第四十章 同居生活十一日目 昼~夕方
今回もよろしくお願いします。
「やれやれ…。」
俺はそう呟きながらリビングに向かう。あのあとリルはすぐに寝付いてくれたのだが、それでも『ベッドに寝かせてくる』にしては時間がかかりすぎた。
「どう言い訳しようかな…。」
そんなことを呟いているうちに、リビングの扉の前に来た。まぁ、無理に気がまえることはないだろう。むしろ怪しまれる。
意を決して俺はリビングに入った。
「あ、ご主人様!食事の用意できましたよ?」
「ああ、ありがとう。」
リビングでは既に食事の用意を終えて、コロン、凛、メアがテーブルに着いていた。
俺も三人と同じようにテーブルに着いた。
「リルはどうでしたか?」
コロンが俺に聞いてくる。
「ああ、ちゃんと寝かせてきたぞ。」
「そうなんですか~。でも…」
そこでコロンの表情に黒い影が落ちる。
「寝かせてきただけにしては、ずいぶん時間かかりましたよね?」
「ぐっ…!」
「なにかあったんじゃないんですか?正直に言ってくださいね。」
やばい、コロンの後ろに黒いオーラが見える。そんな俺たちの会話を聞いていたメアが唐突に
「雄我…ギシギシアンアンしてきたの?」
「「えっ?」」
メアの発言に俺とコロンの口からそんな声が漏れ。
「ブー!」
凛がお茶を吹いた。
「な、な、なっ、なにを言っているんですか!メア!」
「そ、そうだぞ!そんなことするわけないだろう!」
「メア、女の子がそんなこと言っちゃいけません!」
そして、俺とコロンと凛の三人が動揺した反応をメアに向ける。
「…?そうなの…?」
メアは凛の言葉にきょとんとした顔でそう返した。
やれやれ、メアってこんな発言をするのか…。
俺はこめかみを押さえつつ、リルが添い寝を要求してきたことをコロンに説明した。もちろん、キスしたことは秘密だ。
「なぁんだ、そうだったんですね。ほっ…。」
「はぁ…よかったぁ…。」
俺の説明を聞いたコロンと凛が胸をなでおろす。
「雄我、私、変なこと言った…?」
そしてメアは自分の発言がおかしいことにまったく自覚のない様子で俺に尋ねてくる。
「ああ、普通の女の子はそんなこと言わないからな。」
俺はそう返した。するとメアが
「でも、男女が部屋に二人きりになったら大体そう言うことだって父上が…。」
「よし、その知識は忘れなさい。」
「でも…」
「忘れなさい。」
「……わかった…。」
なんてことを実の娘に吹き込んでるんだ冥界王は…。
「じゃ、じゃあ、とりあえず食事摂っちゃいましょう?ね?」
そんな俺とメアのやり取りが終わると、コロンがそう切り出してきた。
「そうだな、そうしよう。」
「「「「いただきます。」」」」
そうして俺たちは食事を四人で摂ったのだった。
◇◆◇◆◇
「あ、コロン、お皿は私が片付けますよ。」
食事を終えると、凛がそう言ってきた。
「え?でも…。」
「いいんです、コロンはこれから雄我さんと、ね?」
「あうあう…。でも、気を遣わせるのは申し訳ないですから…。」
「…?なにかあるの?」
凛とコロンのやりとりにメアが首をかしげる。
「コロンはこれから雄我さんとデートなんです!」
凛がメアに対して答える。
ああ、そういえばコロンとデートの約束があったんだったな。
俺は三人のやり取りを聞きながらそう考えた。
「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて…。ご主人様、準備できてますか?」
「ああ、ちょっと待ってくれ。少し用意してくるから。」
「わかりました!」
そうして俺はさっさと自分の部屋に戻り、出かける支度を済ませて、リビングに戻る。
「じゃあ、行くか。」
「はい!」
「いってらっしゃい。リルは私が見ておきますね。」
「いってらっしゃい…。」
「「いってきます。」」
凛とメアに見送られて、俺とコロンは町へ出かけたのだった。
◇◆◇◆◇
デートの場所はリルに連れ出されたのと同じ、ショッピングモールだ。
「ご主人様…?」
