できること
寝室で母にいろんな服を着せられた一時間後
トップスは生地が柔らかくて、襟とレースがある白いシャツで、襟のところにリボンも付いてる。
さらに、白いシャツの上に、紺色のスーツを着ている。
下の方はただミニスカートで、ひだ付きがなく、色がスーツに合わせて、下段にグレーのラインが付いている。
父も「学生の頃のサラとそっくり」ってコメントしてくれた。
人生で初めて、父に可愛いって褒められた。
すこし、変な満足感がする。
こんな姿になった僕は今、父が管理するギルドの中で、研修受付嬢として接客している。
このギルドはフロントに三つの窓口があり、壁に書類が並んでいる棚がある。
中央にいくつの机や椅子があり、掲示板にクエストが貼ってある。
天井に案内のサインもぶら下がっている。
実際に見ると、市役所っぽく感じられる。
中はカフェくらいの大きさだけ。
隣で一緒に接客しているのがシルビアさんで、同じ受付嬢の服を着ている。
どうやらシルビアさんは両親の冒険の後輩で、今冒険活動を休んでいる。
それに、どうして受付嬢って、僕が受付嬢として男と接して、そしてデートに誘われて、やがて結婚することになると思う父と母だから。
まあ、ちびで、胸もない僕が男を魅了できるわけないだろう。
今更考えると、男がどうしてデカい胸が好きか、元男の自分にもあまり分からない。
逆に大きい方が太って見えるじゃないか。
「次の方どうぞ」
男の冒険者が僕の窓口に寄ってきた。
「よ、お嬢ちゃんクエスト035をお願いします」
「かしこまりました。まずはこの水晶に身分を確認してください」
男の人が水晶に手を近づけると、水晶が反応して、ステータス画面が水晶から映った。
僕はその画面を弄って、進行中のクエストの欄に035を入力した。
そう、この水晶が前世のコンピューターみたいなものだ。
「クエスト035狼を挑む討伐クエストを記録完了致しました。時間制限が二十四時間になります。制限内に達成を報告できない場合、失敗と見なして、報酬を受け取れなくなります。では冒険にお気を付けください」
「うん、ありがとう。また後ね。エイミー、もう行けるよ」
男の冒険者は魔導士装束の女の子と肩並べで、一緒にギルドを出た。
彼のプロフィールのパートナーの欄にその女の子の名前が書いてある。
どう見ても、カップルじゃないか。
この町の人口が少なくて、ほとんど既婚者や老人で、いい相手に巡り合うのは時間がかかりそう。
「次の方どうぞ」今度は女冒険者。
「やほ、クエスト031の魔石です。報酬を受け取りに来ました」
「はい、まずはこの水晶で身分を確認してください。報酬は口座に振り込みますか、それとも現金ですか」
「口座でいいです」
正直、恋愛の方針より、現代知識で現代物を再現する方針も考えたけど、さっきの水晶と口座の用語を見た通り、この世界魔法では、現代っぽいものが多い。
「エリさま、これからちょっと静かになるので、休憩してもいいですよ」
「あ、はいわかりました」
ちょうど、催してきたので、窓口から離れて職員室のトイレに向かった。
トイレ中に入ってドアを閉めて、そこには白くて、綺麗な洋式便器がある
普通の異世界ストーリーだったら、金持ちや貴族じゃないと手に入らないものだが、この世界はごく普通なものだ。
スカートをめぐって、そしてパンツを下して腰を掛けた。
まだ誰も使っていないから、便座が寒いと思うことになるが、この便座が温かくて、確かに火魔法で温めている。
用を足したら、壁にステータス画面みたいな画面が映ってきた。
画面のボタンを押すと、便座のウォシュレットの機能が発動する。
前世のものに比べると、形がちょっと違うけど、効果は同じ。
それ以外も給湯室にディスペンサー形で、その上大きな青い球が乗っているものがあり、それはウォーターサーバーである。
