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番外編・前日譚-予期せぬ遭遇(以前、他サイトに投稿していたもの)

ベリーズカフェに投稿していたもの。これが一番古いです。

 フィーネ(16)はようやく学園へたどり着いた。

 事の起こりについては、長々と説明すると眠くなるので今は話さないが、ようやくここまで来たのだ。

 親は自宅から学校に通わせたかったようなのだが、どうしてもフィーネはこの学校に通いたかったので、説得するのも大変だったし勉強も死ぬほど大変だった。


 文系科目が、である。

 どうしてこの答えになるのか、何故この答えにならないのかを呻きながらどうにかクリアしたのだ。 

 そして頑張ったおかげでこの学園に合格。

 寄宿舎に入る事になるが、それが私には不安よりも期待が大きい。それに、


「びっくりするかな、カイ」


 幼馴染の名前を呟いて、くすくすフィーネは笑う。

 村に戻ってきた時、遠くから私を見ていたカイは、これでもうフィーネから逃げ回れないのだ。

 全く昔は私よりも小さくて可愛くて大人しいからフィーネが守ってあげていたというのに、ここ何年かは私から逃げ回ってばかりなのだ。

 小さくて可愛かったカイ、そういえば、


「気にしていっっつも牛乳、飲んでいたものね」


 思い出し笑いをして、再びフィーネは見上げた。

 アリシア魔法学園。

 淡い恋心を自覚しないフィーネは、一度背伸びをして学園の門をくぐったのだった。






 寒気がして、カイは周りを見回した。


「何だろう、物凄く嫌な予感がする」

「どうした、カイ、顔色が悪いぞ?」


 そう寮の同室者、バードが言う。それにカイは首を振り、


「いや、多分気のせいだと思われる」

「フラグ立てるなよ……

「そんな程度で何か有ってたまるか」

「はは、それよりも新入生で可愛い子いないかな」


 また始まったその話に、カイは深々と溜息をついた。


「お前の頭には女の子の事しかないのか」

「だって彼女欲しいし。そしていちゃいちゃしてみたい」

「興味がない」


 バードの言葉に、さくっと否定の言葉をカイが答える。

 そんなカイに口を尖らせたバードが、すぐににやりと笑った。


「そういえば、カイは故郷に幼馴染の女の子がいるんだよなー」

「……興味がない」


 答えるまでに間があり、それに気づいたバードがにまにまする。


「いいのかな? もしかしたらここまで追ってくるかもしれないぞ?」

「……あいつは、勉強苦手だったから」

「でも数学と剣術、魔法科目は得意だったんだろう?」

「……でも、あいつは来ない。……来て欲しくない」


 いつもあまり周りの事に関心を持たず、どちらかというと本の虫のカイが感情を露にする。

 それにバードは興味を持って


「どうしてなんだ?」

「……なんでそんなに聞き出そうとするんだ」

「いやなに、いつも周りにあまり興味のないカイが珍しいなと……あれ?」


 そこで、どたどたと誰かが駆け上がってくる音がしたのだった。

 階段を駆け上がったこの部屋ね、といった元気な少女の声が聞こえて、


「一緒の学校行くって行ったのに勝手にこんな所に来て……よーし、ていやー!」

 