歩きながらコロンが俺に声をかける。
「ん?どうした?」
「あの…その…。」
「うん。」
「腕を、ですね…。」
ああ、俺はコロンの言葉を聞いて大体理解した。俺たちはデートに来たというのに、腕を組んでいなかった。コロンとしては寂しかったのだろう。
こういうところは男がリードするところだよな…。
そう思いつつ、俺はコロンが腕を組みやすいように、腕を曲げた。
「えへへ…。」
コロンはそれを了承と受け取り、腕を組んできた。
「ご主人様とデート、嬉しいです。」
「俺も嬉しいよ。」
そんなことを言いながらショピングモールを歩いていく。
「あ、ご主人様、あの服可愛くないですか!?」
コロンが可愛い服を見つけて俺を引っ張って行ったり…
「このぬいぐるみ、可愛いです~。」
ファンシーショップでぬいぐるみを見たり…
「あ、あれはなんですか?」
そして、コロンが指差したのはゲームセンターだった。
「ああ、そういえばコロンは行ったことないんだったな。」
「はい!連れて行ってくれますか?」
「おう、行こうか。」
俺はコロンとゲームセンターに入った。
「わー、いろんな景品がありますね!」
コロンが辺りを見回しながらそんなことを言う。
「何か欲しいものとかあるか?」
「えっと…。」
俺がコロンにそう聞くと、コロンは辺りを見回して…
「あっ!私、あのぬいぐるみが欲しいです!」
コロンが指差したのはぬいぐるみが景品のクレーンゲームだった。
「ふむ…。」
さて、ここはあれだな。男がいいところを見せる場面な訳だが…。
あいにく俺自身、ゲーセンに来ることは少ないのだ。つまり…
正直、クレーンゲーム苦手ですハイ。
「取ってくれるんですか?」
そんな俺の思考を微塵も知ることなく、コロンが輝いた期待の眼差しで俺を見つめてくる。
今こそ!浜崎雄我、男を見せる時!
と、そんな感じでクレーンゲームに挑んだ俺は…
「うぐぐ…。」
見事、クレーンゲームに惨敗した。10回くらいやった…。
お財布から、野口さんが一人、お亡くなりになりました。
「すまない、コロン…。」
「あう、いいんです!楽しかったですよ?ね?」
肩を落とす俺をコロンが慰めてくれる。
「ご主人様、そろそろお腹空いてきませんか?気分転換に、美味しいもの食べましょ?ね!」
「ああ、そうだな…。」
コロンの言葉に頷いて、俺たちはフードコードに向かうのだった。
◇◆◇◆◇
「さてと、コロンは何を食べたい?」
「私は…甘いものがいいです!あれとか!」
コロンが指差したのはクレープ屋だった。あのクレープ屋は以前、リルと一緒に立ち寄った場所だ。
「よし、じゃあ、それにしようか。」
俺とコロンはクレープを買って、向かい合うように席に着いた。
「んー!クレープ美味しいです!」
「それはよかった。」
コロンはクレープを美味しそうに食べていく。甘いものを食べるときの女の子の顔は本当に輝いていると思う。
「ね、ご主人様。」
「ん?」
「あーんしてください!あーん!」
「ん、あーん…。」
コロンが俺にクレープを食べさせてくれた。
「えへへ、美味しいですか?」
「ああ、とても美味いぞ。」
「よかった~!」
こんなやり取りをリルとしたような気がしないでもない。女の子ってあーんするの好きなんだろうか。
まぁ、俺としても当然、嬉しいわけだが…。
「あ、ご主人様、クリームついてますよ?」
「ん、ああ。」
「ふふ。」
コロンは俺の口元についているクリームを指でとって、その指をぺろりとなめた。
「甘いですね~。」
そんなコロンにドキッとしてしまう自分がいるわけで…。
リルみたいな大胆なのもいいけど、こういうのもいいよなぁ…。なんて、考える。
「ご主人様~?」
「ん?どうした?」
「さっきから、リルのこと考えてませんか?」
「えっ!」
「あー!やっぱり!ひどいです!今は私とのデートなのに!」
「ごめん、悪かった。」
「もー…。」
しまった、何してるんだ俺は。女の子とデートしてるのに他の女の子のこと考えるとか、俺は馬鹿か。このたわけ!
