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6-33 決着

 並列思考(マルチタスク)を使い、監視ウィンドウでケモミミ娘達の奮闘を順番に見ているが、どこも圧勝ムードである。

 大変結構!


 数だけは多いゴブリンだが、このままの状況が続けばそのうち殲滅しきれるだろう。

 

「主さん! 通路の奥! なんか魔力の高鳴りを感じるとよ!」


 ま、相手も必死だ、そうすんなりいくわきゃないわな。


「オッケー、見てみる! 忠告ありがとなアマツ!」


 アマツの位置からじゃ、肉眼ではゴブリンに阻まれて何をやってるかは見えない。

 監視ウィンドウを操り、言われたとおり通路の奥を映す。


 そこでは何匹かの杖持ちゴブリンが集まり、一ヵ所に杖を掲げていた。

 具体的には何かよくわからんが、そこに魔力が集まり丸い何かを作っているようである。


 これは数人がかりにさらにタメるという、どう見ても大技、いや大魔法と言うべきシロモノか。

 ありゃあくらっちゃダメなやつだな。戦闘に参加してないゴブリンが慌てて後ろに避難している姿からも推し量れる。


 左右のアローウォールは破壊されていて、妨害はできない。

 だが、相手の攻撃が魔法攻撃ならこちらにも手はある。


 それもとっておきのがな!


「全員戦闘放棄! 俺の後ろまで退却!」

了解(ラジャー)!」


 念話で伝えたのと同時にケモミミ娘達は一斉にこちらに向かって駆けだし、逆に俺は魔力を練りながら前へと走る!


 ククノチとすれ違い、彼女が作ったタケノコ林を超え、さらに奥にいたアマツとすれ違う。

 

「どけどけぇー!」


 遠くの方ではオルフェが、ゴブリンを蹴り飛ばしながらこちらに向かってきている。

 あれはもう、騎兵突撃みたいなもんだな。あんなのの正面には立ちたくない。 

 

 妨害をモノともせず包囲をあっさり突破したオルフェは、後続を引きはがしアマツが倒したゴブリンの屍地帯を駆け抜けてこちらに到着する。


「後はコアさんか」


 最奥にいたコアさんは、ここまで来るのにまだ時間がかかるか?

 姿が見えないが、今はいったいどこに?


 眼前にはオルフェを追いかけ、こちらに向かって走るゴブリン達が見える。

 その内に中央を走っていた一匹がスパートをかけて、一団から突出した。


 そのゴブリンはくるりと反転すると、輪郭が歪み大きくなり、徐々に金色の尻尾を生やしたよく見知った後ろ姿になる。

 コアさんは無警戒だった周辺のゴブリンを刀で切り捨てると、悠々と走り出しこちらに合流した。


「それじゃあ、後はまかせたよマスター」

「おうよ、みんなご苦労だった。後は任せときな」


 俺はみんなの後ろで楽させてもらったからな。気力も魔力もバッチリだ!

 

「このまま押し込め!」


 ケモミミ娘達が後退したのを何か勘違いしたのか、まだこちらに突撃してくるゴブリン達もいるなぁ。

 おまえら自分の後ろの状況わかってんのか? そんな事してたら巻き込まれんぞ?


 別にほっといてもいいが、本当にどうにかしないといけないのは後ろの魔法攻撃である。

 よけいなチャチャを入れられる前に、前座には早々に退場してもらおうかね。


 練っていた魔力を一部右手に集中させる。


衝撃障壁(インパクトウォール)!」 


 技の名前を叫び、右手を押し出す。

 魔力は巨大な壁となってゴブリン達に迫り、こちらに向かってきていたゴブリン達を軒並み張り飛ばした!

 食らったゴブリン達は吹っ飛ばされ、反対側へ逆戻り。


 言ってしまえばでかい壁を相手にぶつけるだけだが、はたから見れば武術の達人が気の掌底で相手を吹っ飛ばしたように見えるので、仙人の俺としては習得必須といえる技だろこれは!


 巨大な壁を叩きつけられたゴブリン達は、死んではいないようだがダメージですぐには動けないらしく地面をのたうちまわる。

 今はこれでいい。後ろの方ではどうやら魔法が完成したようだからな。


 まだ退避しているゴブリンがいるのに、杖ゴブリン達はそれに一切構うことなく。出来立ての魔力の塊らしきものをこちらに向けて飛ばしてきた!


 魔力の塊は通路一杯に膨張すると、進路上のゴブリン達を薙ぎ払いながら……いや、巻き込まれたゴブリン達は身と皮をはがされ、骨となって地面に転がっていく。


 おいおい、味方もおかまいなしとかとんでもないな。それほど余裕がないってことか?

