第三十九章 同居生活十一日目 朝
今回もよろしくお願いします。
「よし、帰ってこられたな。」
冥界で梟が開いてくれた空間から出ると、そこはもといた俺たちの家だった。
「あれ?もうこっちは朝なのか。ってことは一日経っちまったのか?」
「冥界は…、時間の流れが違うから…。」
リビングの窓から外を見るともう朝になっているのを見た俺の呟きにメアが答えてくれた。
「そうなのか。じゃあ、リルは俺が部屋に寝かせてくるから。コロンは食事の用意を頼めるか?」
「わかりました!」
俺の言葉を聞いたコロンはキッチンに向かい、食事の用意を始めた。
「凛とメアは休んでてくれよ。俺もリルを寝かせたらすぐ戻るからな。」
「はい、わかりました。」
「…わかった。」
俺は凛とメアににも声をかけ、二人の返事を聞いてからリルの部屋に向かった。
◇◆◇◆◇
「よっと…。」
俺はリルを静かにベッドに降ろす。
「早く起きてくれよ。」
俺はそう言いながらリルの頭を撫でる。そのまま部屋から出て行こうとした俺の服を掴むものがあった。
それは言うまでもなく、気絶していたリルの手だった。
「よかった、意識が戻ってたんだな。」
「ええ、雄我は大丈夫なの?」
「俺は凛に傷を治してもらったからさ、大丈夫だよ。リルはどうだ?」
「私も怪我はないけど…。でも…。」
「でも、なんだ?どこか痛むのか?」
「そうじゃないわよ。その…。」
リルが何を言いたいのかわからない。怪我がないなら問題は無いと思うのだが…。
「なんだよ、はっきり言ってみろって。」
「私は、貴方を守れなかったのが悔しいのよ。」
俺の言葉にリルはそう答えた。
「ロードに負けたのが悔しいんじゃなくて?」
「ええ、そうよ。あいつに負けたことより、ロストに貴方を傷つけさせてしまったことのほうが悔しい。貴方の傍で、貴方を守れなかったことが…。」
「そっか。ありがとな、リル。」
俺はただお礼を述べて、リルの頭を撫でてやる。
「あら、優しいのね…。あいつに負けたことを責めたりしないんだ?」
リルはそんなことを言ってくる。
「なんでお前を責めるんだよ?お前はよく戦ってくれたじゃないか。もっと褒めてやりたいくらいだ。」
「そっか…。そうよね、貴方は魔法の国の奴らとは違うものね…。」
ああ、そういえばリルはもといた世界ではその魔力の強さゆえに気味悪がられていたのだったか…。リルに捕らえられてときにそんな話を聞いた。そして、リルのその力を悪用しようとする奴らもいたようだった。
だからこそ、ロードに負けたことによる精神的な傷は大きいはずだ。くそっ、そんなことにも気付いてやれないのか、俺は…。
「ねぇ、雄我?」
「なんだ?」
そんなことを考えていた俺にリルが声をかけてくる。
「今、もっと褒めたいっていったわよね?」
「ああ、言ったけど…?」
「じゃあ、私はご褒美を要求してもいいわよね…?」
「おう、俺にできることでいいならしてあげられるぞ。」
リルの言葉に俺は軽々しく返事を返してしまった。
「やった!じゃあ、キス、して?」
ほら見なさい、軽々しく返事をしたせいでこんな要求が来ちゃったじゃないですかやだー。
いや、キスするのは全然嫌じゃないよ?むしろリルみたいな可愛い子にキスを要求されて拒否する男がいるだろうか、いやいまい。
「わかったよ…。コロンには秘密だからな。」
「わかってるわよ、ふふ。」
リルは嬉しそうに笑って、軽く目を閉じる。
これって、俺側からしないといけないんですよね…。いや、リルはベッドに寝てるわけだから、当然ではあるが…。
やっぱり、自分からするのってなんだか恥ずかしいんだよな…。
そんなことを考えながらも俺はリルの唇に自分の唇を重ねた。自分の頬が熱くなっているのを感じる。
「ん…。」
唇を重ねたときにリルが声を漏らした。そのせいで、俺の心臓は高鳴っていく。
俺が唇を離すと、リルが目を開けた。
「ありがと、雄我。」
「ああ、このくらいならどうってことない。」
「へぇ?そんなこと言ってるけど、顔が真っ赤よ?」
「なっ…!」
「ふふ、照れてるのね、可愛いんだから…。」
リルは俺を見て楽しそうに笑う。
「ねぇ、雄我、もう一つお願いしてもいいかしら?」
そして、俺に更なる要求をしようとする。
「わかったよ、それで最後だからな?」
「ふふ、聞いてくれるんだ?やっぱり優しいのね。」
そりゃあそうだ、傷ついている子がいたら、傍にいて、慰めるのは当然だ。ましてやそれが、女の子なら尚更だろう。
「それで?俺にどうして欲しいんだ?」
「私が寝るまででいいから、添い寝してくれないかしら…?」
「あ、ああ…。」
「なによー?嫌なの?」
「嫌って事はないけどさ…。」
「なら、いいじゃない。私のこと、慰めて?」
リルが俺のことを見上げてくる。ぐぅ…。女の子の上目遣いっていいよね…。
「雄我、早く早く。」
「わかったよ。」
俺はリルの隣に寝そべった。
「んん…。雄我、あったかい…。」
「おい、変な声を出すんじゃありません。」
「なぁに?興奮しちゃった?」
「んなわけあるか!」
「ふふ、照れちゃって…。」
「うるさい、早く寝なさい。」
「ねぇ、雄我。」
「なんだよ?」
「好きよ。」
「ばっ!あのなぁ…。」
「ふふ、照れた?」
「当たり前だろ…。なんでお前は平然と言えるんだ。」
「あら、私も本当はドキドキしてるのよ?」
「絶対嘘だろ…。」
「じゃあ、確かめてみる…?」
そう言いながら、リルは俺の手を自分の胸に持っていった。
「ね?心臓がドキドキしてるのわかるでしょう?」
「ちょっ!おま…。」
「あら?嫌だった?」
「嫌じゃないけど…。そう言う問題じゃないだろ!」
そう言いながら、俺はリルの手を振り払った。
「もう…。せっかく女の子の胸に触らせてもらえたんだから、楽しめばいいのに。」
「あのなぁ…。例え俺であってもそう言うこと軽々しくするなよ…。」
「本音は?」
「嬉しくないわけじゃ…ない。」
むしろ女の子の胸を触れて嬉しくない男子などこの世にはいな…いや、ホモは嬉しくないだろうな。ホモ以外の男子なら嬉しいはずだ。
「なら、いいでしょう?貴方以外にこんなことするわけないじゃない。」
「いや、だから俺であってもだな…。」
「私がいいって言ってるんだからいいの。触りたいなら、いつでも触ってほしいくらいよ?」
「だーもう!いいから寝なさい。ちゃんと休んで、早く元気になってくれたほうが俺も嬉しいんだからさ。」
「わかったわよ~。じゃあ、おやすみなさい。ちゃんと傍にいてね?」
「ああ、おやすみ。」
そんなわけで俺はリルが寝付くまで、リビングに戻れなかったのだった…。
最後まで読んでいただきありがとうございました。次回も読んでくれると嬉しいです。