「ごめんな、コロン。」
「わかればいいんですけど…。そろそろ行きましょうか?」
「ああ、そうだな…。」
好きな人と一緒にいる時間は過ぎるのが早い。
時計を見れば、もう夕暮れ時だった。
「ご主人様、ここって噴水広場があるんですよね?」
「ああ、あるぞ。」
「じゃあ、最後にそこに寄って、帰りましょう?」
「そうだな…。」
なんだろう、まだ帰りたくない気持ちがある。
そこで俺は唐突にひらめいた。
「コロン、悪いんだけど、ちょっとお手洗いに行きたいから、先に向かってくれないか?」
「わかりました、待ってますね?」
「悪いな。またあとで。」
俺はコロンと一度別れて、足早にある場所へ向かう。
俺が向かったのはコロンがぬいぐるみを見ていたファンシーショップだ。
そこで俺はコロンが可愛いといっていたぬいぐるみを買って、噴水広場まで走った。
◇◆◇◆◇
「ごめん、待たせちゃったな。」
俺はファンシーショップで買ったぬいぐるみの入った袋をコロンに見えないよう隠し持ちながら、噴水広場に先に来ていたコロンに話しかけた。
「大丈夫ですよ?全然待ってないですから。」
コロンは俺を見てそう言ってくれる。
さて、買ってきたはいいが、どう渡すべきか…。
「ねぇ、ご主人様?」
そんなことを考える俺にコロンが声をかける。
「ん?どうした?」
「ご主人様、ここでリルとキスしたんですよね?」
コロンが俺にそう聞いてくる。彼女の顔が夕日を浴びて輝いていた。
「私とも、してくれませんか?」
俺の答えを待たず、コロンはそう続ける。
答えは当然、イエスだ。断る理由など何もない。
コロンは俺のほうに顔をしっかりと向けて、目を閉じる。
俺も目を閉じながら、コロンの唇に自分の唇を重ねた。
「ん…。」
コロンの口から吐息が漏れる。俺の心臓が高鳴るのがわかる。ドキドキしていくのだ。
「えへへ、ドキドキしてきちゃいました…。」
キスを終えると、コロンがそう言ってくる。
「俺もだ。すごいドキドキしてる。」
素直に答える。このタイミングで渡すのがベストだろう。
「なぁ、コロン。これ、受け取って欲しいんだ。」
「え?なんですか?」
俺はぬいぐるみの入った袋をコロンに手渡した。
「わぁ…。ご主人様からのプレゼント…。あけてもいいですか?」
「もちろん。」
コロンが袋を開けて、中を確認する。
「あっ…。これ…。」
「お前が可愛いって言ってたぬいぐるみだよ。ゲーセンでとってやれなかったし、それに…。」
「それに?」
しまった、言葉に詰まってしまった。いや、何を迷うことがある?素直に自分の気持ちを伝えればいいだけだ。
「それに…お前がとても大切で、これからもずっと傍にいて欲しいから。だから、プレゼントだ。」
俺の言葉を聞いたコロンの顔が満面の笑顔になる。
「えへへ…。嬉しいです!ご主人様~!」
コロンが俺に抱きついてくる。俺もコロンを抱きしめ返す。コロンの温もりが、自分に伝わってくるのがわかる。
「一生大切にしますね!ありがとうございます!」
そして最後にはコロンの目から涙が流れていた。
「えへへ、嬉しすぎて、涙出てきちゃいました…。」
そのまま、俺の腕の中で照れたように笑う。そんな彼女がとても愛おしくて…。
「コロン、大好きだ。」
そんなことを言って、強く抱きしめた。
「私もです、ご主人様…。」
そんなことがあって、しばらくの間抱きしめ合っていた俺たちは家路に着くのだった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次回も読んでくれると嬉しいです。