 あるいはこちらに気取られないために味方ごとか?


 だが残念! 魔力感知に強い人魚はまるっとお見通しだ!


 逆にようやく後ろの異変に気が付いたゴブリンが悲鳴を上げるが、なすすべなく魔力の塊に飲み込まれ骨を晒していく。

 かまいたちの塊を飛ばして来たようなもんだな。なんかマンガで見た事あるなぁ。たしか真空殲――


「うわぁ、ひどいねあれ」


 肉眼でも惨劇が見える距離になり、俺の思考をさえぎるようにオルフェがぽつりと感想をもらす。

 このまま何もしなければ、俺達も同じ運命をたどるところなんだろうが……


 あいにく俺たちはノーサンキューだ!

  

「障壁展開!」


 ためておいた魔力を発散させ、自身の手前にガラス状の透明な障壁を通路一杯に展開する!

 見た目は本当にガラス窓くらいに薄い障壁。傍目にはとてもあんな魔力の塊を受けきることなどできそうにはない。


 生きているゴブリンを全て骨に変えた魔力の塊が俺達にせまり、障壁に触れ――

  

 ――まるで時間を巻き戻したかのように、元来た通路を戻っていく。



 魔法を発動させた事で勝利を確信し、にやついていた杖ゴブリン達だったが……

 自らが放った弾が通路の奥から飛んでくるのをみて、その笑みを凍りつかせる。


 そう、これこそ。これこそがあのセリフを言うため()()に開発した|魔法反射(マジックカウンター)障壁だ!

 反射障壁(カウンターウォール)を応用したこれは、文字通り対魔法に特化してある。


 あらゆる魔法攻撃を跳ね返す代わりに、物理攻撃にはトコトン弱く、軽く叩いただけでも割れてしまうシロモノだが、使いどころを間違えなければ強力な反撃手段になる。


 飛んでくる死の塊を避けようと、必死に奥へと走るゴブリン達。

 しかし、ここはただの通路だ。 身を隠す場所などない!


 元々身体能力はあまり高くなさそうな杖ゴブリン達はあっさり追いつかれ、他のゴブリンと同じように身と皮をはがされていく。


 さぁ! 今こそあのセリフを言う時がきた! 待ってたぜぇ!! この”瞬間(とき)”をよォ!!


「覚えておくのだな。これがマホカ――」

 

 術者が死んだからか、魔力の塊ははじけて辺りに衝撃波をまき散らす。

 その余波は俺たちに届く程に強く、俺の後半のセリフをかき消すほどであった。

 ま、連中はもう死んでるし、俺が言いたかっただけだから別にいっか。


 俺たちの位置でこの衝撃波だ。爆心地はさらにすごい事になっているだろう。

 監視ウィンドウでどうなったか見て――


「うわぁ……」

   

 そっと閉じる。ありゃ長時間見たらいけないやつだ。


「全滅だね。生きてるゴブリンはもういないよ。 そこにいるお札を張られたのとオルフェの攻撃で伸びてる二人を除けばね」


 俺の隣りに立っていたコアさんが補足してくれた。


「うし、戦闘終了だ。改めてみんなお疲れさん……といってやりたいところだが、みんなにはもうちょい残業がある」


 振り向きながら指示を出す。


「アマツには水源と迷宮の胃袋を出すから、ゴブリン共の死体を流して掃除してくれ。あんな景観が悪いものはさっさと片づけよう」

「はーい! ウチに任せときー!」


 ダンジョンには掃除機能もあるが、あの量をDPにしないのはもったいないからな。ウチにとってゴミは重要な資源である。

 最後の魔法攻撃で何もかもズタズタになってしまったので、今回は全部まとめてDPにする方向で問題ないだろう。


「ククノチにはアイリさんの介抱を頼む。必要なものがあったら用意するから言ってくれ」

「はいー。お任せください―」

「あ、ついでにあそこの二人をツタで縛っておいてくれ。牢屋も用意しておくわ」

「はいはいー。ついでにやっておきますよー」


 監視はダンジョンコアさんがやってくれるから特に問題ないだろ。

 まぁ、お札にツタで巻いておけば、まず逃げれないだろうしな。


「後、俺とコアさんとオルフェはダンジョンの外に行くぞ」


 前回もそうだったが今回もこの人数だ。おそらく外に旅の荷物が置いてあるんだろう。

 所有者が不幸な事故でいなくなってしまった以上、俺たちが有効利用してやらんとな。

みんな!


もしマンガの技を真似ることが出来るようになったらやるよね!


ね!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 次回、ついにダンジョンの外に\(^o^)/ 次回で34!な、長かった┐(´д`)┌ 全然ダンジョンを出る様子がないから出る出る詐欺かと思った(;^_^A
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