第五十二章 同居生活十四日目 エピローグ
今回もよろしくお願いします。
「やっと帰ってこれたな。」
そう言いながら、俺は自分の家に入る。俺の背には凛に傷を治してもらったリルが背負われていた。
「ただいまです!」
俺とリルの後に続いて、コロン、凛、メアが入ってくる。
「おー!雄我の家に来たの久々だね?」
そして、そんな俺たちの後に続いて、木口来実が入ってくる。
「って、お前身体は大丈夫なのか?それに、両親も心配してるんじゃないのかよ?」
「んー?彼女である私が、君の家に来て何か問題があるのかなー?」
俺の質問の意味がわからないというように、来実は首を傾げてそう聞いてきた。
彼女にはどうやら、ロスト達に操られたり、捕らわれたときの記憶がないらしい。
まぁそれならそれで都合はいいのかもしれないが…。
「待ってください!ご主人様の今の彼女は私なんですよ!」
ここに来実の言葉に嫉妬してしまうメイドが一人いるわけで…。
「えー?あなたこそ、私の雄我のなんなのよー。『ご主人様』なんて呼んじゃってさー。ま、まさか…。」
「まさか、なんだよ?」
「雄我、私に満足できずに他所の女の子にこんな、こんな…。」
「違うからな。」
俺はそう言いながら来実にチョップをくらわせた。まったく、どんな考え方をしてるんだこいつは。
「えっ、じゃあ、浮気なの!?」
俺の対応を受けて、来実がその思考に達した。いや、その考えに至るの遅くね?
「あー、いや、これはだな…。」
しまった。この状況になっても、どう言い訳するかを俺は考えられていなかった。
いや、むしろ来実が今回のことに巻き込まれたという記憶を失っているなんて俺が想像できるだろうか、いや、できない。
「と、とりあえず、リビングで落ち着こう?お茶もあるし、なっ?」
俺はそう誤魔化して、リビングに駆け出した。
「あ、お茶は私が用意しますよ、ご主人様~!」
そう言いながらコロンが俺についてくる。
「あ、待ってよー、雄我ー。」
来実も俺たちの後に続いてリビングに入る。俺はリルをソファーに座らせつつ、テーブルに着いて、来実にも同じようにするよう促した。
来実は俺の正面に座り、凛、メアもテーブルに着く。コロンがキッチンからお茶を持ってきてくれた。
「それでー?なんで雄我の家に可愛い女の子が四人もいるのかなー?」
コロンがテーブルに着いたのを横目で見つつ、来実がそう聞いてきた。
さて、どう答えたものか…。返答次第では、ただではすまないだろう。
木口来実が嫉妬深い女の子であることを俺は身を持ってよーく知っているのだ。
「私はご主人様が好きだから、この家にいるんです!他に理由なんてありません!」
俺が返答に困っていると、コロンが来実にそう言った。言ってしまった。
「へー。じゃあ、他の子たちも雄我のことが好きなんだ?」
コロンにそう返しつつ、来実は凛とメアを見る。
「えっ!?わ、私は…。そ、そのですね…。」
来実に見つめられて凛がしどろもどろになる。
「…凛、素直になったほうが、いい。私は雄我が…好き。」
メアが凛の様子を見ながらそう言ってくる。
「あっ、えっ…わ、私も雄我さんが好きです!」
メアに促されて、凛も顔を真っ赤にしながらそう言った。
「ふふ、雄我、モテモテなんだね?」
そんな二人の様子を見ながら、来実は笑う。その笑みには明らかに俺への嫉妬が含まれていた。
「まぁ、いいんじゃない?みんな雄我のことが好きなんだから。」
「リル、気がついてたのか。」
「当然でしょう?私は丈夫なのよ。」
なにを自慢したいのかわからないが、リルが胸を張りながら俺にそう言ってきた。
「ま、いいけどねー。それでも雄我の彼女が私であることに変わりはないし?」
リルの言葉を聞きつつ、来実がそう言ってくる。
「うっ、それは…。」
来実の言葉に俺は言葉をつまらせた。正直、何を言っても誰かが不満を漏らすに違いない。俺は確信していた。
こんな状況になるなら、最初からコロンと契約しなければよかった…。いや、それを行っては元も子もないどころの話ではない。それに、その後悔よりもコロンが俺に与えてくれたものは大きかった。
「ぶー。そこは私って即答するところでしょー。」
そんな俺の様子を見て、来実は頬を膨らませながらそう言ってきた。
来実はいつもそんな風に、不満があると頬を膨らませるのだ。
そんな来実の様子が可愛くて、俺の口元には、笑みが浮かんでいた。
「あ!ご主人様、なにニヤニヤしてるんですか!私がいるのにー!」
俺の様子にコロンがそう叫んでくる。
「じゃあ、ここで誰が一番か、雄我に決めてもらったら?ね、雄我?」
そして、リルが悪戯っぽい笑みを浮かべて、そう言い放った。
コロン、リル、凛、メア、来実の五人の視線が俺に集まる。
「お、おい!リル!」
「ふふっ。」
俺はリルに文句を言おうとするが彼女は楽しそうに笑うだけだ。
「…。」
俺はどうすればこの窮地を脱するかを考えた。だが、名案は浮かばない。
そして、俺の足は自然と立ち上がり…。
「こ、答えは、お預けということでっ!」
そう言いながら、俺はリビングから飛び出し、一瞬で靴を履いて玄関から逃げだした。
三十六計逃げるに如かずと言うやつだった。とにかく俺はものすごい勢いで家を飛び出し、走り出した。
「ご主人様~!待ってください~!」
「ふふっ。雄我、待ちなさいよ~。」
「雄我さん!あの!待ってください!」
「雄我…逃がさない…。」
「雄我ー、私から逃げられると思ってるのー?」
全力で走る俺を五人が追いかけてくる。
俺の物語はいつからこんな修羅場と化したんだ。いや、いい見方をすれば、ハーレ…なんでもない。
俺はとにかく全力で走り続けた。そして、走りながら考える。これからの俺の生活はとても愉快で、楽しいものになるだろう。そう確かな予感を感じながら、彼女たちとのこれからを考えながら…。
俺は全力で走っていくのだった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。ここまで愛飢えを読んでくれた方、本当にありがとうございました。