上の球が水魔法で作った水風船みたいなもので、前世のデカいボトルより軽い。
さっき窓から車っぽいものが通行したのも見かけた。
とにかく、現代知識チートはまったくだめみたい。
もう、運に身を委ねるしかないのか。
なんも考えられなくて、僕は休憩室のテーブルに倒れ込んだ。
倒れ込んでいて、僕の目線がテーブルにある雑誌に注意した。
雑誌の表紙に魔法に関するものが書いてある。
魔法か、すごい魔法使いになって、両親みたいに冒険者になるのも悪くないかもしれない。
確かに僕の魔力には相当な数字があるよね。
でも、その命中値では、なんにも当たらないよな。
狙いが必要ない魔法があったらいいよね。
うううううう
僕は雑誌をめくって、そこにヒーラーさんの記事がある。
その記事を読んで、一つ考えがあった。
治癒魔法がほとんどキャスト系魔法で、どう見ても狙いが必要なさそうに見える。
小さい頃にファイアボールの事件以来、二度と魔法を使わないようになったので、実際その命中値がどこまで影響するか、ヒーラーになれるかどうかよくわからないんだ。
ちょっとだけ、非攻撃系キャスト魔法を試すかいがあるかもしれない。
「浮遊」
僕はテーブルの雑誌にキャストタイプの魔法を掛けて、手のひらにも魔法の反応があった。
でも、雑誌はそのままテーブルの上に置いてある。
キャストの魔法もうまく発動できないのか。
あれ、なんか部屋がちょっと暗くなったようだ。
僕は魔法灯がある天井を仰ぐと、信じられないものが目に入った。
魔法の灯が正常に照らしているが、浮いているウォーターサーバーが光線を遮っている。
「えええええ」
やばい、雑誌を浮かせなくて、代わりにウォーターサーバーを浮かせた。
それに、ちょっとだけ浮かせようとしたのに、あんなに高く飛ばせるつもりはなかったよ。
このままいずれ落ちることになる。
いやだ、この綺麗に掃除した部屋をめちゃくちゃにしたくないよ。
無論、ウォーターサーバーも壊したくない。
職人さんが一生懸命作ったものを壊すなんて、失礼なんだよ。
「どうしたの、エリさま、え」
慌てそうなシルビアさんも休憩室に入ってきた。
そして、現状を見たシルビアさんは、すぐに驚いた顔をした。
「ごめんなさい。た、助けて」
失敗した僕は、助けを求めることしかできない。
「エリさま、落ち着いて、よく聞いて」
「うん」
「浮遊魔法は二種類あって、一つは発動する前に軌道を決める初心者の方法。もう一つは浮き高さと方向も自由に操れる。エリさまはその浮遊魔法の繋がりを解除しない限り、まだ挽回の可能性がある」
「つまり、それをゆっくり地面に戻らせるってこと」
「その通り、集中して、ゆっくり地面に導いて」
僕は天井に浮いているウォーターサーバーを見て、頭が浮遊の魔法に集中して、地面に降下させる。
浮いているウォーターサーバーがすこしずつ僕の魔法に反応して、徐々に地面に戻っていく。
良かった、危ないところだった。
また、問題を起こさないように、魔法の繋がりを解除しておこう。
「解除」
降りたウォーターサーバーがちょっと光って、そうしたら水の球の中の水が弾け飛んだ。
休憩室と服もすべてずぶ濡れになった。
「ご、ごめんなさい」
どうやら、魔法の繋がりを解除するより、水の球の水保つ機能解除してしちゃった。
居心地のいい部屋をめちゃくちゃにしちゃった。
凄い迷惑をかけて罪悪感が湧いてくる。
さらに、皆の可愛い服も汚れちゃった。
心も痛む。
「大丈夫ですから、私ちゃんと指示していないから」
そうしたら、シルビアさんと僕はギルドの職員用の風呂で身を整えて、また仕事に戻った。
水が玄関まで流れ込んだので、午後中接客しながら、モップで水を拭き取っていた。
やはり、これから、可愛い受付嬢として、人を魅了するしかないんだ。