 大きな音を立てて扉を開いた。

 現れた少女に、カイがさあっと顔を青くした。


「フィーネ?」

「そうよ、カイ、久しぶり」

「……なんでここにいる」

「ここの試験に受かったから」


 自信満々に腰に手を当てて仁王立ちするフィーネ。

 それを見てカイが頭が痛そうに、額に手をやった。



 現れたフィーネにカイは絶望的な気持ちになる。

 ここに来るはずのないというか、ここにいる誰かにあのフィーネの“特別”を知られたならと不安を感じていたフィーネが、ここにいる。

 カイは頭痛を覚えながら問いかけた。


「どうしてここに来た」

「カイに会いにに決まってるじゃない!」


 そうフィーネは胸を張る。

 そんなフィーネはカイを見て、大人びたものの相変わらずカイは大人しくて、守ってあげないといけない感じだとフィーネは思う。

 そんな雰囲気を敏感に感じ取ったのか、カイは、


「僕は、フィーネがいなくたってやっていける」

「なによ、昔は蛇を見るだけで泣いていたくせに。なのに勝手にこんな所行っちゃうし」

「……別に、フィーネには関係ない」


 カイはそう答えてそっぽを向く。

 そんな態度のカイに、フィーネは頬を膨らませて、


「久しぶりに会った幼馴染に、それは酷くない? 全然村には帰ってこないし」

「……忙しかったんだよ。それに村には帰っていたよ」

「知っているわ。でも遠くから見ていただけで会いにこないのよ、私に」


 それにはカイは答えない。

 だって、こっそり村に戻ってからフィーネを見ていたのがばれていたとは思わなかった。

 ばれていないと思っていたのに。

 でもカイの事なんて忘れてしまったように、他の子達と遊んでいたのは何なんだよと、心の中でカイは毒づく。

 と、そこで。


「はじめまして、フィーネさんですよね?」

「あ、はい。どちら様ですか? というかなんで私の名前を?」

「あ、俺は、カイの同室者で、バードといいます。フィーネさんの事はカイから聞いていますよ」

「そうなんですか。カイは私の弟みたいなものですから」


 それを聞いた瞬間、バードが噴出した。

 しかもお腹を抱えて笑い出し、フィーネは何がなんだか分らない。

 そんなフィーネにバードは、


「いやー、そうですか。所でフィーネさん、男子寮は、女子禁制だって知っていましたか?」


 それと同時に声がする。


「女子が来たってここか?」


 そんな誰かの声にバードはほのぼのと、


「捕まると、減点されるから早めに逃げた方が良いよ、フィーネちゃん」

「わ、分ったわ。またね、カイ」


 カイは返事をしなかったが、フィーネはそのまま間部屋を突っ切り窓を開けて、窓から飛び降りた。

 ここは三階なので、魔法を使う。

 そして軽やかに地面に舞い降りてフィーネはそのまま逃げ出す。

 そんなフィーネを見送り、バードは面白そうにカイに問いかける


「弟、だって?」

「……そうとしか思えないんだってさ」


 ふてくされたようにカイは答えたのだった。







「全くもう、カイはどうしてこんなに可愛くなくなっちゃったのかしら」


 フィーネは歩きながら独り言をつぶやく。

 昔よりは、背は高くなったような気がするカイ。

 ちょっと見ないうちに大人びたカイ。

 そして、もうフィーネなんて要らない、とでも言うようなカイ。


 そう思うとフィーネは胸がちくんとした。

 それになんでだろうと首をかしげるも、すぐに目の前に見えてきた女子寮に意識が移る。

 白くて少し古い、大きな建物。ここの三階がフィーネの部屋のはずだった。

 そこで……空から人が降ってきたのだった。

 




 空から降ってきたのは一人の少女だった。

 年は同じくらいだろう。

 ピンク色の髪の女の子。

 同じ制服だからフィーネと同じ学年だと思う。

 そんな彼女の茶色の瞳とフィーネは目が合った。

 目の前に舞い降りた彼女は、フィーネに、


「もしかして、同室のフィーネちゃん?」

「は、はい、えっと貴方は?」

「ナナ。この時期に入ってくるのって凄く少ないし、今年は女の子一人だったからすぐ分ったよ」 

「そうなんだ。えっと、よろしくお願いします」

「うん、こちらこそ。でも、先に謝っておくね、ごめん!」


 何の事かと聞き返そうとしたフィーネは、次の瞬間大量のお菓子がある部屋から噴出したのだった。

 轟音共に、沢山のお菓子が部屋から噴出してくる。

 パラパラと降ってきてフィーネの頭にもいくつか当たって痛かった。

 けれどそれよりも噴出してうねるあのお菓子の山の方にフィーネは目を奪われて、


「何あれ」

「ごめん、フィーネちゃん。うっかり圧縮魔法を開放したら、解除に失敗しちゃって」

「もしかして、あそこが私の部屋?」

「うん」

「どれくらいで終わるの?」

「多分もうすぐ……終わったかも」


 そこで降って来るお菓子が止まる。

 それを見てフィーネは太陽の位置から時間を確認して、何時ごろ暗くなるかを計算して、


「……掃除、手伝うね」

「ありがとう。お礼にあるの好きなお菓子食べちゃっていいから」

「本当 もう一度圧縮出来ないの?

