閑話 もう一冊
<4月20日(土)
突然だけど,私は,昨日とあるフリマに行って来たの。そこで,ノートや,文房具を扱っていた,店で日記帳を買ったんだ。店主曰く「だれも見向きもしてくれてなかったから,買ってもらってその日記帳も喜んでいますよ・・・」だって言ってたけど,まぁ気に入ったからそんなに詮索せずに,今日この日記にかきこしてます。ほんとかわいくて,私のお気に入りです♪>
私は,お風呂上がりに今日あった事を,日記帳に書いていた。
今まで書いていた日記帳がなくなり,買わないといけないな~と思っていた時にこの日記帳を目にした。その時これだ!っと思い購入に至った。
日記帳に書いた後,私は,髪の毛をドライヤーで乾かし,トリートメントを毛先に念入りになじませていた。
髪の毛はさほど長くないのだけど,癖っ毛なのでトリートメントを使わなかった日には朝起きた時髪の毛が踊っているようにあちこちに行ってしまうので,この作業は何があってもしないといけない事だった。
ぴょん。
また癖っ毛な髪の毛が遊んでるよ・・・。
私は鏡とにらめっこしながら,その遊んでる毛先に,トリートメントを念入りになじませ,
直ったのを確認し,日記帳を,机の上に置き,鏡もベットのわきに置いてある,棚にしまった。
「さて,一杯飲んで寝ようかな?」
私は,冷蔵庫に行って,缶チューハイを取りだし,それから,食器棚に一緒に置いてある,いろんな種類のドライフルーツが入っているビンを持って,テーブルに戻った。
チューハイと言っても,アルコール度数1%のなんだけどね。
ぷしゅ!
小気味いい音を立てて,私は一口チューハイを口の中に流し込んだ。
そんなにお酒が好きというわけではないが,今日はいいもの買えたし,最近は,仕事の方も順調に進んでいる。
そう言った自分へのご褒美~♪などと思いながら飲んでいると,急に眠気が・・・。
日ごろ飲まないのであまり慣れていなかったせいか,私は,自分でもびっくりするくらいに,早くつぶれてしまった。
*
目が覚めた。しかしそこは,私の部屋ではなかった。
そこは,真っ白な壁に蛍光灯が付いてあるなんとも無機質な部屋だった。
見渡していると,ふわっと,女性がいきなり現れた。
私は驚いて,後ずさりしようとしたが,どうもうまくいかない。足元を見てみると,足が床に付いていなかった。これでは,後ずさりもできないね。・・・なんて,冷静に考えてる場合なの!?
明らかによくない事が起こっているよこれ。
「ご気分はいかがでしょうか?」
女性は私に向かって話しかけて来た。
そんなこと聞かれても,何が何だか分からないのに,だけど答えなければ,何も変わらない事だけは,確かなことだった。
「い。一応大丈夫です・・・。ですが,ここがどこかとか,今私がなのをされてるかで頭の中がパンク気味です。これはいったいどういう事ですか?」
「それもそうでしょうね・・・。今回は,日記帳に前置きなどを記入せずに,あなたの夢の中に,介入させてもらっているので」
日記帳?前置き?介入・・・?
何を言っているのかさっぱりだった。
「今は,ちゃんと理解できないかもしれませんが,今回は少々こちらも急いでいるので,簡単な説明だけさせていただきます。」
そう言って彼女は,何もない所から二枚写真を,出してこちらに渡してきた。
「この写真に写っている二人のカップルのデートを手助けしてあげて下さい。」
・・・は?
「もう一つ補足しておきます。こちらの男性は菊池亮輔と言って,今回,あなたと同じように日記帳に記入をして,他人の人生に介入している一人です。彼女は普通の人ですが・・・。名前は,石川美麗。きれいな方でしょ?」
ますます意味が分からなくなってきた。
デート?手助けってなんなの?
