表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虐げられし陰の皇女ですが、生贄嫁いだ隣国で「蛮王」に甘く愛され、飯テロ&内政チートで国を救うことになりました  作者: 夏野みず
水の改革と、帝国からの経済制裁

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/29

王妃の最後の知恵と、信仰心の盾

 ロキニアス王に【神聖教団国家】という新たな脅威を告げたスーザンは、彼に抱かれながら、意識を失う寸前にその【狂気的で大胆な計画】の概要を囁いた。それは、教団が持つ【宗教的な権威の根幹】を逆手に取り、トロイセンの王妃という立場を【神の代理人】のレベルまで引き上げるという、常軌を逸した戦略だった。


「王よ……教団は、王妃であるわたくしを【魔女】として断罪し、王の【絶対的な権威】を、蛮族の民が持つ【素朴な信仰心】から崩そうとします。信仰に対抗できるのは、より強大な【信仰】しかありません」


 ロキニアスは、スーザンの顔色があまりにも悪いことに心を痛めながらも、その言葉の一つ一つを脳裏に焼き付けた。彼の武力や剣では、この見えない敵には対抗できないことを理解していた。


 翌朝、ロキニアスは政務を全て中断し、スーザンが指示した最初の行動に移った。それは、王都広場にある【水の女神像】の前で、大規模な【水の浄化儀式】を執り行うことだった。


「王妃の体調が優れないのに、儀式などと……」グスタフ宰相は反対したが、ロキニアスは王妃の命を絶対として押し切った。


 スーザンは、体調が万全ではないにも関わらず、真新しい白銀の衣を纏い、王の腕に支えられながら水の女神像の前に立った。彼女の姿は、疲労の色を隠せないにもかかわらず、どこか【神聖な光】を放っているように見えた。


 儀式の核心は、前夜に彼女が精製させたばかりの【ミョウバン】だった。スーザンは、そのミョウバンを細かく砕き、王都に引かれた上水道の終端に、大衆に見えるように投入させた。


「見よ、民よ。この白い粉は、地の底で眠っていた【神の恵み】であり、わたくしが神眼で発見した、【清き水を生み出す秘宝】である」


 ミョウバンが投入されると、水道水の中にわずかに含まれていた不純物がたちまち凝集し、沈殿していくのが、その場にいた数万の民衆の目の前で起こった。水は、さらに透明度を増し、光を反射して輝いた。


「これは、【奇跡】だ!」


 民衆の間に、歓喜のどよめきが走った。教団は、この世界の治水や水の浄化を、全て「神の恩寵」として独占的に管理していたが、スーザンは【科学的な現象】を【神聖な奇跡】として演出し、その権威に真っ向から挑戦したのだ。


 スーザンは、さらに畳み掛けた。


「神聖教団国家は、水が汚れることを【穢れ(けがれ)】と呼び、清めようとしない。しかし、わたくしの知恵は、地の底の恵みをもって、水を永遠に清く保つ術を知っている。水の女神は、特定の者ではなく、【努力と知恵】を持つ者全てに、その恩寵を与え給うのだ」


 この儀式は、トロイセンの民衆の心に、強烈な印象を残した。彼らは、教団の教えよりも、自分たちの生活を劇的に改善した王妃の「奇跡」を信じ始めたのだ。


 さらに、スーザンは【第二の手】として、ロキニアス王が獲得した【新しい高収量穀物】の種を、教団国家の同盟国へ【無償で供与する】という、前代未聞の【食糧外交】を仕掛けた。


「教団は、我々を魔女と断罪し、食糧を奪おうとする帝国と手を組んでいる。だが、わたくしたちは、隣人である貴方方には、この【命の種】を惜しみなく分け与えよう」


 ロキニアス王が、教団国家の国境に向けて、巨大な幌馬車いっぱいの種を運ばせると、教団国家の民衆と、その同盟国は困惑した。彼らは、蛮王の国が【邪悪】だと教えられてきたが、その国から送られてきたのは、飢餓を救う【豊穣の種】だったのだ。


 これにより、神聖教団国家がトロイセンを【絶対悪】として断罪する外交的な根拠は、その同盟国間で大きく揺らぎ始めた。スーザンは、教団の【信仰の盾】を、彼女自身の【恵みの奇跡】と【利他的な外交】という二重の攻撃で、見事に貫こうとしていた。


 儀式を終えたスーザンは、意識が朦朧とする中でロキニアスに抱き上げられ、私室へと運ばれた。


「貴様は、本当に恐ろしい女だ……。だが、愛している」


 ロキニアスは、スーザンをベッドに優しく寝かせると、彼女の疲れ切った顔を見つめた。彼は、彼女の知恵が、自分たちの命を救い、国を救っていることを理解していたが、同時に、彼女がこの巨大な重圧でいつか壊れてしまうのではないかという【深い恐れ】を抱き始めていた。


「必ず、貴様を休ませる。この戦いが終われば、貴様と二人きりで、誰も追いつけない遠い場所へ逃げてやろうか……」


 王は、その激しい独占欲と愛情を、静かな決意に変え、スーザンの側を離れなかった。彼女の命と健康が、今のトロイセンにとって、何よりも重要な【国家の宝】だったからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