「私はその魔法が苦手で」

「じゃあ、私がする!」


 フィーネが答えると同時に小さく魔法を使う。

 それと共に、フィーネの手のひらに、ふわりと透明な球状のものが集まり、その中にみるみるお菓子が吸い込まれていく。


「出来たっ、はい。開放した時に、少ししか出ないように部屋を分けておいたから、もう今回みたいな失敗はないと思うよ」

「フィーネちゃん、すごいね。高等魔法じゃない!」

「うん、頑張ってやっていたらここまで出来るようになったんだけれど、他の高等魔法はまだまだで。やっ


ぱり剣に魔力を乗せてふるう方がいいかも」

「へー、剣なんだ。でも高等魔法を覚えたって事は、やっぱりフィーネちゃんも、都市で上級魔法使いにな


りたくてここに来たの? 確かに玉の輿目指してそれを目指す子もいたよね」


 そういった事情に疎いフィーネは、へぇ、そういうものなんだと思ってから首を振り、


「ううん、幼馴染を追いかけてここまで来たの」


 その言葉に、ナナが目を輝かせた。


「恋バナですか!」

「え? 違う違う。幼馴染の子がいて、なんというか私の弟みたいというか」

「ほうほう、それで」

「弱かったしいつも守ってあげない途と思っていたのに、勝手にここに来て」

「ええ! そうなんだ」

「やっぱり嫌われちゃったのかな。さっきも寮に忍び込んだらそっけなかったし」

「そうなの? うーん」


 ナナがちょっと困ったように唸ってから、


「その子の名前、なんて言うの?」

「カイ、だよ」


 ナナが目を大きく開いた。


「それは学年トップで、クールと名高いカイ君ですか? そうだよね、同じ名前の人いないし」

「多分。勉強できたし」

「そういえば、故郷に幼馴染の子がいるとか……」


 ついでに、その子かどうか知らないが、好きな子がいるらしい。

 それで告白してきた子を断っていたはず。

 それを思い出してナナは、ニヤニヤしそうだったが、そういえばこのフィーネは先ほど、


「カイ君、弟みたいなな感覚なの?」

「うん、何で聞くの?」


 自覚のないフィーネに、これは、なんという面白そうな話とナナが心の中で笑ったのだった。


  




 フィーネの“弟”の様なという言動も含めて、ナナは楽しくなる。

 これは近くでじっくりと観察せねばと思っているナナ。

 けれどそんな事を考えているとは口には出さず、


「フィーネちゃん、お友達になろう!」

「え、あ、はい。よろしく」

「授業は明日からだから、色々場所も案内するよ。所でクラス何処?」

「1-水晶組かな?」

「あ、同じだね。あとで案内するよ」

「ありがとう、道に迷っちゃいそうだから助かるかも」

「だよね、ここ大きいし。ちなみにそのクラス、カイ君も一緒だよ」

「本当!」


 そんなフィーネの様子に、ナナは、これは脈アリじゃないかな、と思いつつ、


「ちなみに、カイ君人気があるんだよ」

「そうなんだ。確かに見た目はいいものね。頭もいいし」

「うんうん

「でも体が弱いし、蛇を見たら逃げ出すし」

「……フィーネちゃん、蛇を見たら私も逃げるよ?」

「そうなの? 面白い玩具なのに」


 クエッションマークが最後に見えるそのフィーネの言葉に、ナナは否かだと身近だからかな、とか、この学園でも蛇を見たという話も聞いた事があるので、ナナはその時はフィーネにお願いしようと決めた。

