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異世界勇者の親友役になりました  作者: 桶丸
異世界学園編
18/157

生徒会長は分かる人

 平穏。

 変わった事も起こらず、穏やかな事。

 ラブコメの主人公は平穏を求めつつも、いつも修羅場に身を置く宿命にある。

 しかし、親友は違う。

 親友は主人公が困っている時に、アドバイスをくれるだけの、モブ的な存在だ。

 よって、親友は主人公とは違い、常に平穏の中で生きている。

 そのはずなのに……


「戦争をしましょう」

「……はい?」


 リズの一言で、俺の平穏が崩される。


「リズ、君は何を言っているのかな?」

「あら、聞こえなかったの?」


 リズが鉄球を取り出す。


「戦争を開始しました」

「問答無用か!」


 リズが俺に向けて鉄球を投げてくる。

 その瞬間、辺りの人間達が一斉に戦いを始めた。



 さて、突然の展開に困っている人の為に、少しだけ補足をしておこう。

 時間は放課後の訓練時間。

 いつものように、俺とヤマトは和やかに各々の訓練を行っていた。

 しかし、とある人物が現れた事により、事態は進行を始める。


「ミツクニさーん」


 最初に現れたのは、天使メリエルだった。


「今日も訓練ですか?」

「ああ、日課だからな」


 メリエルが現れて数日。彼女は毎日のように俺の前に現れて、いつの間にかラフに話せる間柄になって居た。


「メリエルはどうしたんだ?」

「はい。少々暇でしたので、訓練のお手伝いに参りました」


 この一言。

 これが、全ての元凶だった。


「メリエルは死の天使だろ? 手伝ったら訓練じゃなくて、ただの蹂躙に……」

「行きますよぉ!」


 メリエルが翼を開き、辺りに羽根を散らせる。

 次の瞬間、その羽根からビームが発生して、辺りを蹂躙した。


「おおおおおおお!」


 必死にビームを避ける俺とヤマト。

 何とか全てのビームを避けきると、メリエルは笑顔で拍手をしてくれた。

 そして、ここで第二の刺客が現れる。


「楽しそうな事をしているな」


 言葉と共に現れたのは、魔族第三師団の団長、ジャンヌ=グレイブ。


「ミツクニ、私も参加させてくれ」

「いや、これは訓練じゃなくて、一方的な蹂躙だから……」

「何をしていらっしゃるんですか!」


 更に現れた第三の刺客。

 和剣士、ミフネ=シンドウ。


「訓練場をこんなにデコボコにして……って、死の天使!?」


 メリエルの存在に驚くミフネ。

 そう言えば、まだ会って居なかったな。


「ど、どうして天使が地上に……」

「細かい説明は後だ。今はこの蹂躙を何とか……」

「にゃーん!」


 第四の刺客。猫耳娘、テト=キャッツ。


「何か賑やかだニャー! 私も混ぜてニャー!」

「いや、これは蹂躙が……」

「よう、面白そうな事してんじゃねえか」


 第五の刺客。ヤンデレ、ザキ=セスタス。


「喧嘩ならあたいも混ぜろよ」

「だから、蹂躙が……」

「みつくにー!」


 第六の刺客。魔王、ミント=ルシファー。


「おすもうだー!」

「相撲じゃなくて蹂躙……」

「あら、楽しそうね」


 第七の刺客。リズ=レインハート。

 彼女が来た時点で、俺は全てを諦めた。


「こんなに戦闘員ばかりを集めて、世界でも滅ぼすつもりかしら?」

「そうだな。もう少しで滅ぶかも知れない」

「それは困るわ。私達は世界を救う為に、頑張っているのだから」


 それを聞いた時、俺は少しだけ事態の収束を期待する。

 しかし、その淡い期待は、やはり期待でしか無かった。


「そういう事で……戦争をしましょう」


 その一言で、結局戦争が始まった。



 訓練場の中で暴れまわる猛者達。

 ただの猛者なら楽観的に見て居られるのだが、ここに居る者は、全員が一騎当千の人物。中には一人で世界を崩壊させるレベルの猛者も居る。

 そんな中に、異世界出身の一般人が混ざってしまったら……当然こうなる。


「おおおおおお!!!!」


 躱す! 躱す! 全て躱す!

 躱す事でしか生き残れない!!


「ミツクニ君! 大丈夫!?」

「大丈夫じゃねえよ! ヤマトが居なかったらとっくに死んでるっつの!」


 勇者様が守ってくれているおかげで何とか生き残っては居るが、いつ死んでもおかしくない状況だ。

 つか、戦っている方々! 俺の存在を何だと思ってるんだ!?

 モブなんだぞ! 簡単に死ぬんだぞ!


「ヤマト! このままじゃ不味い! 一度ここから離脱して……!」

「無理だよ! 明らかにミツクニ君を狙っている人が何人か居るし!」

「ですよねぇぇぇぇぇぇ!」


 リズ! ミント! メリエル!

 お前等は本当に揺るぎねえな!