しかも他人って・・・。
「すいません何言っているかわかんないです。説明と言っても私なんでそんなことないといけないんですか?」
「それはあなたが,日記帳を手にしてそれに記入したためです。でも大丈夫です。あなたにはちゃんとお礼も致します。今回は,こちらがお願いさせて頂いていますので」
そんなこと言ったって。何がお礼よ。意味のわかんない所に来ていきなりデートの手助けって・・・。いや。これは何かの夢なんだろう。
でなきゃ,説明が付かないもの。
「夢ですよ。確かに。ですが,今ここで話していることは現実でもあるんです」
「百歩譲ってここがあなたの言う現実である事は,認めたくないけど,話が進まないので,そういう事にしときます。でもなんで?そんなことを」
「先ほども申しましたが,日記帳を・・・いえ。いいです。それでは一応御頼みを致しましたので,少しでもやる気がございましたら,日記帳に記載されている□にチェックをお願いします」
「だから!!!」
と言った私は,いつの間にか自分の部屋で,叫びながら,体を起していた。
「・・・なんだったのよ。あれ」
そんな事を思って,私はふと机の上の日記帳に目を向けると,そこには赤字で<ご協力いただけるのでしたら下部の□にチェックをお願い致します。>
と言うのが書き加えられていた。
わたしは,はっとした。夢の中の事は,ほんとに現実だったんだ。
あの女性が言っていたと売りに,日記帳には同意の有無を求める□の記載があった。
その下に,<なお,今回の協力褒賞として,あなたには,“時間”を与えようと思っています。>とあった。
時間?何の事?時間と言っても色々言い換えられることはできる。
仕事を休んで遊ぶ時間を増やすとかもそうだし,はたまた寿命と言う意味の時間なのか?
考えていると,次のぺージに続きがあった。
<ここでいう時間は,あなたがもし,万が一にもお亡くなりになられた時に,その与えられた時間分だけ,過去に戻してやり直せる。っと言う意味の時間です。無論ほかに使用方法もございます。>
・・・そんなことが可能なのかしら?
そんな神様みたいな事が・・・。
でも,実際に私は,夢の中とはいえ,女性に出会い,その人が言った通りに,日記帳には,私が書いたものではない文字で,追加文が書かれていた。
それくらいできるんならもしかして・・・。
そこまで考えてから,私は我に返った。時計を見てみると出勤時間ぎりぎりだったのだ。
わたしは,あわてて,支度をして,日記の事は気になったが,会社に遅刻したら,部長に大目玉食らわされるので,出勤した。
*
「ただいま~・・・」
疲れた・・・。今日もへましてしまった。
私は帰るなり,スーツを脱ぎハンガーにかけ,ブラッシングしてやってから,シャワーを浴びにバスルームに行った。
シャァァァァァー。
シャワーを浴びながら,そういえば,朝,日記帳に協力の有無を書かれた追加文があった
事を思い出して,私は早めに体を洗い,髪の毛も軽く洗い,トリートメントをして,さぁ~っと流して,バスルームを出た。バスタオルで体をふき,他をるで髪の毛の水分を軽くたってから,私はテーブルの上にある,日記帳を開いた。
この際だから,やってみようかという思いもあった。今日みたいに,部長に怒られて,ぺこぺこしているなんて,ただストレスが溜まって行く一方だった。
そんな鬱憤晴らしにでも,してみようかと,私は軽いノリで□にチェックを入れた。
その後,夕食を食べて,私は寝る支度をしてすぐに寝た。
寝る前に、ふと、今日はトリートメントしてなかったことに気づいたが、その時には私の意識は無くなっていた。
*
「ご協力感謝いたします。あなたは,とてもよい選択をされました。」
遠くで何か聞こえる。
「それではあなたは,香水凛と名乗ってください。でも大丈夫です。違う世界に行ったとしても,元の記憶もあるので,大丈夫です。それでは亮輔さんのサポートお願いしますね」
頭ではちゃんと理解できたが,まだ何かフワフワした感じで,耳の中に入ってくる。
私は香水凛・・・。そのことと、サポートするという事,後なんだったけ・・・?
そこで私は,何も考えられなくなり,あたりは暗くなった。