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6-40 出陣式

「ヴァルキリー! 前へ!」

「は!」


 ここちよい風が吹く太陽がない草原エリア、勢ぞろいした皆の視線を受けてヴァルキリーは俺の眼前に立つ。


「今ここにケモミミズブートキャンプの全過程を終了したことを宣言する! よく頑張ったな!」

「ありがとうございます!」


 このブートキャンプは日中はひたすら模擬戦を繰り返し、夜は書庫でイメトレをするというものだったが、根が真面目なコイツは本当に飯風呂睡眠以外はずっとどっちかをやっていた。

 

 初日こそボコボコにされていたが、最終日はタイマンで勝ち星をあげられるほど成長していたな。

 初めて負けたアマツが悔し涙を浮かべていたが、彼女にもいい刺激になっただろう。


「では、卒業の”(あかし)”を授与する!」

「証でありますか、ありがたく!」


 何か物がもらえるのかと思ったのか、頭をさげ両手を差し出すヴァルキリー。

 残念! 物じゃないんだな。でも大切なやつだぞ?


「宜しい! 現時刻をもって貴様は”名無し”を卒業する。 おまえの名前は”アディーラ”だ!」

「アディーラ……それが自分の……名前」


 ヴァルキリー、もといアディーラは自分に刻み込むようにつぶやく。


「は! 自分はこれよりアディーラと名乗るであります! その名に恥じぬよう精進いたします!」

「これからキツイ任務があるが、期待してるからなアディーラ!」


 右手を差し出すと、アディーラはその右手をぎゅっと握り返す。

 その後方では拍手で祝福するケモミミ娘達。


「アディーラさん! おめでとうございますー!」

「ククノチ教官殿! ありがとうございます!」

「んー。教官って呼ばれるのも、むず痒いからオルフェでいいよぉ」

「わかりました、オルフェ殿」

「”殿”はいらないよぉ」

「こればっかりは性分なのでなんとも」


 もみくちゃにされて祝福されるアディーラ。


「あっ!」


 ここで何かに気が付いたのか、アマツに電流走る!

 いや、本当にこの子は電流をだすから、そこは本当に気を付けてね。


「主さん! 主さん! おめでたい事にはケーキっちゃよ!」

「うん、アマツ君はほんとにブレないねぇ」


 アマツがみんなの視線を集めてくれたので丁度いい。


「ああ、ちゃんと用意してあるぞ。ただし、今日はちょっと食べ方に順序があるんだ」


 と、一言前置きしておいて


「これより祝賀会を兼ねた出陣式を行う。全員座敷まで移動されたし!」



 全員で座敷まで移動すると、いつもの大きいローテーブルは片付けられ、変わりに個別テーブルが用意されていた。

 まぁ、準備したのは俺とコアさんなんだけど。

 

「あっ! ケーキがあるさね!」

「お酒も置いてありますねー」

「ああ、各自好きな机についてくれ。でもまだ食べるんじゃないぞ」


 それぞれのテーブルの上には料理と酒が置いてある。


「あの、私もいただいてもよろしいのでしょうか?」

「もちろん。アイリも参加して勝利を祈願してほしいところだね」


 7人分用意してあるし当然だろ?

 全員が席に着いたのを確認して俺は立ち上がる。


「よし、長くなるとフライングするやつが出るから、手短に説明するぞ」


 簡単に由来と食べる順番だけを説明する。

 本来の手順を踏むと時間がかかるので、掛け声だけでいいだろう。

 

「敵に打ち! 勝ち! 喜ぶ!」

「えい! えい! おー!」


 気合も入れた事だし、アディーラの祝賀会も兼ねて、少し豪勢になっている食事をいただこう。


 まずは一の膳、アワビのステーキ。

 あらかじめ一口大に切られたアワビをコアさん特製ソースをつけていただく。


 ん! うまーい!

 事前にコアさんにアワビを味見させておいてよかった! かみしめると出てくる貝の味に、コアさんのちょっとピリ辛いソースが絶妙にマッチしておる!


「あー、これはもっとお酒がほしくなりますけど、今日はガマンですねー」


 ククノチがポロリともらす。俺も欲しくなるけど、この後出陣だからねー。


 ステーキを平らげ、お次は二の膳、栗のモンブラン。


「ケーキ! ケーキ!」

「これがケーキというモノでありますかー」


 アマツはさっそく満面の笑みでモンブランを口に入れる。

 その顔だけでご飯三杯いけるわ!


「これがケーキ! 美味! 美味でありますぅー!」


 アディーラ、おまえも甘党なのか。それとも初めて味わう甘味に感動してるのか?


「自分、この任務を終えて無事に帰れたら、またこのケーキを所望するであります!」

「その微妙に死亡フラグっぽい言動はやめろ、帰ってきたら帰陣式でまた食えるから安心しろ。そっちはもっと盛大にやるぞ」

「それは楽しみでありますなー」


 うーむ。どっちかというと脂肪フラグが立ってしまった気がするが、ダンジョンモンスターは太らないから大丈夫か。

 まぁいいや、俺もモンブランをフォークでとりわけ一口入れる。


 口に入れた瞬間に広がる栗の風味がたまらない。

 今回はDPで出したが、栗も果樹園にいれたからな。近いうちに栗料理も自家製で出来るようになるだろう。

 栗ご飯とか実に楽しみである。


 栗の甘さとクリームの柔らかさを堪能したら、次は三の膳、昆布巻きだ。

 コアさんは食べ合わせを試すんだとばかりに何種類も作ったから、一つ一つ口に入れるたびに口に広がる味が変わるのは新鮮さを失わない。


 肉の味、魚の味、野菜の味、恐ろしい事にコアさんはそれぞれ巻いた食材ごとに異なる味付けをしている。

 これなら飽きずに腹が膨れるまでいくらでもいけそうだ。


「これもお酒がー、お酒が美味しいのに―!」

「ああうんククノチ。帰ってきたらな。たっぷり飲ませてやるよ」

「ご主人様! 約束ですからねーー!」


 もちろん、みんな無事に帰ってきたら盛大にやってやるさ!

  

ククノチのCVが伊藤静氏に決まった瞬間

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