ログ#10「狩猟」
グロウ族の若者達が木々から木々を蹴って跳んで行くのを見てヴァイスは感心する。
身軽なのは勿論の事、彼らは魔力を身に纏いながら蹴る瞬間にも僅かな魔力を木々に水滴が波紋を作るように放ち流していたからだ。
魔力、今分かっているのは超自然的なエネルギーだという事だけ。
物理法則は無視したエネルギー体系でこの惑星には有り触れていて無くては生存も危ぶまれる存在。
ヴァイスはその魔力を扱えてはいない。
獣道をゆくヴァイスはコンバットスーツを着用せずスミリ達から借り受けた長剣に薬莢等を必要としないハンドガンを手に森を歩いていた。
自警団達の気配もない。
カモフラージュ済みのドローンや人工衛星で彼らの位置も野生動物の場所も把握済みだがまだ懸念材料の魔法があるからだ。
見られている可能性を捨てず、ゆっくりと進む。
すると前方にヘラジカに酷似した動物が現れて銃を構えるが撃つ気は無かったためトリガーには添えずヘラジカが逃げるの待った。
ヘラジカは逃げ出したためスミリ達には言い訳や実際に見たため話のタネにはなった位に捉えていると不意に殺気を感じて後ろを長剣でガードした。
そこにはさっきまで存在さえ感じなかった男がヴァイスに攻撃をガードされて苛立つ姿があった。
◇◇◇
この惑星独自の発展を遂げた歪曲し複雑な形と刃の武器を両手に謎の男はヴァイスに襲い掛かってきた。
「侵入者………密猟かな?
現行犯で死罪だ!」
「チィっ!」
長剣で跳ね除けて銃を乱射する。
「正当防衛だぁコラぁ!」
「過剰じゃないかな?」
謎の男が幹を足場にヴァイスに跳んで通り過ぎた。
回避したヴァイスの薄皮や木々、地面を無数の切傷を作り透かさず二手・三手と攻撃は止まらない。
長剣で防御するも金属の反響する音が鳴るだけで近くの木々に切傷を発生させるだけ。
森を後ろ走りに攻撃を交わしながら好機を待つ。
そのうちに謎の男の一撃がビタッと直撃し木が倒れる。
大きな音と、その風圧で葉が落ちて野鳥や動物が去っていく。
ヴァイスがハンドガンで反撃、ハンドガンを警戒した隙に片方の武器を押し上げて宙に舞わせる事に成功する。
「まだまだだ!」
「なにぃ!?」
このまま刺し殺そうとした時、謎の男は残った片方の武器の先端に魔力で形成して伸ばした剣でヴァイスに追撃する。
後ろに飛び退けて避けるも長剣は斬られてしまい頬からも鮮血が飛び散る。
小さいうめき声が漏れて大木に追い込まれてしまう。
「終わったな………死刑だ。」
謎の男は追い詰めたヴァイスが息を上げていないのを不審に思いながらも武器を振り下ろした。
だがヴァイスはペンダントに触れる。
するとヴァイスと謎の男の間の空宙に剣が出現して刺さりそうになって男が避けるため後ろに跳ぶ。
瞬間、ヴァイスは大木を蹴り上に跳んで男の後ろを取ると武器を持っていない腕を掴んで背中に回して後膝部を蹴り最後の仕上げに押さえようとして男がニヤリと笑いボンッと柔らかい煙が爆発して逃げられてしまう。
「くそっ。
なんだったんだ。」
「今日は相子で見逃してやるさ。
じゃあね、バイバイ!」
「…………魔力……魔法か。」
斬られた頬を手の甲で拭う。
もう切傷は治っていて痕もなかった。
◇◇◇
少しの汚れを残して衣服の血痕等は除去して集合場所に向かう。
謎の男との戦闘の余波で死んでしまった野生動物を抱えてヴァイスは急がず歩く。
『追跡失敗しました』
「魔法……厄介だな。
スミリに使い方教わるか………屈辱だが……。」
『それが宜しいかと思います。』
「賛成されるとはな……。
よぉスミリ」
そこに頭上から降りてスミリが現れる。
「バレてたのか。
って………。」
「なんだよ」
「ヴァイスにスミリって呼ばれるの良いなって………。」
「ふん!」
「にしても大きいの捕まれたな。
ヴァイスはやはり強いな!」
「いや、こっちが狩られる所だったよ。」
「うーん?
そうなのか?
……血抜きしてるのか?」
「やってない。」
「なにしてるんだ!
