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冒険者を助けたが……

ウォーターサーバーの事件の一か月後、僕は家のギルトで受付嬢として働き続けていて、未だにデートに誘われたこともない。

でも、仕事は順調にこなしている。

窓口の仕事だけではなく、他にギルドに関係ある仕事もしている。

今は隣の街に今月の報告書を届けて帰っているところ。


この世界のギルトは定期的に上に状況を報告するので、小さいギルトが直上の街のギルトに報告して、そしたら街のギルトが都市ギルトに報告して、最後にすべての都市ギルトが中央ギルトに報告する。


直上の街のギルトはうちからあまり遠くないけど、徒歩で往復には半日かかる。

ちなみに、その街はこっちよりちょっと大きいけど、実際人口も少なくて、貴族さんが住んでいるだけ。


この帰る道は左右に大平原に挟まれて、すごく地方の感じがする。

途中にトイレと自販機のような施設があって、前世に旅行の時に休憩するサービスエリアを思い出せる。


まとめに言うと、生活は前世と変わらないが、両親とシルビアさん以外、歳が近い友達がいない。歳が近い人はないことはないが、ほとんど冒険の人なので、一緒に冒険する人を探すことが多く、弱くて受付嬢の僕を注意しない。


歩き続ける最中に、ちょっと変な微弱な声が聞こえて、一旦周りを見て、なんもないか。

空を仰ぐと、人がこっちに落ちていて、本能で僕は伏せた。


カドンみたいな音がして、埃も蹴り上げられた。

埃を手で払うと、目の前にクリーム色の髪で、スカートで、戦闘のための服を着ている少女がいた。

少女は気絶したようで、地面に目をつぶって可愛い顔で倒れている。

いや、早く助けを呼ばないと。


僕はバッジみたいなものを取り出して、弄り始めた。

これはこの世界の携帯で、魔石で作られたもの。


「おかけになった電話番号は、現在おつなぎできません」


へ、なに、圏外。なんか、すごくアニメみたいな状態じゃないか。

「そこのお嬢ちゃん、早く逃げて」


誰か僕に声をかけている。

また、周りを見て、声の主を探って、妙に光っているボールを見かけた。

今度はなんだ。


「早く、逃げないとあれが」


光っているボールがどこかを指しているようで、そこに振り向くと、デカいスライムが向かっている。


ねばねばで、色が汚そうで、すごく嫌な感じがする。

今着てる服を汚したくない。

前世から清潔や身だしなみなどにすごく拘るから、ちょっと臭いだけで、またお風呂に入る。この気持ちはこの体の影響ではない。それに、この服綺麗だもん。


「早く、逃げて助を呼ぶんだ」

「でも、この人が」

「いいから、行って、さもないとお前も」


デカいスライムは人を殺せないが、体力や魔力を吸い込むので、体にある程度の害がある。

町に逃げたら、安全になるが、この可愛い女の子がめちゃくちゃにされる姿を僕は見たくない。

せめて、なにかしてあげないと、気が済まない。


掛けるしかない。

カバンのなかから、ポーションを取り出して、ちょうど地面に魔法の杖を見かけた。

ポーションの蓋を開けて、女の子の口に回復薬を注ぐ。

この子を回復させたら、魔法でデカいスライムをなんとかしてもらえる。

戦えない僕にはできることがこれしかない。


って、どうして薬が女の子の口元に溢れているの。

ちゃんと飲まないと効果がないよ。


デカいスライムはさらに近づく。

アニメで見たことがあるが、試すしかない。

残った薬を口に入れて、女の子の顔に近づいて、唇を女の子の唇に重ねた。


合わせた瞬間、女の子の方が強く吸い込んで、薬を移しても、口が離れなくなって、体も変な気分になった。

こんな気分人生では初めて、体がボカボカして、溶けそうで、おかしそうな気分。


待って、何をやっているのよ僕。

女の子から離れて、運動していないのに、息がはきはきしている。


女の子の様子を見て、まだ気絶している。

「ふんや」


寝ているのか。


「えっとお嬢ちゃん」

光っているボールには顔がないけど、その口調だけで、きっと戸惑っている顔をしているはず。


「どうして、起きてくれないの」

「ねえ、お嬢ちゃんポーションは人によって体の反応が違うので、彼女の場合は発揮時間が必要なんだ」

「え」


つまり、これは「読み込み中」状態ってこと。

この状況を見て、またやらかした気分がする。


そう考えながら、デカいスライムは近づいていっていく。

戦うのは無理だから、残る選択肢がただ一つ。

逃げる。


本能で、女の子を連れて行こうとして、女の子を持ち上げる。

僕の体力なら、人を抱えないはずだったが、今簡単に女の子を抱えた。


状況を整理する時間がなくて、僕は女の子を姫様抱っこして、ついでに杖も拾って、町の方向に走り出す。


ちょっとだけ振り向くと、デカいスライムが後ろを追っているけど、ある程度の距離を保っている。

この調子で、逃げ切れるかもしれない。


そして、町のサインが目に入って、自信が湧いてきた。

もっと体力をつけて走って、サインを通した。デカいスライムは壁にぶつかったように弾けた。この結界で、デカいスライムは入れないだろう。ほっとした。諦めて引き返そうと思ったら、 結界にぶつかって、突破しようとしている。


