エピローグ-黄龍伝説-
世界には、五つの大陸がある。
北のノルグレイア大陸、南のヴァルカディア大陸、東のセレディア大陸、西のグランヴェル大陸。そして、その中心に位置する中央のエルディナ大陸。
それらは海によって隔てられ、異なる文化と歴史を育んできた。しかし、六千年前、この世界に大陸はひとつしかなかったという。
今では神話として語り継がれる、四つの国による大戦。
領土を巡る争いは、やがて国の存亡を賭けた戦いへと発展し、幾年もの歳月を経て、世界そのものを破滅へと導くほどの災厄を引き起こした。
その戦いを終わらせたのは、一頭の龍だった。
黄金の鱗を持ち、太陽の如き輝きを放つ、神にも等しい龍。
龍は戦場の中心に降り立ち、己の命と引き換えに、溢れ出した力を鎮めた。そして、その最後の力によって大地は裂け、ひとつだった大陸は五つに分かたれたという。
世界を救った黄金の龍は、役目を終えると同時に、その身を無数の光の泡へと変え、消え去った。
以来、六千年。
人々はその龍を畏敬し、この話を黄龍伝説と呼び、神話として語り継いできた。
だが、誰も知らない。
黄金の龍が最後に立っていた場所が、中央大陸の地下深くに存在する、世界の龍脈であったことを。
そして、龍が消えた後も、そこにはわずかな力の残火が留まり続けていたことを。
光の泡は、地底の鍾乳洞に染み込んだ。
岩壁はねじれ、鍾乳石は樹木のように枝分かれし、自然の洞窟はいつしか人工物を思わせる異様な構造へと姿を変えていった。
石柱の並ぶ回廊。
文字とも紋様ともつかない刻印。
誰が造ったわけでもないのに、まるで何者かが神殿を築き上げたかのような空間。
その奥深く、龍脈の力が最も濃く集まる場所で。
ひとりの少女が、目を覚ました。




