王妃の幸福と永遠のトロイセン
それから十年以上の月日が流れた。トロイセン王国は、王立アカデミーを中心に、科学と文化の中心地として、大陸で最も繁栄している国となった。
王都は、私の指導した土木技術とガラス製造によって、明るく、衛生的で、美しい都市へと変貌した。鉄とガラスの構造物が立ち並び、夜には油の炎ではなく、私の指導で開発されたより明るい照明が灯る、新しい文明の象徴となった。
ロキニアス王は、今や「蛮王」ではなく、「賢王ロキニアス」として、大陸中にその名を轟かせている。彼は、火砲を一度も他国に向けて発射することはなかったが、その存在だけで、トロイセンの平和を守り続けている。
私とロキニアスの間には、聡明な一人の王子が生まれていた。王子は、父譲りの武勇と、母である私譲りの知的好奇心を併せ持ち、王立アカデミーでフィリップから直接、科学の基礎を学んでいた。
ある日、私は、王立アカデミーの屋上にある、私が設計させた天体観測室にいた。そこには、ガラスのレンズが組み込まれた、精巧な望遠鏡が据え付けられている。
ロキニアスが、私の後ろから静かに近づいてきた。彼は、以前よりも少し白髪が増えたが、その瞳の光は、私を初めて見た時と同じ、熱い独占的な愛に満ちている。
「スーザン。貴様がこのトロイセンに来て、もう長い時が経ったな」
「はい、王よ。わたくしの人生の全ては、この国と共にあります」私は、彼の手を握った。
「この望遠鏡で、何を見ているのだ」
「遠い星々です、王よ。わたくしが故郷から持ってきた、知識の根源です」
私は、彼に望遠鏡を覗かせる。彼は、夜空に輝く無数の星の光に、感嘆の声を漏らした。
「貴様は、私に、足元の土だけでなく、この空の全てを見せてくれた。貴様が私にもたらした知恵は、永遠だ」
ロキニアスは、私を抱きしめ、天体観測室のガラス窓から見える、光り輝く王都を見下ろした。
「アカデミーの子供たちは、貴様の知恵を熱心に学んでいる。フィリップも、立派な学者になった。貴様の知恵は、この国で、永遠に生き続ける」
ロキニアスの私に対する愛は、今も変わらず、激しい独占欲に根ざしている。しかし、それは、私を閉じ込める檻ではなく、最高の安全と最高の自由を与える、王の愛の完成形だった。彼は、私がこの世の誰にも真似できない知恵を持っていることを理解し、その知恵が永続するために、国全体を私の設計通りに変革したのだ。
私は、生贄として差し出された運命から、愛する王の隣で、新しい文明を築き上げた知恵の女王となった。
「王よ。わたくしは、あなた様と、この国を心から愛しています。わたくしの知恵は、あなた様の愛と武力と共に、永遠にこのトロイセンを照らし続けます」
私の言葉に、ロキニアスは、深く、そして満足げに頷いた。
トロイセンは、ロキニアス王とスーザン王妃の愛と知恵によって、永久の繁栄を手に入れた。彼らが築いた科学と平和の時代は、大陸の歴史を塗り替え、長く語り継がれていくことだろう。