 でも、ちょっと感覚的にこの学園内では浮いてしまうかも、良い子みたいだしちょっとはサポートして近くから様子を観察させてもらおうとナナは瞬時に考え、


「とりあえず、一度部屋に戻って荷物を置いてこよう。それから案内するね、この学校」


 そう、フィーネの発言を流して、ナナはフィーネと寮に入って行ったのだった。







 カイは嫌な予感を覚えていた。


「当るな、当るな……」

「どうしたんだ、カイ、深刻そうな顔をして」

「バード……嫌な予感がするんだ」

「昨日の子が、このクラスに来るんじゃないのか? フィーネちゃんだっけ? カイ、嬉しいだろう?」

「止めてくれ」


 切実そうに言うカイに、冗談だよと隣の席のバードは笑う。

 そしてそのすぐ後ろの席のナナはそれを聞いていて面白がっていた。

 ちなみのそのナナの隣には新しく来た子用の席が空いている。

 そしてそこで、新入生が現れたのだった。


「はじめまして、フィーネです。そこにいるカイの幼馴染です!」


 カイが顔を真っ青にした。

 そしてざわめきと共に、痛いくらいの女子の視線と好奇心に満ちた視線がフィーネに降り注ぐ。

 とそういった自己紹介の後、フィーネは席に着くと、ナナが手を振る。

 それに会釈して、フィーネはそのまま授業を受ける。

 一生懸命ノートに写すフィーネ。

 そんな普通に授業が終わり、フィーネは休み時間に入り、背伸びをする。

 そして、そこでナナに話しかけようとしたフィーネに、三人組の女の子が現れる。


「フィーネさん、ちょっとよろしいかしら」


 リーダー格らしいの女子が、声をかけてきたのだった。






「何か御用ですか?」

「はじめまして、私はミアといいます。単刀直入に聞きますが貴方は、カイ様の事をどう思っているのですか?」

「弟?」


 その言葉に遠くで聞いていたカイが、がっくりと肩を落とした。

 そしてその様子に気づきながら、ミアが、


「なんという……貴方はあまりにも物事を分っていないのですわ!」

「貴方は一体何なのミアさん?」

「ミア、でいいわ! 私達はカイ様の親衛隊です!」

「親衛隊?」

「ええ、憧れのカイ様に告白して敗れながらも、諦めきれず見守ろうとするそんな一団ですわ」

「そうなんですか。そんな方が、一体どうして私に」


 確かに幼馴染だが、それだけだしとフィーネは思う。

 だがミアは深々と溜息をついた。


「それは、あのカイ様が貴方の事を好きだからですわ!」


 ミアがそう叫んでカイを指差す。

 それを聞いたカイが、もう何もかも投げ出して死にたい気持ちになりながら机にごんと頭をぶつけたのだった。





「カイ様が貴方の事を好きだからですわ」


 自信たっぷりに告げるミア。

 ただしそれを聞いたフィーネといえば何の冗談だろうと思いつつ、


「流石にそれはないよ。だって、村に戻って来た時、私には会いに来なかったというか、遠くから見ているだけだったし」

「ええ! 影からフィーネさんの事をこっそり覗いていたのです!

「でも、ずっとつけていたならいざ知らず、何で貴方が知っているの?」


 それは単純な疑問だった。

 あの村は都市からとても離れていた場所である。

 なのにまるでずっと見ていたかのようにミアが話しているのだ。

 そこで、にたーとミアが笑った。


「カイ様は学園トップ、それこそこの学園のホープですわ。その安全を見守るのは当然のこと。だからその程度されるのが当たり前です!」

「……聞いてないよ」


 ミアのその話を聞いて、カイが顔を蒼白にさせながら呟く。

 そんなカイにミアが、


「そしてその監視をして、私達はある結論に達しました。つまりフィーネさん、カイ様は貴方が好きなのです」

「え、えっと、そうなんだ」


 断定して言うミアに戸惑うフィーネだが、恋愛感情の好きではないとフィーネ自身は分かっているので、つまり、



「でもそっか、嫌われたわけじゃないんだ」


 フィーネがそう呟いて笑う。

 その声と表情を遠めで見て、カイは、フィーネを悲しませてしまったと気づく。

 自分の恥ずかしさから、大好きなフィーネを困惑させてしまったと、ほんの少しカイ嘆いていると、そこでミアがびしっとフィーネを指差した。


「そんな曖昧な態度では困るんですわ!」

「何が?」

「貴方が、カイ様と恋人同士になる気があるのかどうかです!」

「ええ! いや、え? だって……カイは私の事を恋愛感情で好きじゃないと思うよ?」


 煮え切らないフィーネの様子に、ミアが、


「その優柔不断な態度がいけないのです! 女ならすぱっと決めなさい!」

「ええ! む、無茶だよ、そんな急に……」


 その様子にミアは、フィーネがまだ恋心の良く分らない様子だと気づく。

 そもそもカイがフィーネに恋心を抱いていないと確信しているかのように見える。

 幼馴染だったという過去の関係が影響していると気付いたミアは、まずフィーネに自覚させるために、 

 

