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第三十八章 同居生活十日目 昼

 今回もよろしくお願いします。

 「これはどうでしょう!」


 そう叫びながらロストは力を込めた蹴りを繰り出してくる。俺はそれを呪槍・黒竜で防ぐ。


 「ぐぅ…。」


 呪槍・黒竜で防ぐのはいいが、ロストの攻撃の重さは呪槍・黒竜を持つ俺の手に確かに伝わってくる。実際、俺の手はジンジンと痛むようになっていた。


 「ふふ、槍を持つ手が震えていますよ?」


 そう言いながらロストは拳を連続で繰り出してくる。


 「くっ…。」


 俺はそれを呪槍・黒竜で防ぎ続ける。実際、呪槍・黒竜を持つ手はロストの攻撃によるダメージで震えていた。


 それでも、呪槍・黒竜を手放すわけには行かない。俺が呪槍・黒竜を落としたとき、その瞬間、俺はなすすべもなく負けてしまうのだから。


 「少しは反撃したらどうですか?」


 そう言いながら、ロストは攻撃をやめ、俺から少し距離をとった。その顔には余裕の笑みが浮かんでいる。


 「くそっ…。」


 誰が見てもロストが俺を挑発していることはわかるだろう。俺も、挑発に乗って突っ込むべきではないことはわかっている。だが、それでも…。


 「負けられねぇんだよ!」


 それでも俺は、ロストに全身の力を込めて突進し、呪槍・黒竜を繰り出した。


 「ふふ、ここまでのようですね。」


 ロストは俺の動きをかわし、俺の横から蹴りを放った。


 「がっ…。」


 その蹴りは俺の横腹に吸い込まれるようにあたり、俺は吹き飛ばされる。


 「大丈夫、骨や内臓が壊れるほどの力は入れていませんから。」


 そう言いながらロストは俺に背を向け、冥界王へ向かって歩き出した。


 「待て…。」


 俺はそう言葉を漏らすが、俺の体は立ち上がることができなかった。


               ◇◆◇◆◇


 「雄我さん!」


 私はロストという男に雄我さんが蹴り飛ばされたのを見て声を上げました。


 「待て、娘よ。離れてはならん。」


 私の後ろから冥界王が私を呼び止めます。


 「もう、よいのだ…。」


 「どうやら、ご理解いただけたようですね?」


 冥界王のその言葉を聞いたロストがそう言ってきます。彼は既に、私たちの目の前まで来ていました。


 「それでは冥界王、彼女の魂を、渡していただけますね?」


 「仕方あるまい…。だが約束しろ。それさえ受け取れば、直ちに冥界から立ち去ると。」


 「いいでしょう。貴方が彼女の魂さえ渡してくだされば、私たちは大人しく冥界を去りますよ。」


 「ならば、受け取れ…。」


 そう言いながら冥界王は自身を覆うローブの中から、薄く光る四面体の水晶のようなものを取り出しました。その水晶の中には淡く光る丸いものがあります。それがロストの目的の魂であることが、私にはわかりました。


