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モブだったはずなのに~気づいたら、誰よりも大事にされていた~  作者:


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【6話】貴茶研、発足。そして早速の不安要素

最近、放課後のお茶の時間がすっかり日課になっていた。


中庭のベンチや学園内のカフェを使うこともあったけれど、毎回場所を探すのも、混んでいて入れないこともあって、少し不便さを感じ始めていた頃だった。


「いつも同じ場所でお茶するなら、部室があれば楽ですよね」


ある日、何気なくセレナがそう言ったのが、きっかけだった。


「部室……そうか、その手があったんですね。でも、新しく部活を作るとなると、人数が必要になりますよね……」


「確かに。最低でも、もう一人は必要そうだな」


ユリウスも頷きながら、難しい顔をしていた。


(誰がいいだろう……)


頭の中で、思い当たる人物を探す。


実は、エイデンとは同じクラスで、授業中に何度か話したことがあった。


ノートを見せてもらったり、グループ課題で一緒になったりと、決して初対面というわけではない。


それに、エイデンは授業の合間にユリウスやセレナとも軽く挨拶を交わす程度の面識があったはずだ。


「エイデンさんに頼んでみるのはどうでしょう。同じクラスですし、人柄も悪くなさそうですし」


「ああ、彼か。確かに、悪くないと思う」


「私も、何度か話したことがあります。優しい方ですよね」


意見が一致したところで、私は早速エイデンに声をかけることにした。


「エイデンさん、ちょっとお願いがあるんですけど」


「モブリーヌさん? どうしました」


「実は、部活を作りたいんですが、人数が一人足りなくて。もし良ければ、協力してもらえませんか?」


「私が、ですか? ……何の部活なんです?」


「貴族的茶文化研究部、です」


「お茶の……研究、ですか。良さそうですね。私でお役に立てるなら、協力します」


クラスメイトとしての気軽さもあってか、エイデンは思った以上にすんなりと了承してくれた。


数日後、無事に四人分の署名が揃い、学生課に提出した申請書が受理された。貴族的茶文化研究部──略して貴茶研(きちゃけん)


私たちの部活が、正式に発足した瞬間だった。


「やりましたね、モブリーヌさん」


セレナが嬉しそうに微笑む。


ユリウスも、いつもより少し晴れやかな表情をしていた。


「私が部活に入るなんて、思ってもみなかった」


「殿下にとって、初めての部活動ですものね。これから、楽しんでいきましょう」


割り当てられた部室は、古い校舎の一角にある、こぢんまりとした空間だった。


少し埃っぽいけれど、テーブルと椅子、収納棚もちゃんとある。


「さっそく、お茶を用意しましょうか」


私はそう言って、部室の棚にしまわれていた茶器のセットを取り出した。


年季の入った、けれど明らかに上質な作りの茶器だ。


学園の備品らしく、貴族の子女が通う学園だけあって、こういった道具にも妥協がないらしい。


「エイデンさん、こちらをテーブルまで運んでもらえますか?」


「はい、もちろんです」


エイデンは茶器を両手で受け取り、丁寧な足取りでテーブルに向かおうとした。


けれど、その途中、何もないはずの床で、見事に足を滑らせた。


「うわっ……!」


ガシャン、という耳を塞ぎたくなるような音が響く。


「……あ」


部室に、しばし静寂が流れた。


床には、割れた陶器の破片が散らばっている。


「す、すみません……! 本当に、申し訳ありません……!」


エイデンは真っ青な顔で頭を下げ続けていた。


「だ、大丈夫ですか? 怪我は……」


「私は平気です……ただ、茶器が……」


私は破片を見つめながら、内心で冷や汗をかいていた。


(これ、絶対安いやつじゃない……結構年季入ってたし、もしかして由緒ある品だったり……?)


「とりあえず、片付けましょう。エイデンさん、怪我がなくて何よりです」


その場をなんとか取り繕い、皆で破片を片付けた。


けれど、内心では新しい不安が膨らんでいた。


(エイデンさんのドジ、思った以上に本格的かも……このまま部活、続けていけるのかな……)


部員はまだ四人。


活動内容も決まったとは言えない。


けれど早速、波乱の予感を漂わせながら、貴茶研の最初の一日は幕を閉じた。

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