「ええい仕方ない! こうなったらフランから貰った、世界破壊爆弾を……!」

「ミツクニ君!? それは絶対に使っちゃダメな奴だよね!?」

「俺だって分かってるよ! だがしかし! どうせこのまま世界が滅ぶのならば……!」

「まあ待て」


 俺達の横に突然現れた女子。

 青黒髪のロングヘアー。凛とした瞳。左腕のきらびやかな腕章。

 この人は、もしかして……


「どんな戦にも勝機はある。このシズノ=アメミヤが、君達の事を手伝ってやろう」


 間違いない! 彼女は勇者ハーレムの一角!

 そして、高等部の生徒会長だ!


「ヤマト、まずはミフネを止めろ。お前が適任だ」

「分かりました!」


 シズノの命令を受けて、ヤマトがミフネに突進する。その瞬間にリズが鉄球を投げて来たが、シズノが片腕でそれを受け止めた。


「ミツクニ。お前はミントだ」

「魔王だから無理です!」

「魔王の前に、お前の娘だろう?」

「言われてみれば!」


 大きく息を吸い込み、ミントに向かって叫ぶ。


「ミントォォォォ!」

「なにぃ?」

「相撲を止めて俺の所においでぇぇぇぇ!」

「はぁい!」


 戦闘区域をサラリとすり抜けて、俺の胸に飛びついて来るミント。

 本当に可愛い奴だ。絶対嫁にはやらんぞ。


「魔王確保!」

「良くやった。次はメリエルだな」

「合点!」


 ミントを抱えたまま、空を飛んで居たメリエルに向かって叫ぶ。


「メリエルゥゥゥゥ!!」

「何でしょうかー」

「今すぐ蹂躙を止めないとぉぉ! 今夜の師匠との晩酌は無ぁぁぁぁし!」


 それを聞いたメリエルが青ざめる。

 メリエルは翼をしまい、寂しそうな表情でトボトボと歩いて来た。


「天使確保!」

「良くやった。ヤマト、次はテトだ。ミフネと連携して気絶させろ」


 シズノの指示に頷き、二人がテトに向かって走り始める。

 しかし、こうして見ていると、俺の仲間より勇者ハーレムの方が、止めるのが大変そうだな。


「さて、残りはリズだが……」


 シズノが顎に手を当てて小さく唸る。


「彼女はこの中で一番危険だ」

「流石は生徒会長! 分かっているぜ!」

「しかし、弱点もある」


 突然シズノがこちらを向き、俺を地面に叩き付ける。


「がはっ……!」


 そして、間髪入れずに詠唱して、召喚した光の刃で俺の胸を貫いた。

 ……否、貫かれたと思った。


「何をしているのかしら?」


 胸に描かれた魔法防壁。どうやら、リズが放った防御呪文のようだ。


「お姉ちゃん、死にたいの?」


 シズノの首元に突き立てられているのは、ミントの鋭い黒翼。


「まあ、死にたくなくても殺しますけれど」


 金色の翼を最大に広げて、上からシズノを見下ろすメリエル。

 ヤバい! こいつら目がマジだ!


「ふむ。事態は収まったようだな」


 突き立てていた光の刃を消して、凛と立ち上がるシズノ。

 その瞬間、三人の殺気が一気に高まる。


「待て待て! お前等少し落ち着け!」

「大丈夫よ。落ち着いて殺すから」

「じゃあ落ち着くな!」

「みつくにー。このお姉ちゃん殺して良いよね?」

「駄目! 殺し絶対に駄目!」

「私の仕事の邪魔をしないで頂けますか?」

「そうだけど! 今日の所は勘弁してください!」


 立ち上がってシズノの前に立ちはだかる。


「とにかく駄目! 頼むから!!」


 腹の底から叫び、目で必死に訴える。

 やがて、三人は殺気を収めて、不機嫌そうな表情で刃をしまった。


(……狂気の沙汰だな)


 俺は自分でも気付かぬうちに、最凶の諸刃の剣を手に入れていたようだ。

 やっと場が落ち着きを取り戻したので、一息ついてシズノの事を見る。


「助けてくれて、ありがとうございます」

「気にするな。丁度お前達の事を調査をしたかった所なんだ」


 口だけで答えて、周りを見回しているシズノ。その姿を見るに、本気で観察しに来ただけのようだ。


「随分と個性的な人材が揃ったな」

「まあ、何と言うか、成り行きと言うか……」

「ふむ。私もこれに加わるのか」


 それを聞いて、目を丸めてしまう。


「会長、もしかして……」

「ああ、知っている。会長だからな」


 まさか会長も、ハーレムリストを操作出来る系の人なのか?


「流石にそこまでは出来んよ」


 ふっと笑って俺を見る会長。

 なるほど。リストから名前は消せないが、心が読める系の人か。


「とにかく、戦力は把握した。私は私の仕事を全うするとしよう」


 それだけ言って、ヤマトの方へと向かう。

 どうやら、会長は無事に勇者ハーレムに入ってくれたようだ。


「気に入らないわね」


 リズが不機嫌そうに会長を睨む。


「そう言うなよ。自分から勇者ハーレムに入ってくれるんだから」

「入るというより、入ってあげるという感じだわ」

「……それは否めない」


 世界を滅ぼしかねない戦争を、いとも簡単に止めた女子。そんな人物が、勇者ハーレムごときに翻弄されるはずもない。

 とにかく、この個性的な人間達の手綱を引けそうな人がハーレムに入ってくれて、俺は心の底から感謝した。

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