 「確かに、受け取りました。では、さよならですね。」


 冥界王から水晶を受け取ったロストは私たちに背を向け、クローズに話しかけます。


 「クローズ、帰りますよ。他のものを呼んでください。」


 「はいは~い♪まっかせて~!」


 ロストの言葉を聞いたクローズの周りにリルがいつも使うような魔法陣が広がります。


 「じゃあね、戦う力のないお嬢さん。」


 彼の言葉が聞こえると同時にクローズの姿が消えました。隣にいたロストの姿も消え、他のロストの仲間たちの姿も消えています。


 「冥界王様…。」


 冥界王の傍に居た梟が心配そうに声をかけています。


 「娘よ、早く彼の元へ行ってやるがよい。私は問題ない。」


 「は、はい!」


 私に気を遣って、冥界王がそう言ってくれました。


 私は彼の元へ、走り出しました。


              ◇◆◇◆◇


 「雄我さん!」


 「ん…。」


 ロストに吹き飛ばされて、倒れている俺の元に凛が駆けつけてくれる。


 「大丈夫ですか!」


 「あ、ああ。たいした怪我じゃないから。あいつも手加減したようなこと言ってたし。」


 「でも、体中傷だらけです!待ってください、今私が…。」


 そう言いながら、凛が俺の傍で祈るような動作をする。凛が意味薙を使ってくれたのだろう。俺の体の傷はみるみるうちに消えていった。


 「ありがとう、凛。」


 「いいえ、私にはこの位しかできませんから…。」


 「他のみんなは大丈夫かな…。」


 凛にお礼を言いつつ、俺は辺りを見回す。


 「ご主人様~!」


 見れば、リルを背負ったコロンが死神の子と共に俺たちのほうへ走ってきていた。


 「コロン!大丈夫か?」


 「私は大丈夫です!でも、リルが…。」


 俺はコロンに背負われているリルに駆け寄る。


 「おい!リル!大丈夫か!」


 リルに向かって声をかけるが、彼女は目を覚まさない。


 「大丈夫、気絶してるだけ。」


 そんな俺に死神の子が声をかけてきた。


 「そうか、ならよかった。ありがとな。えっと…。」


 俺はまだ彼女の名前を聞いていなかった。なんと呼べばいいのか俺が口ごもっていると


 「…メア。」


 彼女が名前を教えてくれた。


 「メアか。俺は浜崎雄我だ。よろしくな。」


 俺はメアに応えつつ、コロンからリルを受け渡してもらって、自分の背中にリルを背負った。


 「さて…。冥界王は?」


 「私はここだ。」


 冥界王が居たほうを見ると、彼は梟と共に俺たちの近くまで移動していた。


 「さて、君は…。」


 「俺は雄我、浜崎雄我だ。」


 俺は冥界王に自分の名を名乗った。


 「私はコロン=アズケイトです。気絶しているのはリルといいます。」


 「私は月雲凛と申します。」


 俺に続けてコロンたちが名乗る。


 「ふむ。雄我君、まずはすまなかった。突然私たちの戦いに巻き込んでしまったこと、深くお詫びする。」


 そう言いながら冥界王は俺たちに頭を下げてきた。


 「頭を上げてくれよ。それで、ロストたちはどうしたんだ?」


 「奴らは目的を果たし、冥界から立ち去った。」


 「そうか…。じゃあ、俺たちは力になれなかったってことか。」


 「そんなことはない。君がロストを止めなければ、私の娘…メアは既に死んでいたかもしれない。むしろ、感謝するばかりだ。」


 「……私からも、ありがとう…。」


 冥界王に続くようにメアが俺にそう言ってくる。


 「そこで…こんなことを頼むのは申し訳ないのだが…メアのことを頼まれてくれないだろうか?」


 そして、冥界王は俺にそう言ってきた。


 「どうしてだ?もう奴らは目的を果たしたんだろう?」


 「そうだ。だが、メアには奴らを追い、彼女の魂を取り戻してもらわなければならない。私は冥界からでることができないのだ。」


 「なるほど。ロストたちが何を企んでいるかは知らないが、俺たちにも被害が及ぶんだな?」


 「ああ、その通りだ。奴らの企みがうまくいけば、世界を支配できる力が、奴らの手に収まるだろう。」


 「メアはそれでいいのか?俺はお前の標的なんだろう?」


 「私は…。」


 「それについては問題ない。君は死神の標的から既に外しておいたからな。」


 俺の質問にメアの代わりに冥界王が答えてくれる。


 「なら、俺は構わない。コロンと凛はどうだ?」


 「私はご主人様に危険がないなら構いませんよ。リルも同じだと思います。凛はどうですか?」


 「私も大丈夫です。」


 「なら、あとはメア、君が決めることだ。俺たちと共にロストたちと戦ってくれるか?」


 「………。」


 メアは俺の言葉に頷きで肯定の意を示してきた。


 「決まりだな。冥界王、俺たちはロストたちの企みを阻止するために戦う。それでいいか?」


 「ありがとう…。ロストが持ち去った彼女の魂は、最悪の場合は壊してくれて構わない。」


 「わかった。じゃあ、帰ろうか。」


 「私が道を開きます。」


 俺の言葉に梟が答え、俺たちを冥界に連れてきたときと同じ空間を開く。


 「ありがとう。よし、コロン、凛、メア。行くぞ。」


 俺は梟にお礼を言いつつ、空間に足を踏み入れた。コロン、凛、メアが俺に続く。


 「雄我君、メアをよろしく頼む…。」


 「ああ、任せてくれ。」


 最後に冥界王の言葉に答え、俺たちはもといた家へと帰るのだった。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次回も読んでくれると嬉しいです。

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