
アディーラさん戦いが終わったら手持無沙汰にしてたもんなぁ。
趣味ができるのはいいことだ。
「アディーラがやるならウチもやるよー」
「僕もやってみるよぉ。おもしろそうだし」
結局、楽器も一通りDPで出すことになった。
その後、室内で集まって演奏に適している場所が座敷しかないためか、そこで練習している姿を見るようになったが、もともと座敷は憩いの場でもある。
時々みなが好き勝手に楽器を鳴らしてうるさいこともあったので、別に音楽室を作りそこで練習してもらうことになった。
ついでだしドラムとか大きめの楽器も用意してみる。
やろうと思えばオーケストラもできるぞ!
ドラムは前々から叩いてみたかったのよね!
セッションできる日が楽しみ!
評価Pが1000P超えたよっ
ありがとうございます!
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電気解禁っ!
家電解禁っ!
音楽解禁っ!