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6-18 精米! 製粉! 製糖!

 米や小麦が収穫されてから、日々精米や製粉、さらには製糖の実験を繰り返す。

 やはり実物を使うと、想定と違ってうまく精米されなかったり、製粉に不純物が混ざったりする。


 その度に本で工程を調べ上げ、風でごみを飛ばして分別する唐箕(とうみ)や、小麦の表皮を吸い上げて取り除くピュリファイヤーとかいう機械などをワナで自作してみた。


 代償に自分のラボがどんどん工場みたいになってしまったが、ロマンを感じるのでヨシ!

 ここから侵入者を撃退する仕組みを思いつければなおヨシ!


 そんなこんなで調整やトライアンドエラーを繰り返す。

 工学系が異様に強いアマツとワナ……もとい設備の仕組みについて相談したり、ククノチに品質についてみてもらったりして早数日――


 ついに! 自分で納得がいく所まで品質を上げることができた!

 早速コアさんに成果を見せびらかすべく、物資が保存されている迷宮の胃袋前の廊下に呼び出す。


「それで、この袋たちがマスターの努力の結果なんだね」

「ああそうだ、中身を説明するから聞いてくれ」


 廊下には、標準的なバケツ位の大きさの袋がいくつか置いてある。

 袋には中身の名前が書いてあるが、早く見せたいので近くにあった2つの袋をひらく。


「まずこれが玄米で、こっちが精米な」


 手を入れて精米をにぎり、コアさんに見せる。

 召喚した時は日本でよく栽培されている品種だったが、ククノチの植物操作を受けて、様変わりしてしまった。


 一番の違いは大きさである。俺の記憶にある米と比べると3倍くらい大きい。

 これはもう完全に別種と言っていいのではないだろうか。

 

 コアさんもまじまじと米を見つめ――


「マスターが呼び出した米の名前には、確か日本の地名が使われてたよね。これはダンジョンで作られたお米だから”ダンジョンこまち”、略してダンまt――」

「オーケーコアさん。それ以上は言っちゃだめだ」


 とてつもなくイヤーな予感を感じて、コアさんの口を封じる。


「大半は玄米にして迷宮の胃袋に保存してあるから、必要な分だけ俺のラボにある精米機を使ってくれ。オーケー?」


 手にコアさんがうなづいたベクトルを感じたので放してやる。

 迷宮の胃袋なら精米で永久保存もできるが、コアさんなら玄米でも使うだろうからな。

 それにアマツの協力もあってほぼ完全自動化も出来たし、手間はかかるまい。


「で、次はこれだ」


 コアさんが余計な事を言い出す前に、別の袋を開ける。

 中には真っ白い粉がいっぱいに詰まっていた。


「これ、小麦粉な。正確に言うと強力粉だ」

「強力粉っていうと、パンやピザに向いてるやつだね」


 小麦粉と一言にいっても、小麦の種類で何種類もあるというのを、書庫で本を出してからようやく知ったんだよね。

 小麦を出した当時はみんな知らなかったからしょうがない。


 ククノチに見てもらって、今まで育ててたのがいわゆる硬質小麦に分類されてる品種だと初めてしった。

 今まで育ててた硬質小麦はもちろん、今後は軟質小麦も育てて薄力粉も作っていこう。


「製粉施設は別室に用意してある。粉塵爆発でもされたら大事だからな」


 風を吹かせたりして、舞わせなきゃ大丈夫だと思うんだけど、まぁ念のためだ。


 なお、その部屋はアマツには入らないようにお願いした。

 湿気という水魔法と、静電気という電気魔法を持ってるアマツは、粉物の天敵みたいな存在だからな。

 何かの拍子に事故が起きる可能性は捨てきれないし、無用なリスクを踏む必要はあるまい。


「で、そこに置いてあるのが砂糖なんだけど……」


 歯切れ悪くコアさんに二つの袋をさししめす。

 コアさんが片方を開けると、そこには細かく黒っぽいものがどっさり入っている。


「そっちは黒糖。これはまぁ、比較的簡単にできたんだけど」


 黒糖はサトウキビを絞って、ろ過して煮詰めるだけだからな。


「で、問題はコイツだ」


 もう片方の袋に近づいて袋を開ける

 そこには黄色い砂糖が袋一杯に詰められていた。


 コアさんは人差し指に粉をつけると、ペロッと舌で舐める。


「これはっ!? 甘いけど少し雑味がある!」

「うん、お約束ありがとうコアさん」


 こういうところは、はずさないんだな。


「本で調べた限りの製糖だと、今はこれが精いっぱいだった」


 ろ過に必要だと書いてあった炭酸カルシウム等はDPで用意したりして、なんとかブラウンリカーとか言われるところまではできた。


 素人の俺がここまで出来たのはコアさんの協力が大きい。食べたらどうなるかわかるので、失敗して食えなくなったらすぐにわかるからだ。


 だが、どうやら俺個人でできるのはここまでだった。


 ここから先、いわゆる地球で一般的な砂糖である上白糖やグラニュー糖にするには、どうやら化学知識が必要なようで、どうにもうまくいかなかった。

 やはり現代地球にあるレベルのものは品質が高い。先人の努力と知恵はすごかった。


「いや、ここまでやってくれたら十分さ。ここから先は私の領分だね」

 

 コアさんはゆっくり立ち上がると、こちらに向かってほほ笑む。


「バトンは確かに受け取ったよ。後はアンカーの私に任せてほしい」

「よし、後は任せたぞ。うまい飯を期待してるからな!」

 

 こういわれたらもう謙遜する必要はない。

 こちらもサムズアップし返してやった。


 やるだけの事はやったんだ。後はコアさんの飯に期待しよう。



主人公達ができるできないの判断はサイエンス動画The Makingを参考にしてます

あれおもしろいわ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 異世界物では砂糖というとサトウキビ栽培が一般的だけど、実際は日本はサトウキビ栽培より甜菜(てんさい)栽培の方が多いんだけどなぁ┐(´д`)┌
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