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6-29 ケモミミ娘達の殺陣

「かかれ! かかれぇ!」 


 俺の発破に答え、ケモミミ娘達が鬨の声を上げる!

 うーむ、4人しかいないからか、見た目もあってあんまり迫力があるようには見えない。


 だが、対峙するゴブリンどもには、この高い士気は十分すぎるほどの脅威である。

 無傷な者は反射的に陣形を整えなおそうと、防御重視と思われる大盾持ちが前に出て()()に盾を構える。


 かかったな!


「コアさん!」

「準備完了、発射!」


 コアさんの声に答えて、再び壁から矢がゴブリン達に降り注ぐ。

 注意しろとは言ったが、一発で打ち切りだなんて言ってないからなぁ!

 別の作戦をこっそり伝えられるから、念話は便利だのぉ。


 大盾持ちが前に出てしまった事で、比較的装備が薄い連中が横から矢を受ける。

 だが、二回目ということもあり、とっさに伏せた連中も多く、あまり効果は上がっていない。


 が、伏せた状態でこれをかわせるかな?

 

 矢筒から矢を三本取り出し指に挟み、弓につがえて放つ。

 矢は天井スレスレを滑空し、ケモミミ娘達の頭上を過ぎ大盾持ちの頭を超えて――


 ――軌道を変え急降下し、伏せてた連中の首に突き刺さる。

 こいつらは何が起きたかもわからず絶命しただろうな。


 そいつは墓標だ、取っときな!

 ……DPにするまでの短い間だけど。


 さらに何匹か仕留めたところで、アローウォールから矢の射出が止まる。


「GO!」


 俺の号令を受けて、ケモミミ娘達が一斉に前へと駆けだす。


 ここからは乱戦になる。先制射撃はこんなもんだろ。

 あとは後方から全体を見つつ、必要に応じて援護射撃と采配を振るう事にしよう。



「よし、いくっちゃよー!」


 片手で杖を握るアマツが正面の大盾持ちに向かって走り出した。

 迎え撃つ大盾持ちを含め、その後ろに控えるゴブリン達はアマツを見て、やや侮りの表情を浮かべているが――

 

 果たしてその自信はどこまで持つかな?

 アマツが持つ杖の先から、水が湧き出て徐々に何かを形どる。


「”みずつち”」


 アマツが言った名前の通り、それは杖の先に留まり大きな水槌となった。

 両手で杖を握ると、アマツは自身の身長ほどもある水槌を振りあげ、大盾持ちに向かって振り下ろした。


 とはいえ、真正面からの攻撃である。

 ゴブリンは受け止めるべく、盾を水槌に掲げ、腰を入れて万全の態勢で待ち構える。


 衝撃と波が堤防に当たった時のような音が響く。

 水槌は水風船が割れたかのように飛沫を撒きちらした。

 力をなくした水はよりかかるように盾から流れ落ちる。


 大盾持ちのゴブリンが笑みの形に顔を歪ませる。

 だが、すぐに驚きの表情へと変わった。


 地面に流れ落ちるはずの水が突然動きを変え、自身を包み込んだからだ。


「”すいらいげき”」 


 ぽつりとつぶやいたアマツの両手から電撃が放出される。

 一秒と立たず電撃は杖先から水を伝い、そのまま水に捕らわれた大盾持ちに襲い掛かった。


「!!」


 全身で電撃を浴びたゴブリンは、水中でけいれんをおこし身を震わせるが、やがて力つき動かなくなった。

 電撃が流れた証として、全身にリヒテンベルク図形が刻まれているのだろうな。

 

  だが、アマツの攻撃のスキを付いて、大盾持ちの背後に控えていたゴブリンが左右から飛び出しメイスを振り上げる。

 

「”みずたて”」


 アマツが振り下ろした杖を垂直に立てると、水は杖を軸にアマツを隠す円形の盾へと姿を変える。

 ゴブリン共はかまわずメイスを振り下ろし、周囲に水と重低音をばらまく。

 だが、メイスの先は水に押し戻され、肝心のアマツには届かない。


 見た目は薄い水の壁だが、実際はアマツの魔力で凝縮された水の塊だからなぁ。

 水だからあらゆる衝撃を受け流すし、何より欠損してもすぐに元通りになる。その上――


「ギャッ!」


 即座にアマツからの"すいらいげき"がメイスを伝い、ゴブリンどもを攻撃する。

 たまらずに悲鳴をあげ、水に取り込まれたメイスから手をはなすゴブリン達。

 

 それを見たアマツは素早く攻守を切り替えるべく、杖を水平に振りかぶった。

 アマツの動きに合わせて盾を形どっていた水は、メイスを吐き出すように地面に落とすと、再び杖の先に集まり丸く形どっていく。

 うーん、あれは(すい)を形どってるんだろうけど、青い見た目のせいでキャンディにしか見えん。


 一方、武器を落とした仲間を助けるべく、さらに後ろにいたゴブリン数匹が前に出ようとする。

 しかしその瞬間。


「”みずたまり”」


 アマツはそうぽつりとつぶやくと、杖を振るい先端の水を横なぎにゴブリンどもの頭に叩きつけていく。

 その衝撃によるゴブリン側の被害は皆無だったが、アマツの狙いはそこではない。

 ゴブリン共の頭に叩きつけれた水が、トリモチのように引っ付いて離れない。


 水は口や鼻をふさぐように、頭全体を包み込んでいく。

 やがて、数体のゴブリンの首の上に、頭より一回り大きい水玉が出来上がった。


「ガボッ!? ゴボォ!?」

  

 頭を水玉につつまれたゴブリン達は、ヘッドバンキングしたり壁に水玉をこすりつけたりしてなんとか外そうともがくが、水玉は形は変えることはあっても一向に取れない。


 実は魔力で相殺すれば結構簡単に破れるんだけど、初見かつ対処法を知らないとパニックになるよね。

 俺も山菜狩りのときにこれをやられたから、気持ちはすごいわかる。


 でも今は戦闘中で、君達は敵だから。

 

 アマツは杖を構えなおすと、もがくゴブリンの水玉に杖を突き入れる。

 水玉に稲光が走るたび、命が一つずつ散っていく。

 

 最後の水玉に電撃を入れた後、アマツはまだ残るゴブリン達に視線を移す。

 その視線は普段のアマツからは想像ができないほど冷たい。


 体術に自信はないと言っていたが、あれはあくまで”オルフェと比べれば”である。

 ゴブリン数人を同時に相手取って圧勝するあたり、よほど不利な囲まれ方をしない限り大丈夫だろう。


 杖を構えると、再びアマツはまだ残るゴブリン達に向かって再び走り出す。

 攻撃してもされても電撃を受ける事実を見たゴブリン達の顔に、侮りの表情はもはや一片も見えなかった。

 

最初は技名とか恥ずかしくて抵抗あったけど

もう抵抗がなくなった!



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