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6-51 第三階層突入戦2 足元からの刺客

「それではー、たけのっこーん」


 ククノチからそんな念話が届いた瞬間、先ほどの岩が転がるのとはまったく違う地響きが起きた。

 震源地は第三階層だな。


 揺れが数秒で収まったかと思えば、先ほどから豪雨のように降り注いでいた矢がピタッとやんだ。

 これはつまり、連中が矢を撃てるような状態ではなくなったということだ。


「成功だよ。それじゃあみんな突撃して制圧するんだ」

「おっしゃぁ! 待ってたぜぇ!」


 コアさんの指示に上空で待機していたアディーラが答え、星の光をさえぎり第三階層に急降下する黒い影が辛うじて見えた。


「よし! 僕たちもいくよぉ!」


 オルフェはそういうと一気に加速し、あっというまに姿が闇に紛れて見えなくなった。

 さすがに速いなぁ。


「ちょっとオルフェは速すぎんよ~!」


 オルフェに遅れる事数秒、アマツも坂を走って登り闇に溶けた。

 二人ともやる気に満ちてて結構な事だ。


「さて、と」


 つぶやき、白犬族の皆さんの方へくるりと振り返る。

 当然彼らには俺たちの念話は届いていないから、事情説明は必要だ。

 奇襲作戦が成功したなら、後は先行した3人に任せても問題なかろう。


「皆さんのおかげで作戦が成功しました。ご協力に感謝!」

「単に騒いで矢や岩にビビってただけっすがね」

「いやいや、しっかり本命の攻撃を隠せたからオッケーよ」


 そう、白犬族に騒いでもらったのはククノチのタケノコ攻撃を隠すためである。

 この遠征のためにさらに力を付けたククノチは、ウチのダンジョンで育てている植物の特性を自らの分身であるククノチの樹にコピーできるようになった。


 今回はククノチには洞窟に残ってもらい、攻撃用タケノコをコピーしたククノチの樹で足元から攻撃する案を採用したわけだが、そいつらが連中の足元まで掘り進める時に出る振動やわずかな音をごまかすために、白犬族の方には騒いでもらったというわけだ。

 まぁ、ついでに言えばこっちに集中してもらう狙いもあったが。


 なお、ククノチがコピーできる植物を増やすために、プライベートガーデンの一区画に食虫植物のブースができたが……あそこは正直恐ろしくてあまり歩きたくない。

 品種改良されて巨大化したあいつらに、いつか食われる予感しかしないからなぁ。

 

「ご主人様ー、私はこの後どうすればいいですかー?」


 おっと、当の本人からの念話だ。


「よくやってくれた。上の残りは俺たちに任せてくれ。こちらからは助けた白犬族を入り口まで向かわせるから、お前は携帯食を持って合流してくれ」

「かしこまりましたー」


 念話を終え、改めて白犬族の方に向きなおる。


「俺は上層の残党処理に行くので、あなた方は坂のふもとにある建物前でコアさんとククノチ……食料を持ってる仲間と合流して休んでてください」

「わかりました。どうか御武運を」


 先頭のおっさんにサムズアップで答え、俺は白犬族に背を向け、アマツ、オルフェの後を追って坂を一気に駆ける!

 ふははは! これだけ急な坂を全力で走っても、もう息切れ一つしないぜ!


 あっというまに坂を登り切り、オルフェがブチ破ったと思われるかつて門だったものを踏み越えて、俺は第三階層に足を踏み入れた。


 そこは索敵のためかアディーラが出した光源が周囲に蒔かれていて、深夜にもかかわらず辺りは街灯が灯されたように明るい。

 そのおかげで惨憺(さんさん)たる光景が嫌でも目に入ってくる。

 なんというか、針山地獄がこの世に生まれたなら、こんな感じなんだろうなぁ。


 軽い名前とは裏腹に恐ろしいな、ククノチのタケノコ攻撃。


「ご主人遅いー、もう終わっちゃったよぉ」

「すまんね。裏方作業をやってたんだよ」

「主殿、大半のゴブリンは仕留めましたが、若干名あそこに逃げ込んだのでありますよ」


 眼鏡をかけ、生真面目モードに戻ったアディーラがある一点を指さし報告する。

 その先にはアイリから聞いて知ってはいたが、実際に見てみると感慨深いモノ。


「へぇ、空から見た時はちょっとした山かと思ったけど、こうしてみるとやっぱ入り口は同じなんだな」


 ここには少し不釣り合いともいえる、こんもりとした山。

 中央にくり抜かれた、ワゴン車くらいが入れそうなトンネル。

 さらにその奥には、ある意味見慣れたポータル 即ちダンジョンの入り口があった。


 ここが彼らの本当の本拠地なんだよなぁ。

 アイリさんも尋問をしたゴブリンも、この中がどうなっているのかは知らなかった。


 つまりこの中はできるだけ情報を漏らしたくない構造になってるということだ。

 きっと中は侵入者を狩るためのトラップや仕組みが山盛りなんだろう。


 そんなところに勢いだけでつっこむのは自殺行為だな。


「まぁあそこはまだ置いておこう、それより三人とも制圧ご苦労だった」

「大半はすでにククノチ殿のおかげでひん死だったので、朝飯前というやつでありますよ」

「そういえば少しお腹がすいたねぇ」


 あ、そうか。ここはダンジョンの外だからDPの供給がない。

 だからオルフェ達もここでは俺と同じように腹が減るのか。


「よし、俺たちもいったん第二階層で合流して休憩しよう」

「はーい」


 腹ごしらえに補給に作戦会議と、突入する前にしなきゃいけない事は多い。

 俺たちは一度ダンジョンに背を向け、第二階層へと下り始めた。

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