「分ったわ! 良いでしょう、猶予を差し上げます。10日。その範囲できちんと答えを出してくださいませ。以上」


 そう告げてミアが去っていった。それを見送るフィーネは、


「恋愛って、猶予期間てあるものだったっけ」


 そう呟き、カイはといえば自分の席で、涙ながらにもう勘弁してくださいと思ったのだった。





 お昼は食堂があり、そちらで食事をとる事になった。

 朝食を食べた場所と同じなので、ナナと一緒にフィーネは食事をとろうと話はしていたのだが、そこでカイがすくっと席から立ち上がる。

 そのまま一人で教室からでようとするカイだがそこで、


「カイ、一緒に食事をしようよ」

「……一人で良い、って、わぁあああ」

「もう、相変わらずカイは引っ込み思案なのね。大丈夫よ、私がついているから!」

「べ、別に一人で……」

「カイは私と一緒にご飯を食べるのが嫌なの?」


 フィーネがじっとカイを見つめた。

 そんなフィーネにカイはすっと顔をそむけるがすぐにフィーネに両ほほを掴まれて正面を向かされて、


「それで、私と一緒が嫌なの?」


 じっと見つめるフィーネの至近距離の顔。

 それにカイは真っ赤になりながらプルプルと震えて、


「そ、そういうわけでは……」

「よし、じゃあ一緒に食べよう。行きましょう!」


 力なくうなだれるカイの手を引きながらフィーネが歩き出す。

 その様子を見ながらナナは、


「面白いことになってきたわ」

「そうだね、俺も人事のように楽しもうかなって」


 バードのその言葉にナナも更に楽しそうに笑って、二人揃ってフィーネを追いかけたのだった。





 本日のランチAをフィーネ達四人が選んだのはいいとして。

 ハンバーグの付け合せに、ゆでたアスパラガスが添えてある。

 それをフィーネが見て、


「カイはね、アスパラガスも苦手なんだよね。私が食べてあげる」

「……いつまでも子供扱いするな。アスパラガスくらい食べられる」


 そう言って口にするカイ。

 少し涙目になっているような気がしたが、それを咀嚼して飲み込み、


「どうだ、僕はもう昔と違うんだ」

「本当だ、凄いね」

「当たり前だ」


 そう自信満々にカイはフィーネに言ってのけた。

 そんな儀式? があったのはいいとして、そこでナナが、


「そういえばフィーネちゃん、得意魔法は何? 圧縮魔法は使えるみたいだけれど」

「ええ! フィーネちゃん、その魔法が使えるんだ」


 バードが驚いたように声を上げて、カイが目を細める。

 そこでフィーネが恥ずかしそうに、


「うん、ほら、魔法の試験がここではあるから、なにか良い魔法はないかって調べて……本当は剣の魔法が使えればよかったんだけれど、そういった剣術関係の魔法は試験科目にはなくて、自分にできそうなものを探して行ったんだ」