まったくこれだからヴァイスはぁ!」
「何なんだ……。」
「皆が居る所で血抜きするぞ。
そんで皆で猟った獲物でパーティだ!!!」
スミリの宣言通りに血抜きやパーティは行われた。
騒がしく嬉々と宴会は続き、スミリ達に血抜きや毛皮や肉の捌き方を教わったりしていると夕方頃にヴァイス達は村に帰った。
そして村の門を通り過ぎ自警団の基地に向かうかスミリ宅に向かうかを話しているとスミリ達を囲うように村の戦士達が現れ槍や剣を向ける。
向けた先は自警団のメンバーというよりヴァイス1人に向けた物だった。
「なんだ?
なんだぁ!?」
「お前ら何のつもりだ!!」
「大人しくしろ!
暴れるなよ!!」
「静まれ!
邪魔をするなよ」
「抵抗するな。
大人しく来て貰おうか!!」
「いきなりなんだぁ!
ヴァイスは俺達の仲間だぜぇ!」
「いや、いい。」
「ヴァイス!?」
「大丈夫だ」
困惑する自警団員達とそれを制すヴァイスは前に出ると抵抗する事なく捕まり地面に勢いよく押し付けられ拘束されると連行されていった。
地下の牢屋に収監される。
冷たくヴァイスしかいない。
壁に寄りかかり情報をホログラムとして投映して復習する。
「村長は投票で決められ悪事でもしない限り亡くなるまで務める。
世襲制ではない。
グロウ一族はそれぞれの氏族的な役割で村の運営を分担。
剣の氏族、盾の氏族、弓の氏族、矢の氏族、馬の氏族、鞭の氏族、牙の氏族、槍の氏族がある。
今の村長は馬の氏族で弓の氏族の時期氏族長候補が隣村に嫁いだためその弟が現在の氏族長か………。」
『今回、少佐を陥れた面々の一覧です。』
「同じ氏族でも一枚岩じゃ〜あないのか。
面倒臭いな………。」
ガタッ、バタン!
誰かが倒れ地下に入る扉が開くと駆けてくる音が響く。
牢屋の前に現れたのはスミリだった。
「よぉ、来なくても良かったんだがな」
「ヴァイス!!
何を言ってるんだ、皆心配しているんだぞ!
父は大騒ぎだしで私が助けに来た!!」
「いや心配ない」
「心配あるだろう!
それに……お前とは離れちゃダメ………だろ?」
「照れながら言うな!!
……それに対抗策はしてある」
「えっそうなのか?
どんなのだ!?」
「お前…、スミリの周囲に俺と同じ………同じような魔力を持つ存在を待機させてるんだよ。」
「そ、そうなのか?
そんなのありか?
凄い抜け道だな!!」
「狩りの時とか普通に忘れてたろ?」
「あ、あれ〜〜?
そうだったか?
でもそれなら離れてても、もう安心だな」
「いや、そうでもない。
その保険が有ってもスミリから離れれば離れる程に激痛が全身を走る。
契約魔法の効力外になれば、なるほど魔力の循環で身体が動かなくなる。
俺1人では魔力は扱えないからな。
俺は死ぬ。」
「はぁ!?
え!?
はーーー!?
お前、お前は、ヴァイス!!
大事じゃないか!
なにシレッと言ってるんだ!
私が悪かった今度からは、………いやいやいや今からはもう離れないからな!!」
「いや離れてくれ」
牢屋の扉を壊しヴァイスに抱きつき頬をスリスリしてくるスミリに嫌気を覚える。
「でも………あ!
それにお前、捕まってるし殺されるかも知れないって皆が!!」
「それが1番問題ないんだって、安心しろって言ったろ!
だから抱きつくのをやめろ!!
色々、当たってんだよぉ!」
「えっ
言ったっけ?」
『言っておりません、
大丈夫だ、っとカッコ付けてその後にカッコ悪く捕縛されただけです。』
「それ言うなよ!
……俺もアレ?
ここまでするの?とは思ったけども。
まぁ、この件に関しては事前に察知してたしな。
奴らが何してくるかも把握済みだ。」
「そうなのか?」
「圧倒的な力で認めされて有無を言わせ無ければいいんだよ。」
「流石だなーー!」
(ホントに分かってんのかこいつ。
だがそれは表向きの話だ。
俺を捕らえて排除しようとしてる奴らが別にいる。
まぁ、それも俺からしたらどうでもいいんだがな。)
「穏便に済ませるか………。」
「流石だっ!
ヴァイス!!」
「何奴だー!!
牢屋で何してる!!」
「あっ、やばぁ!」
「ダメだこりゃ」
スミリのよいしょの掛け声でバレてしまう。
狩りするつもりが狩られる側になったり今度は本当に捕まったりとどっちが狩猟をしているのか分かない展開に北叟笑む者たち、最後に笑うのは誰なのか………。
はてさてどうなりますかは次回のお楽しみに!