「しぶとい。こうするしかない」


女の子を地面に降ろして、町の案内サインの後ろの箱を開けて、そこにあるボタンを押した。

そうしたら、結界が光っていて、デカいスライムは感電したようで、ジタバタして爆発した。

まるで、殺虫灯に入った虫のようだ。


「うううん」


後ろに振り向くと、女の子は目覚めたようだ。

ウロウロしそうな女の子は上体を起こして、僕と目を合わせた。


目を合わせた瞬間、女の子は驚く顔をして、体や髪をあっちこっちに触り始める。

もしかして、傷をチェックしているのかな。


「えっと、もう大丈夫ですよ。デカいスライムが退治されましたよ」

「あ、はい、ありがとうございます」


女の子はちょっと控えめな口調で、返事してくれた。

急に知らない場所で起きると、不安定な気持ちがするよね。

女の子は立ち上がった。今そらだけど、なんか服装が違わない。

今の服は戦いより、私服の感じがする。

そして、お互いの身長もほぼ同じみたい。


「あ、ちょっと傷が」


女の子の腕のところに、血が付いていることに気づいた。


「あ、確かに」

「こっちに来て、手当します」

「お、はい」


冒険の世界だから、傷を一つや二つ負っても、おかしいことではない。

でも、できるだけあざが残らないように、手当して綺麗にする方がいいと思う。


僕は女の子をすぐ近くにある救急所に連れて行った。

この救急所は外見が田舎の駅舎に似ていて、中が無人である。

冒険者が休めて、傷を手当できるために作った施設で、町の境や道端にいくつか設置されている。

無論、救急用の物質があるか、食べ物や飲み物もあって、休憩所にもなる。


僕は女の子を中にあるベンチに座らせて、傷を手当するポーションを取って行く。

救急の物質が入っている箱を開けて、一本のポーション、ガーゼ、絆創膏を取った。

女の子の傍に戻って、ポーション一を適当にかけて、泥や汚れを拭く。


「えっと、ここまでご迷惑をおかけて大変申し訳ございませんが、でもどうしても尋ねたいことがあって、よろしければお聞きしてもいいでしょうか」

「あ、はい、何でしょうか」


女の子は言いづらそうに、話しかけた。


「私が気絶していた時、なにかありましたか」


気絶していた時、なにかあったのか。

まあ、結界でデカいスライムを退治していたか、その前にあなたを抱えていた。

その前にあなたにポーションを口移しで飲ませていた。


今悟った。

僕はとんでもないことをした。

気絶した女の子にキスした。

なんか、上司も身分を利用して、セクハラ行為をした。


「あ、うう、そ、その、ちょっと口に」

「へ、く、口」


女の子は驚いて、おどおどした顔をして、僕の発言に反応した。

いきなり、キスされて、そう反応するのはおかしくない。

自分も凄く罪悪感がある。ファーストキスを奪ったかもしれないが、女の子同士がノーカウントでしょう。いや、女同士ってキスするかい。

「えっと、悪気がないんですから、その」


説明しようとする時、着音の音が鳴った。

女の子はその音に応じて、慌ててスカートのポケットからこの世界の携帯の魔石を取り出した。

魔石から映った画面を見て、すごく苦しそうな顔をする。

さっきまだそばにいた光のボールも隅っこに隠れた。