「わー、それもこれも全部カイに会いに行くため?」

「うん、そうだけれど?」


 それを聞いていたカイがハンバーグをやけ食いし始めた。

 これもう愛だとしか言いようが無いような気もするのだが、フィーネに自覚がないので更に話がややこしくなってくる。

 けれど、カイ自身がまだそれを言うつもりもなくフィーネも気付いていないこの状態では、恋人同士になるような理由も何もない。


「何か切掛があればいいのかしらね」


 ふとナナが呟くのを聞いてバードはあることを思いついたのだった。






 折角だから、お昼休みにかくれんぼをして遊ばないか、とバードが提案した。

 カイは僕は本を読みに行くと言って、お断りしていたのだが、そんなカイをフィーネが逃がすはずもなく、食事が終わった後、


「さあカイ、行くわよ!」

「ぼ、僕はいかないって言っているのに、うわぁあああ」


 襟首を掴んで連れて行くフィーネ。

 そんなフィーネを見てバードが、


「うんうん、こうやって交友の時間を増やしていけば、いずれカイも音をあげるし、フィーネちゃんも自分の気持に気づくだろう」

「そうだといいね。でもくっつかまでが見ていても楽しいからな~」

「それには同感ですが、あのカイがデレデレになる所も見てみたいなと」

「それは……面白そうですね」


 そう二人して、ナナとバードは笑う。

 そこでフィーネが戻ってきて、


「ナナ、バード、私来たばかりだから学園内は詳しくないから、何処でかくれんぼをしたらいいのかわからないんだけれど」


 それを言われてナナとバードは、フィーネに向かって走っていったのだった。






 仕方がないので参加することになったカイだが、フィーネがやりたいといったのだからフィーネが鬼だと決めつけられた。

 それにフィーネは頬を膨らますが、それが飲めないならダメだとカイはフィーネに言う。

 フィーにはそれに不満そうにわかったと答えた。

 そしてカイはフィーネに更に、


「絶対に寄り道するな。かくれんぼで隠れている僕達を探せ、いいな」

「私はいつだってカイの声が聞こえる場所にいたいな。……まっ先に見つけてみせるわ!」

「……見つからないように逃げてやる」


 カイがそう告げて駆け出す。

 フィーネが数を数え始めるのを聞きながらカイが走って行くのにバードとナナが追いついて、バードが、


「何でフィーネちゃんが鬼なんだ? 自分をフィーネちゃんに見つけて欲しいとか?」

 

 けれどそれにカイは少し黙ってから、


「ここは魔法の力が強い場所だから」

「? まあ、そうだな。だからこの学園が存在しているんだが」

「フィーネは特別なんだ。だから、消えてしまうかもしれないと僕は不安なんだ」


 それにバードは吹き出した。


「あんな印象的な子が消えるはずがないよ。カイって本当に……ぷうっ」


 こうやって話してもやっぱり皆、笑うだけだ。

 本気にされない。

 だから僕が、強くならないといけないのだとカイは思う。

 だって僕は絶対に見失いつもりもない、渡すつもりもない、守ると決めているんだ。

 そう心のなかで強く思いながら走って行く。

 そこでバードが、


「でもそんなに大事なら、もっとそばに居て仲良くしていた方が良いんじゃないか?」

「……今更、どうすればいいんだ。途中から気恥ずかしくなってまともに顔だって合わせられなくなったし」

「ここまで追いかけてきてくれたんだから、今度はカイの番じゃないのかな?」


 楽しそうに告げるバード。

 けれど素直になれないカイはそれ以上答えること無く黙ったまま別れたのだった。






 フィーネは数え終わったので背後を振り返ると何処にも彼らの姿がない。

 けれど、フィーネは笑う。


「私から逃げられると思わないでよね! 絶対捕まえてやるんだから、特に、カイ! 覚えておきなさいよ!」


 そう宣言してフィーネは走り始める。

 何故フィーネはここで宣言したのかと言えば……答えは単純だ。


「十しか数えていないんだもの。そんなに遠くにいけるはずがないわ。真っ先に実付けて、つぎはカイを鬼にしてやるんだから」


 そう思いながらフィーネは探しに行くが……。

 そよそよと風がフィーネのすぐ傍を通り過ぎて行って、何となくこっちかなとフィーネは歩いていく。

 そこで茂みの葉っぱが不自然に動いている。

 ここに誰かいる、フィーネはそっとうえからそこを覗きこむと、


「あー、見つかっちゃった」

「ナナだ! うう、真っ先にカイを見つけようと思ったのに」

「残念でした。でもよく分かったね、私がここにいるの」

「だって持っていた木の枝が揺れていたし」


 そこでナナは自分の持っている枝を見る。

 揺らしているつもりはなかったのだが、気付けば震えていたのだろうか。

 まさか持っていた木の枝の所だけが風で揺れたわけではあるまい。

 そう思って、ナナはフィーネと一緒に他の二人を探しに行ったのだった。





 途中カイの親衛隊だと名乗ったミアとフィーネ達は会うが、


「カイ様ならあちらに行きましたわ」

「ありがとう!」


 そう告げて走っていくフィーネを見送りながらミアは、


「カイ様、もう行きましたわ」

「助かりました、ありがとうございます」

「いえいえ……ですが、どうして素直にならないのですか?」


 その問いかけにカイは少し黙ってから、首を横に振る。


「僕は、まだ言えない」

「言えないのには理由があるのですか?」

「……そうです」


 それを聞いてミアは少し黙ってから、


「離れて見ていたのも、ですか? 気になってしまうから近づけないという風に見えましたが」

「……僕は自分の気持ちくらいわかっています。だから、その時まで見守っていていただけませんか? そうでなければ……とても困ります」

「困る?」

「僕はまだまだ弱いですから。もっと強くならないといけないのです。フィーネを守れるくらいに」


 その答えにミアは何かを読み取ったようで、深々と嘆息して、


「分かりました。これ以上は手出しはしません。代わりに寮長である私が、こまめに彼女の様子を見ておきましょう。それでよろしいですか?」

「! そこまでして頂くのは……」

「構いませんわ。あの子がどういった秘密があるのかを私も知りたくなってきましたし。それにあの子……似ているんですよね」

「? 誰に?」

「姉です。無鉄砲で今は何処で何をしているのやら……心配ばかりかけさせられる。目を放すと何時も何処かに行ってしまうので困ります」


 その気持ちが良く分かるカイは、そうですねとミアに答えたのだった





 フィーネはバードを見つけたものの、カイは未だに見つけられずにいた。


「また見失っちゃう」


 フィーネは焦るように呟いて、探し回る。

 それを見ていたナナは、


「大丈夫だよ、お昼休みが終わるころには自分から出てくるだろうし」

「でも、カイ、体が弱いし大人しいし……私が守ってあげないといけないの」

「……でもね、フィーネちゃん。カイはフィーネちゃんが思っているほど今は弱くはないと思うよ?」

「うんん、今日だって私が連れ出さないと外に出てこなかったもの。カイには私が必要なの!」


 それにナナは困ったなと思いながらも、これ以上言ってもフィーネちゃんは認めないんだろうなという気がしたのでそれ以上は何も言わなかったのだった。





 誰かが嘆息するように、すぐ傍を通りすぎて行ったような気がフィーネはする。

 そして何となくっちかなという気がして走り出す。


「フィーネちゃん、急にどうしたの?」

「こっちにカイがいる」


 そう告げて走り出すフィーネ。

 そんなフィーネにバードとナナは顔を見合わせる。

 けれど放っておくわけにもいかず、二人もフィーネを追いかけていく。


 まるで手をひかれているようにフィーネは感じながら走る。

 この先に絶対、カイはいるのだと導かれるように。

 そこでミアにあうフィーネ。


「フィーネさん、カイ様を見つけられないのですか?」

「はい、何処かで見かけませんでしたか?」


 それにミアは黙ってから、別の事を口にした。


「先ほど申しました期間は、なしとします」

「? カイが私を好きだという?」

「ええ、だって貴方はまだお子様みたいですから」

「お子様って……」

「なので私が、これからこまめに様子を見に行きます!」

「……え?」

「私は寮長ですので、その程度の事は当然、可能ですわ。新入生ですし、ここの事を良くいらないでしょうし」

「え、えっと、遠慮します」

「これは決定事項ですのであしからず。では」


 そう、言いたい事だけ言って、ミアは去って行った。

 それをフィーネも含めて、バードもナナもなんだあれというように見て、そこでフィーネが気付いた。

 木の後ろに隠れる影。あれは……。


「カイ、見つけた!」

「……見つかったか」


 嘆息するようにカイは出てきたのだった。







 そしてもうすぐお昼休みが終わるからと教室の戻るフィーネ達。

 楽しそうなフィーネに、それはそれで少しくらいは嬉しいようにカイは思う。

 けれどそんな事を言う勇気もまだカイにはなくて。

 そこでフィーネが振り返る。


「これからも楽しみだね、カイ」

「……別に」

「よし、こまめに連れ出そうっと」

「やめてくれ……」


 呻くように呟くカイだけれど、フィーネはそんなカイを逃がすつもりもなく。

 こうしてフィーネがこの学園にやってきて大きな変化をもたらすのは、また別の話である。

 









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