なんかこっちもよくない気分を感じられる。

女の子は応答して魔石が浮いて通信モードになった。


「どうやら、死んでいないよね」


声が魔石から来て、発言が酷く感じられる。


「す、すみません。ちょっと、問題があって」

「あなたのせいで、こっちの計画が台無しなんだわ」

「ごめんなさい」

「五分で討伐するって言ったのに、三十分かかるなんてあまりだ」

「ごめんなさい」

「そんで、今回の報酬を削減する」


こいつ、どう見ても、酷い無茶を要求するやばい上司じゃない。


「おい、そこの君なにをしている。こっちのものじゃないよね」

「あ、私は偶然倒れていた彼女を回復ポーションを飲ませて、ここへ連れてきましただけ」

「一般人まで巻き込まれなんて、その上回復ポーションも費やした。こうなったら、残った報酬を弁償代になるしかない」


はああ、回復ポーションはすごく安いものだろう。

残った報酬を全部使わなくても、十分に払えるはず。

それに、この人の発言を聞いて、イライラする。


「この度、こちらのものがご迷惑をおかけて、申し訳ございません。全額で弁償させてください」


この人、怖い。


「いりません」

「いえいえ、どうかお受けください」

「逆に罪悪感がします」

「そう言わないでください」

「いや、彼女の方が私より大変だったと思います。デカいスライムは小ボス級レベルで、二、三人がないと倒しにくい相手で、たとえ三人パーティーで挑んでも平均五十分かかる相手です。それに、小ボス級が普段縄張りから離れなくて、討伐失敗しても、安全に逃げられるはずです。でも、今回のは縄張りから相当に離れる町まで追って、加えて結界も突破しよう行動、ボス級ではなく大ボス級と言われても過言ではありませんよね。だから、五分で一人で倒すのはちょっと無理だと思って、彼女を労うべきです。こんな無茶な課題を付けて、失敗させる虐め行為をおやめください」


最後にちょっと言い過ぎたかもしれないが、どう見てもいじめより女の子を排斥したいだけじゃないか。

言いたいことを吐き出したが、偉い人に説教するなんて、やはり怖くて体が震えていた。

まあ、イライラした気持ちが楽になった。

同時に、気まずい雰囲気になった。


「オメなんか人がいるから、この社会が衰退の道に進む」


魔石は光が消えて、女の子の手に戻った。

あの上司さんを結構怒らせた。

こうなると思ったけど、やはり不安だ。

せめて、すべての怒りを僕に向けてもらえればいい。


「さっきの口ってことは口移しでポーションを飲ませて回復させようとしたことですか」

「あ、はい、その通りです。その後、抱えてこっちに運びました。それだけです」

「そうですか」


女の子はもじもじして、さっきの不快そうな顔がなくなって、ちょっと嬉しそうで、同時に控えめに見える。直感で、またなにか来るような予感がする。


「あなたなら、キスや触れ合いでも、いいかも」


その言葉で、女の子の頬っぺたがまっ赤になった。


「へえええ」

予想外の言葉の意味に気づいた瞬間、自分の顔と首も熱くなってきて、また大失敗したような感じがする。

「寿はるか、はるかが下の名前、これからよろしくお願いします」

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